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2019年10月19日

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イギリス政府と欧州連合(EU)は17日、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の条件を定めた離脱協定案に合意した。英議会は19日、37年ぶりに週末に集まり、協定案を審議している。しかし、この新しい協定案はどういう内容なのか。読者から送られた質問を元にひも解いていく。

イギリス議会が協定案を否決した場合、ボリス・ジョンソン首相は離脱延期を要請しなくてはならないのか(フレディー・ムーア、ロンドン在住)

法律上は、ええ。要請しなくてはならない。

下院が9月に可決した通称「ベン法」では、下院で10月19日までに協定案あるいは合意なし離脱の承認が得られなかった場合、ジョンソン氏はブレグジットを3カ月遅らせるよう要請する必要がある。

イギリスはなお、離脱の清算金として390億ポンド(約5兆5000億円)を支払う必要があるのか(リチャード・スミス、サウザンプトン)

ジョンソン首相の新協定案でも、イギリスはEUに「清算金」を支払うことになっている。

しかし、離脱が延期されているため、実際の金額は330億ポンド(約4兆6000億円)に減っている。

新協定案の大半の内容が、テリーザ・メイ前首相が取りまとめた協定と同じだ。大きな違いは、アイルランドと北アイルランドの国境について、そしてイギリスが移行期間後にEU関税同盟を離脱するかどうかの2点だ。

ブレグジット後、イギリス旅行に影響は?(Homey_kitchen)

EUからの観光客に対してビザ(査証)制度を導入する計画はない。

そのため当面は、短期間の滞在については現状とほとんど変わらないはずだ。

ブレグジット後、海外旅行は高くなる?(charltonannabel)

イギリスがEU離脱を決めて以来、英ポンドの価値は下がり続けている。ただし、協定が発表された時にはわずかに値上がりした。

ポンドが上下するのは、ブレグジットがどういう形になるのか不透明な状態が続いているからだ。

今後、ポンドの価値がどのように変わっていくかを予測するのは難しい。休暇資金を最大限に有効活用するには、旅行の数週間前に半分、数日前にもう半分を両替してバランスを取るのがいいと、よく言われている。

なぜジェレミー・コービン(労働党党首)は、今回の協定案が前のより悪くなっていると言っているのか(ジェイン・フランシス、イエートリー)

今回の協定案についてコービン党首がメイ前首相のものより悪いと言っているのは、「この提案によって権利や保護について、最低争いが始まってしまうおそれがある」からだ。

この協定は「食品の安全を危険にさらし、環境水準や雇用者の権利保護を引き下げ、国民保健サービス(NHS)がアメリカ企業に乗っ取られるきっかけを作る」と主張するコービン氏は、この協定案を否決すべきだとしている。

下院承認なしに離脱協定を施行することはできるのか(Henryadam)

現在の法律上はできない。

2018年欧州連合(離脱)法は、離脱協定を有効にするには、英議会の承認が必要だと定めている。

北アイルランドばかり話題になるが、協定案がイギリスの他地域に与える影響は?(サイモン、ワディントン)

北アイルランドが特に問題となっているのは、前回と今回の協定案における最大の違いが、「バックストップ」条項を削除した点にあるため。移行期間や市民権、清算金といった項目は同じで、イギリスは移行期間の終わる2020年12月末まではEUのルールに従うことになっている。

しかし新協定案では、移行期間終了後にイギリス全体がEU関税同盟から離脱する。また、EU単一市場からも離脱するが、北アイルランドだけは農業品などの分野でEUのルールに引き続き従うことになる。

また、より長期的な英・EU間の関係性の枠組みを定めた政治宣言にも変更が加えられた。それによると双方の関係は自由貿易協定(FTA)に基づくものになるとされているが、これも2020年末までは確証がない。

この協定案が通ると、アイルランド国境に検問が置かれるのか(ウィリアム・メスヴェン、ファーマナー)

いいえ。協定案の条項が削られない限りは、検問などの厳しい国境管理は置かれない。また、北アイルランドとアイルアンドを行き来する物品に対しても、税関検査や規制検査は行われない。

この協定案では、北アイルランドとグレートブリテン島の他地域の間に実質的な税関の境界線を置くことで、その解決策とした。「アイルランド海の境界線」と言う言葉が今後、出てくるようになるだろう。

これにより、イギリスの税関職員が北アイルランドの「玄関口」ですべての物品の検査を行うことになる。

この取り決めについては、北アイルランド議会が移行期間後から4年に一度、是非を問う投票を行うことになっている(移行期間は2020年末に終わる予定だが、1年あるいは2年延長される可能性もある)。

もし北アイルランド議会がこれを否決しても(その可能性は低そうだが)、その後、厳格な管理を敷かないための代替案を決めるために2年間のクーリングオフ期間が設けられている。

この協定案によって、イギリスは他国と独立した通商関係を結べるようになるのか(ケリー・オサドロー、スウィンドン)

その通り。EU関税同盟は加盟国をひとつの団体として、他国との貿易交渉を担っているが、イギリスはこの関税同盟から離脱する。

つまりイギリスは今後、非EU加盟国やEUそのものと個別の貿易協定を結べる。しかし、それまでにはなお時間がかかる。

この協定はいつまで有効?(ブライアン・ぺダーソン、オックスフォード)

協定案では、移行期間の期限を2020年12月と定めているが、この時点でEUの全機構から離脱するのは北アイルランド以外のイギリスで、北アイルランドはなお一部のEUのルールに従うことになる。場合によっては、特定の物品についてはEUの税金をかける必要が出てくる。

この状態は、イギリスとEUの将来の関係について新協定が結ばれるか、あるいは北アイルランド議会がこの取り決めを否決するまで続く。北アイルランド議会はまず4年後にこれについて、投票できるようになる。

(英語記事 Brexit deal: What does it mean?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50108406

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