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2019年10月18日

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ボリス・ジョンソン英首相は、19日の議会で欧州連合(EU)離脱協定案の承認を得られると「確信している」と語った。一方、英下院(定数650)で承認の鍵を握るとされる北アイルランドの民主統一党(DUP)や他の野党からは、協定を承認できないとの声がすでにあがっている。

ブレグジット(イギリスのEU離脱)が31日に迫る中、イギリス政府とEUは17日に離脱協定案に合意した。ただし、協定が実際に施行されるには、欧州議会や英議会の承認が必要。与党・保守党が単独過半数を持たない英下院では、承認されるとしてもぎりぎりの僅差になるのではないかとみられている。しかし、ジョンソン首相は、19日に開かれる下院の緊急審議で過半数が獲得できるはずとの自信を示した。

EU首脳会議(サミット)出席のためブリュッセルを訪れていたジョンソン首相は、「これはイギリスが民主主義国家としてブレグジットを実現し、10月31日にEUから離脱する機会だ」と記者会見で強調した。また、メイ前首相の協定の二の舞にはならないと話した。

メイ前首相は2018年12月にEUと協定を取りまとめたものの、議会で3度目にわたって否決され、離脱が延期となった経緯がある。

ジョンソン首相は、「イギリス議会の同僚たちがこの協定を読めば、19日やその後に賛成票を投じたいと思うはずだ」と強調した。

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下院で過半数を獲得するため、ジョンソン政権は保守党内のEU離脱派やDUPの支持を懸命に取り付けようとしている。

さらに、新協定に盛り込まれている労働者の権利保護や環境政策について、最大野党・労働党の支持を得る必要もある。

労働党のサー・キア・スターマー影のEU離脱担当相は、労働党は新協定案に反対すると言明。この協定ではイギリスは将来、EUが定める労働者の権利保護などが今まで以上に失われてしまう恐れがあると懸念を示した。

スターマー氏はさらに、新協定は「十年にわたる規制緩和への道を開く」と指摘し、労働者や環境、消費者の保護を「大幅に削減する許可」を政府に与えてしまうと警告した。

DUPの懸念

ジョンソン首相はDUPの支持を取り付けるため、新協定案ではイギリスが一体となり「連合王国として」EUから離脱すると強調。「共に未来を決定していく」と強調した。DUPは党是として、「連合王国の一体性」、つまり北アイルランドがイギリスの他地域と同じように扱われることを重視している。

しかし、DUPのナイジェル・ドッズ副党首は、19日の緊急審議では「大量の」反対票が発生するとみていると話した。さらに、協定案修正においてDUPが「重要な役割」を果たすことになるだろう述べた。

新しい協定案の大半はテリーザ・メイ前首相がまとめたものと同じ内容だが、議論の焦点となっていた北アイルランドの位置づけなどが新しくなった。それによると、北アイルランドはイギリスの関税地域に留まるものの、EU単一市場への入り口として税関が設けられる。

DUPはこの点について、「連合王国の内側に国境を設けることは受け入れられない」としている。

また、付加価値税(VAT)についてイギリスの他地域とは別のルールが適用されることについても、ベルファスト合意(イギリスとアイルランドの和平合意)が定めた、重要課題についてはユニオニスト(親英派)とナショナリスト(親アイルランド派)の双方と協議するという大原則に違反していると、反発している。

首相は過半数を得られるのか

イギリス下院の定数は650だが、今回シン・フェイン党の7人と議長、3人の副議長は投票しないため、離脱協定の承認に必要な過半数は320票。

これに対して、保守党の現有議席は287議席。ジョンソン氏はこの中から造反者が出るのを食い止めなくてはならない。

DUPが協定を支持しない場合、ジョンソン首相は保守党を出て無所属になったばかりの23人の支持を取り付ける必要がある。このうち21人は今年9月、合意なしブレグジットにまつわる投票で造反し、ジョンソン首相に追放された。その大半は新しい協定に賛同するとみられるが、全員ではないだろう。

それでもまだ過半数には足りないため、首相は労働党や、元労働党の無所属議員の支持を模索している。メイ前首相の離脱協定に対して行われた3度目の投票では、労働党議員が5人、元労働党の無所属議員が2人、賛成票を投じた。

今回は、すでに支持を表明している労働党議員もいるため、野党からの賛成票はもう少し多く見込めるだろう。

しかし、これらを全て足し合わせても過半数にぎりぎり届くかどうかは、はっきりしない。棄権議員が出る可能性もあるため、正確な票読みは非常に難しい。

離脱延期はありえるのか

イギリス議会は9月、EUからの合意なし離脱を回避する通称「ベン法」を成立させた。

この法律では、首相は10月19日までに離脱協定の議会承認を得るか、下院から合意なし離脱の承認を取り付けなくてはならないと規定。それができなかった場合、首相は離脱期限を2020年1月31日まで延期するよう、EUに要請することを義務付けている。

そのため、19日の緊急審議の行方によっては、イギリスが再度、離脱延期を求める可能性も残されている。

こうした中、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は、「我々は協定に合意した」のだから離脱延期の必要はないと発言した。

合意の有無に関わらず31日に離脱を決行したいジョンソン首相にとっては、この発言は大きな応援材料となった。

一方、ユンケル氏以外のEU高官はより慎重な姿勢をとっている。 欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は、延期が必要であれば加盟国と「協議」するだろうと語った。

17日に行われた共同記者会見で、トゥスク氏とユンケル氏、ミシェル・バルニエ首席交渉官、アイルランドのリオ・ヴァラッカー首相はみな、イギリスのEU離脱を残念に思っていると話した。

トゥスク常任議長は、「個人的な意見として、私がきょう感じたのは、率直に言えば悲しさだ。私の心は常にEU残留派だったので。イギリスの友人がいつか戻ってきてくれることを願っている。私たちの扉は常に開かれている」と述べた。

(英語記事 Johnson 'very confident' MPs will back deal

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50092848

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