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2019年11月16日

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性的人身取引で起訴され勾留されていた米富豪ジェフリー・エプスティーン被告(66)がニューヨークの拘置所内で急死した問題で、被告と親交のあった英王室のヨーク公アンドリュー王子がBBCの単独インタビューに応じ、すでに性的犯罪で有罪を認めていた被告の家に滞在したことは「過ち」で、自分の周囲を「がっかりさせる」行動だったと認めた。一方で、未成年女性との性行為疑惑については否定した。

(編集部注・ Jeffrey Epstein被告の姓は、日本語メディアで「エプスタイン」と表記されることもありますが、BBCでは当人を知る関係者たちの発音に近い「エプスティーン」と表記しています)

アンドリュー王子は14日、バッキンガム宮殿でBBC報道番組「ニュースナイト」の取材に応じた。エプスティーン被告の死後、被告との関係について、王子が取材に答えるのは初めて。

王子は、すでに有罪となっていた被告宅に滞在したことは間違いだったと認める一方、自分との性行為を強制されたと主張しているアメリカ人女性については、会った記憶がないと答えた。

番組司会者のエミリー・メイトリス記者によるこのインタビューは、イギリス国内で16日夜に放送された。国外からはYouTubeで視聴できる(英語)

性的人身取引の罪で無実を主張し、公判を控えていたエプスティーン被告は今年8月10日朝、ニューヨーク市マンハッタン南部のメトロポリタン矯正センター(MCC)で死亡しているのを発見された。自殺が原因と言われている。被告は今年7月、未成年者の性的人身取引と共謀の罪で起訴されていた。ニューヨーク連邦地検の訴状によると、被告は2002~2005年、ニューヨーク市マンハッタンとフロリダ州に所有する邸宅に未成年を引き入れていた。被害者の最年少は14歳で、数百ドルと引き換えに性行為を強いられていたという。

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当時は「高潔な行動」だと

アンドリュー王子は、エリザベス女王の第三子。裕福なヘッジファンド経営者だったエプスティーン被告と1999年に初めて会ったと話している。2001年から2011年までイギリスの国際貿易担当特使を務めていたアンドリュー王子は2010年暮れ、ニューヨークのセントラルパークでエプスティーン被告といるところを撮影された。当時の被告はすでに未成年を売春に勧誘・斡旋(あっせん)した罪で有罪を認めた後だったため、アンドリュー王子は当時も、被告との交際を批判された。

すでに英王室は、王子に対する告発内容は「虚偽で、一切の根拠を欠いている」とコメントしている。アンドリュー王子はエプスティーン被告との関係についてこれまで問題行動を否定する声明は出したものの、まとまったインタビューで直接発言するのは初めて。

メイトリス記者のインタビューでのアンドリュー王子の発言の要旨は次の通り――。

  • 未成年の時に自分と性交を強制されたと主張する女性との写真の真贋を調べたが、明確な結果は出なかった
  • 「どうしても必要」で弁護士が勧めるならば、宣誓して証言する用意がある
  • ウィンザー城で開いた自分の娘の誕生パーティーにエプスティーン被告を招待した際、逮捕令状が出ているのは知らなかった
  • 被告との友情を通じて貿易やビジネスについて「学ぶ機会」を得たため、関係の全てを後悔はしていない
  • 被告との関係について表立って発言することは、自分にとって「精神衛生上の問題」になっていた

2010年暮れにニューヨークで

英大衆紙メイル・オン・サンデーが今年8月に伝えた写真では、同じく2010年12月に、ニューヨークのエプスティーン被告の邸宅にいるアンドリュー王子の姿が写っている。

2010年12月にエプスティーン被告宅に滞在したことについて、アンドリュー王子はBBCの取材に対して、「それについては毎日のように自分をなじっている。あれは王室の一員としてふさわしいことではなかった。私たちは常に、高い基準と慣習に沿って行動しようと務めている。なのに私は端的に言って、自分の周囲を裏切り、がっかりさせてしまった」と認めた。

性犯罪ですでに有罪となっていた人物の自宅に滞在したのは賢明なことだったのかと、メイトリス記者が重ねて質問すると、アンドリュー王子は「滞在先として便利だった」のだと答えた。

「それについてはもう何度も自問自答してきた。結局のところ、後から振り返ってみれば間違いなく、過ちだった。けれども当時は、そうするのが高潔な、正しい行動だと自分は思っていた。確かに自分は高潔に行動しすぎるきらいがあり、それで判断が左右されたのだろうと全面的に認める。致し方ないが、そういうことだ」

王子によると、この時にエプスティーン邸に滞在していたのは、被告の釈放を祝うパーティーに参加するためで、これを機に交際を断つと伝えるのが目的だった。ただし、パーティーの後もしばらくエプスティーン邸に滞在していたことを認めた。

「記憶にない」

2015年にアメリカでエプスティーン被告に対する民事訴訟が起こされた際にも、アンドリュー王子の関連が取りざたされた。原告の1人のヴァージニア・ジュフリー(旧姓ロバーツ)さんは、王子との性行為を3回にわたり被告に強制させられたと訴えている。

ジュフリーさんは当時、ロンドンの民家で王子と一緒に写真を撮っている。8月末にニューヨークの連邦地裁で、自分は民家の浴室で王子に暴行されたと証言した。ただしジュフリーさんの主張は後に、訴えの本件に無関係だと裁判長が判断したため、裁判記録から正式に削除された。

BBC番組でメイトリス記者は王子に対して、ジュフリーさんの訴えについてあらためて問いただした。ジュフリーさんは17歳だった2001年3月当時、ロンドンで王子と夕食をとり、ナイトクラブで一緒に踊り、王子の友人宅で王子と性交したと主張している。友人宅とは、エプスティーン被告が自分の一番の親友と呼んだギレイン・マックスウェルさんのマンション。マックスウェルさんは様々な社交の場で王子と一緒に写真に収まっている。

メイトリス記者の質問に王子は、「その女性と会った記憶がない。まったくない」と答えた。

ジュフリーさんと会った覚えはないのか重ねて質問されても、王子は「ない」と答えた。また、ジュフリーさんの腰に手を回している様子の当時の写真については、撮った覚えがないと繰り返し答えた。

王子は、この写真の真贋について「調査をした」ものの、「写真の写真の写真」なので、偽物だと立証できなかったと話した。

ジュフリーさんが自分と会ったと主張している2001年3月の夜、自分はロンドン南郊にあるピザのチェーン店に娘を連れていき、その後は自宅で過ごしたと説明。写真の家の上階に上がったことがあるか記憶にないし、自分はロンドンにいる時には写真でのような服装はしないのが通常だと指摘。さらに「あの手が私の手なのか、確証はない」と述べた。

また、自分が汗をかいていたとジュフリーさんが話していることについて、「自分には汗をかかないという医学的な症状があって、当時は汗をかかなかった」と話した。「フォークランド紛争でアドレナリンを過剰摂取」した影響だと述べ、汗をかけるようになったのは最近のことだと説明した。

王子は共通の知人だったマックスウェルさんを通じてエプスティーン被告と知り合ったが、交友を続けたのは国際ビジネスについてもっと知りたかったからで、「親友」には程遠く、「多くて年に3回会う」程度の関係だったと話した。

被告の私有地の島やフロリダ州の邸宅を訪れたほか、被告の自家用機で移動したことは認めた。

しかし、被告の島で複数の若い女性と性交したことや、ニューヨークでジュフリーさんと性交したのかと問われると、いずれも強く否定した。

2006年7月にウィンザー城で開かれた娘ベアトリス王女の誕生パーティーにエプスティーン被告を招いた際には、すでに性犯罪の疑いで逮捕令状が出ていたなど知らなかったと話した。

「王室の悩みの種」

逮捕されたエプスティーン被告との関係は、王室にとって「絶え間ない悩みの種」となったと王子は話すと共に、家族は「途方に暮れ」ながら、常に自分を支えてくれていると述べた。

エリザベス女王にとって打撃かと聞かれると、王子は否定したものの、「私にとっては打撃で、人の好奇心にさらされているのが、常にどこか後ろの方で水がぽたぽた落ちている感じだ」と話した。

この問題には早く区切りをつけたいが、「多くの人と同じくらい、自分もわけが分からない状態だ」と述べた。

インタビューに応じて疑惑について話すことにしたのは、「自分にとってある意味で心の健康に関することだ」とも言い、「もう何年もの間、ずっと気になっている」と打ち明けた。

エプスティーン被告が有罪になった後にも会ったのは「判断ミス」だったものの、ジュフリーさんの告発内容は「驚きでショックで気がかり」なことだと述べた。

しかし、被告との関係の全てを後悔しているわけではなく、容疑や疑惑とは無縁な部分でも「非常に良い成果もあった」のだと話した。

「彼が明らかにみっともない真似をしていたことを、残念に思うか? ええ」と王子は述べた。

メイトリス記者がさらに、エプスティーン被告は性犯罪者だと強調すると、王子は「ええ、残念です。あえて丁寧に言っているんです」と答えた。

アンドリュー王子の単独インタビューがどのように実現したのかについて、メイトリス記者は15日の番組で、数カ月前から王室と交渉を重ねていたと説明。今年8月にエプスティーン被告が死亡したのを機に、交渉はさらに本格化したのだという。

王子が取材を受けるにはエリザベス女王の許可が必要で、女王は「11日の深夜か12日の早朝」にインタビューを認めた様子だとメイトリス記者は話した。

(英語記事 Prince Andrew interview: Jeffrey Epstein stay was 'wrong thing to do'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50444827

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