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2019年10月4日

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アメリカのドナルド・トランプ大統領は3日、政敵の捜査をウクライナの大統領に求めたという疑惑をめぐる弾劾調査が進められる中、中国に対しても同様の捜査を報道陣の前で促した。

トランプ氏はこの日、ホワイトハウスで記者団を前に、来年の大統領選で民主党候補になる可能性が有力視されているジョー・バイデン前米副大統領(民主党)とその息子について、「中国は捜査を始めるべきだ。中国であったことは、ウクライナであったことと同じくらいひどいので」と述べた。

トランプ氏はさらに、習近平国家主席に直接要請はしていないものの、するかもしれないと付け加えた。

アメリカと中国は現在、激しい貿易戦争のまっただなかにあり、閣僚協議の再開の時期について注目が高まっている。トランプ政権は10月15日に2500億ドル分の中国製品への制裁関税を現在の25%から30%に引き上げる姿勢を見せている。

トランプ氏は、野党・民主党による自分への弾劾調査は「くそ」だと反発。さらに3日夜にはツイッターで、捜査要求の正当性を主張した。

「アメリカ合衆国大統領として、私には腐敗について捜査する、あるいは捜査した、絶対的な権利がある。おそらく義務だとさえ言える。これには、我々に協力するよう他国に求めたり提案することも含まれる!」

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1179925259417468928?s=20


米連邦選挙委員会のエレン・ワイントラウブ委員長は、選挙に関連して、外国籍の人物に金品などの計らいを求めることは違法だと、ツイートした。

連邦下院で多数を占める野党・民主党は、トランプ氏が政敵の不祥事を探り出すために軍事援助の停止をちらつかせてウクライナに圧力をかけたとして、9月24日に正式な弾劾調査を開始した。弾劾調査の発端は、トランプ氏が7月25日に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で会談した内容に関する、情報当局者の内部告発だった。

電話会談でトランプ氏は、自分の政敵のジョー・バイデン前副大統領(民主党)と、息子でウクライナのエネルギー企業ブリスマの幹部だったハンター氏について捜査するよう、ゼレンスキー氏に迫った。これに「深刻な懸念」を抱いた情報当局者が、情報機関監察総監などに告発の手紙を送ったことから、議会の知るところとなった。

トランプ氏の主張

トランプ氏はホワイトハウスの南庭で3日、ゼレンスキー大統領にどのような「計らい」を求めたのか記者団に質問され、「ウクライナ政府がこれについて誠実に考えるなら、ウクライナはバイデン親子への捜査を開始するだろう。答えは非常にシンプルだ」と述べた。

「ウクライナはバイデン親子の捜査をすべきだ。同様に、中国もバイデン親子への捜査を開始すべきだ。中国であったことは、ウクライナであったのと同じくらいひどいので。自分だったら、バイデン親子への捜査開始を薦めるだろうと、ゼレンスキー大統領に伝えたい。2人が悪党ではないなど、そんなこと誰も思ってないんだから。100%不正取引があったんだ」

トランプ氏はさらに、バイデン氏は他国に対して「詐欺行為」を働き、中国「だけに有利な」対米貿易に関与していると述べ、米中の貿易不均衡の裏にはバイデン親子が関わっていると示唆した。しかし、これについても証拠は示さなかった。

「中国はバイデンのような人物と取引し、息子に15億ドル(約1600億円)を渡している。おそらくそれで中国は自分たちにとって都合の良い取引を何年にもわたって維持して、我々の国を食い物にしてきたんだ」

CNNなどによると、トランプ氏は6月に習主席と電話会談した際にも、バイデン氏のほか、同じく2020年大統領選に民主党から出馬しているエリザベス・ウォーレン上院議員について、自分から言及した。この通話記録は、ウクライナの大統領との通話記録と同様、異例の手続きで、重要機密を保管する特別なデータベースに秘蔵されたとCNNは伝えている。

バイデン親子の疑惑

トランプ氏はこれに先立ち、バイデン氏と、息子でウクライナのエネルギー企業ブリスマの幹部だったハンター氏について、政治的取引や商取引で汚職を働いたとして非難しているが、証拠は示していない。

2014年にハンター氏がブリスマの幹部に就任した際、米副大統領だった父親のバイデン氏が、ウクライナ政策を主導していたことから、利益相反の疑いが生じた。

当時のウクライナは、親ロシア派のビクトル・ヤヌコヴィッチ氏が失脚し、政権移行の渦中にあった。

トランプ氏は、ブリスマ社を捜査していたヴィクトル・ショーキン検事総長を解任するようバイデン氏がウクライナに働きかけたのは、息子のためだったと非難している。

ショーキン検事解任については、バイデン氏自身が昨年、ショーキン氏を解任しなければ10億ドル(約1100億円)の援助を差し止めるとウクライナ政府に圧力をかけたことを、シンクタンクでの演説で強調している。

ショーキン氏については、汚職対策の障壁だとして複数の欧州首脳や国際通貨基金(IMF)首脳が、バイデン氏と同様に、ショーキン検事総長の解任を求めていた。

ウクライナのユーリ・ルツェンコ前検事総長は先月29日、BBCの取材に対して、バイデン親子を捜査すべき根拠などないと述べた。

「ウクライナ法にもとづきジョー・バイデン氏や(息子の)ハンター・バイデン氏を捜査する理由が何かあるとは、まったく承知していない」

バイデン親子の主張

2020年米大統領選に向けたバイデン陣営の広報担当は、トランプ氏は「テレビで必死になって怒り狂っている。独立した、信頼できる報道機関によって暴かれ、否定された陰謀論に必死にしがみついている」と非難した。

ケイト・ベディングフィールド選対副本部長は声明で、トランプ氏が2016年大統領選の民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の3000通ものメールが流出した際に発した、「ロシア、もし聞いているなら、紛失した(クリントン氏の)メール3万通を見つけてくれるといい」にかけて、こう述べた。

「ロシア、もし聞いているなら――この国をめぐる真実や自分に対する嘘の奇怪な選択をみつけてくれるといい」

前副大統領の息子、ハンター・バイデン氏の広報担当は米メディアに対し、中国から15億ドル受け取ったという事実はなく、中国からいかなる見返りも受け取っていないと述べた。

弾劾調査を進める米下院外交委員会は、ウクライナ疑惑に関する「直接的な情報を知る」国務省高官ら5人に対し、宣誓証言を要請する召喚状を送付したが、マイク・ポンペオ国務長官は要請を拒否する考えを示した。

宣誓証言を求められているのは、マリー・ヨヴァノヴィッチ元駐ウクライナ大使や、カート・ヴォルカー・ウクライナ特使、ジョージ・ケント国務次官補代理、ウルリッチ・ブレックブル国務省参事官、ゴードン・ソンドランド駐欧州連合(EU)大使。

ヴォルカー氏は自分の名前が取りざたされたことを受け、辞任した。

宣誓証言に先立ち、ヴォルカー氏は下院委員会に資料を提出。トランプ氏の法律顧問のルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長とのテキストメッセージも含まれている。

米ABCとFOXが入手したテキストメッセージによると、アメリカの駐ウクライナ高級外交官、ビル・タイラー氏がヴォルカー氏とソンドランド駐欧州連合(EU)大使にたいし、「電話で伝えたとおり、選挙キャンペーンのために安全保障上の支援を停止するのは正気ではないと思う」と述べたという。

これに対し、ソンドランド氏は、「トランプ大統領の意図について、君は間違っていると思う。大統領は非常に明確だ。どんな見返りもだめだということだ」と返答した上で、「テキストでやり取りするのはやめよう」と述べた。

バイデン親子と中国の関係は

2013年に当時副大統領だったバイデン氏は、中国を公式訪問し、習主席をはじめ政府幹部と会談している。この訪問には、息子ハンター氏とその娘も同行している。

2日間の訪問中にハンター氏は、後に事業で提携する中国の金融家ジョナサン・リ氏と会っている。

この訪問から間もなく、リ氏は投資会社を立ち上げ、ハンター氏はその役員となった。ただし、ハンター氏の広報担当は米NBCニュースに、副大統領の訪中時にビジネスの話はしていないし、投資ファンドの創業はずっと以前から計画していたものだと話した。広報担当によると、バイデン副大統領の任期中には、ハンター氏はリ氏の投資ファンドの株主ではなかったと説明している。

ハンター氏は、投資ファンドについて中国政府関係者と会談したことはないと主張している。一方で、父親の中国公式訪問の最中にリ氏が握手する機会を設ける手助けをしたとされている。

今年8月には上院財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党)が、訪中時のハンター氏の行動を批判。「(ハンター氏は)たびたび中国企業に投資し協力してきた。少なくとも1度は、国家安全保障にとって深刻な懸念となる行動があった」と話していた。

弾劾手続きとは

合衆国憲法第2条第4節は、「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」と規定している。

弾劾訴追権は下院が、弾劾裁判権は上院がそれぞれ持つ。下院が調査の後に単純過半数で弾劾訴追を可決した後、上院が弾劾裁判を行う。上院議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領を解任できる。

現在の下院では、定数435議席のうち民主党が235議席を占めているため、弾劾訴追が成立する可能性は高い。

一方の上院は、定数100議席のうち共和党が53議席を占める。解任の動議成立に必要な3分の2以上の賛成票を得るには、多数の共和党議員が造反する必要があるため、大統領が実際に解任される見通しは少ない。

その一方で、トランプ氏を支持してきた共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は30日、もし下院が大統領を訴追した場合、上院としては規則上、弾劾裁判を開かないわけにはいかないと表明した。

過去の大統領で弾劾されたのは、アンドリュー・ジョンソン第17代大統領とビル・クリントン第42代大統領のみだが、上院の弾劾裁判が有罪を認めなかったため、いずれも解任はされていない。

リチャード・ニクソン第37代大統領は弾劾・解任される可能性が高まったため、下院司法委の弾劾調査開始から3カ月後に、下院本会議の採決を待たずに辞任した。

(英語記事 Trump urges China to investigate Bidens

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49929903

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