BBC News

2019年10月15日

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アメリカ政府は14日、シリア北部に進攻しているトルコに対する経済制裁を発表した。またマイク・ペンス副大統領は、ドナルド・トランプ大統領がトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と電話会談し、即時停戦を求めたと明らかにした。

ペンス氏は、問題となっている地域を「早急に」訪問する方針だという。

スティーヴン・ムニューシン財務長官は14日、制裁はトルコ経済に深刻な影響を及ぼす「非常に強力なもの」だと説明した。

財務省の発表によると、「シリアに対する軍事作戦を受け、トルコの2省庁と政府高官3人に対し」制裁が決定された。

「トルコ政府の行動は罪のない市民を危険にさらし、地域を不安定化させ、IS打倒作戦に損害を与えるものだ」と、財務省は述べている。

ムニューシン氏と共に制裁発表に臨んだペンス氏は、「トルコが即時停戦し、暴力を止め、シリアとの国境問題について長期的な打開策の交渉に応じない限り、制裁は継続し、より厳しいものになる」と警告した。

その上で、トランプ大統領がエルドアン大統領に電話したこと、アメリカが「トルコのシリア進攻にゴーサインを出したわけではない」ことを強調した。

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アメリカ政府は先に、トルコの「受け入れられない」シリア侵攻によってIS捕虜が解放されてしまったと指摘している。

また、欧州連合(EU)もこの日、トルコへの武器輸出を取りやめることで一致した。ただし、EU全体での武器貿易禁止には至らなかった。

これに対しトルコは、EUの「非合法で偏った」態度を受けてEUとの協力体制を見直すとしている。

シリア北東部の現状は?

シリア軍は現在のところ、トルコ軍が制圧したラス・アルアインとタル・アブヤドの町には進攻していない。クルド人組織の高官によると、シリア軍は政治的な立場に留まり、地域の秩序維持に努めるという。

また、ロシア政府はシリア国内でトルコ軍と相対する可能性は考えていないと話している。

国連の人道問題調整事務所(OCHA)は、最大16万人の市民が避難を余儀なくされており、この数は今後も増えるとみている。

報道によると、これまでにシリア側で少なくとも50人、トルコ側で18人の市民が犠牲となった。

クルド人側は戦闘員56人が殺されたと発表。トルコは兵士4人と、親トルコ派のシリア戦闘員16人が殺害されたと明らかにした。

シリアの国営メディアによると、ロシアの支援を受けたシリア政府軍が、トルコが「安全地帯」にしたい地域の要衝、マンビジに到着した。

一方、トルコと親トルコ派のシリア武装勢力も、この町の近くに集まっている。

バシャール・アル・アサド政権の部隊がシリア北部に進攻するのは2012年以来で初めて。シリア政府は当時、他地域で反政府組織との戦いに注力するため、この地域から撤退した経緯がある。

その後、シリア北東部はクルド人の勢力下に入った。アサド大統領はクルド人が求めていた自治は認めなかったものの、特にクルド人がIS掃討作戦でアメリカと協力し始めてからは、この地域を取り戻すことはしなかった。

アメリカにとってはIS掃討作戦のほかにも、ロシアやイランをこの地域から引き離すためにもクルド人の存在は重要だったと言われている。


国際社会が批判

トランプ大統領は6日、シリア北東部からの米軍撤退をいきなり発表し、トルコによるクルド人部隊への軍事作戦に関与しないとした。この後、トルコは国境付近のクルド人民兵組織を排除するとして、9日から進攻を開始。

一方のシリア側は13日にシリア民主軍(SDF)と合意して北東部に部隊を派遣しており、トルコ軍と交戦する可能性もある。

トルコは、テロリストに指定しているクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」を国境地域から完全に排除し、「安全地帯」を確保したい考え。

YPGはSDFの大部分を占めており、SDFは過激派勢力「イスラム国」(IS)掃討作戦でアメリカ軍と協力していた。

それだけに、トルコの進攻とアメリカの撤退には国際社会から非難の声が上がっている。

トルコはまた、シリア内戦などでトルコ領内に避難してきたシリア難民、最大200万人をこの安全地帯に移住させたいとしている。難民のほとんどはクルド人ではないという。

トルコの一連の行動については、クルド人に対する民族浄化だとの批判も上がっている。

(英語記事 US slaps sanctions on Turkey over Syria offensive

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50051456

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