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2019年11月20日

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12月12日の英総選挙に向けて19日、与党・保守党を率いるボリス・ジョンソン首相と最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首が、今回の選挙初のテレビ討論に臨み、イギリスの欧州連合(EU)離脱などについて激しく議論した。

ジョンソン首相は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)が再三の延期を経ていることについて、「この国家的にみじめ」な状態を終わらせると約束し、労働党は「ただ分断と膠着(こうちゃく)」しか提供しないと批判した。

これに対してコービン党首は、労働党こそ「ブレグジットを解決する」と表明。それは、「国民の皆さんに最終判断の機会を与えること」によって実現するとして、労働党が政権を奪還すれば、EUとの離脱協定について国民が賛否の意思表示をするための国民投票を実施すると約束した。

両党首はさらに、イギリスの国民医療保険制度にあたる「国民健康サービス(NHS)」、政治家の信頼性と指導力、独立運動が続くスコットランドの未来、そして王室などについて、意見を戦わせた。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、どちらの党首が明らかに討論に勝ったとは言えないものの、観客が2人の発言に積極的に笑ったことが印象的だったと述べた。

調査会社YouGovの簡易調査によると、勝敗に関する有権者の意見は半々できれいに割れており、「労働党支持者のほとんどはジェレミー・コービンが勝ったと思い、保守党支持者のほとんどはボリス・ジョンソンが勝ったと思っている」という。

英ITVが放送したこのテレビ討論には、保守党と労働党の党首のみが出席。野党の自由民主党やスコットランド国民党(SNP)の代表を呼ばないというITVの判断について、両野党は裁判所に訴えたものの、法廷はITVの決定を認めた。

SNPのニコラ・スタージョン党首はこの日の討論会について「まったく感心しなかった」し、どちらの党首も総理大臣の「器ではない」と批判した。

自由民主党のジョー・スウィンソン党首は、ジョンソン氏とコービン氏の討論ぶりについて、「わめきたててきちんと答えるのを避ける」ばかりだと述べた。

緑の党のシャーン・ベリー共同党首は、気候変動の危機が討論の中で「箇条書きの項目として扱われた」ことに懸念を示した。

ブレグジット党のナイジェル・ファラージ党首は、討論技術はコービン党首の方が上手だったとしながら、もし国民投票を今後実施したとして、EU離脱と残留のどちらを支持するか明示しなかったことを批判した。

NHSとブレグジット

討論会の前半はブレグジットの話題に終始した。

ジョンソン氏は、総選挙で過半数を得た上で、EUとすでに合意した離脱協定案を法制化し、1月31日に離脱を実現したいと強調。その上で、EUと恒久的な貿易協定の協議に入るつもりだと話した。

一方のコービン氏は、ジョンソン氏がEUとまとめた離脱協定案を廃案にし、離脱条件の協定をEUと交渉し直すと述べた。欧州との関税同盟に参加し、単一市場と関係を強化した協定をまとめ、これを国民投票にかけるつもりだと話した。

コービン党首はさらに、ブレグジット後の通商協定で保守党はアメリカの医療企業がNHSの契約を受注できるようにするつもりだと主張。これにジョンソン氏は強く反発した。

コービン氏はジョンソン氏に対して、「あなたは私たちの国民健康サービスをアメリカと製薬大手に売り渡すつもりだ」と言い、随所に黒塗りの入った政府文書を掲げた。情報公開法に基づき英チャンネル4が入手した文書には、英米政府の「秘密協議」で英政府が「NHSへの米製品の完全な市場参入」を提案している。

これに対してジョンソン氏は、「まったくの作り事だ」と反発し、「この政府も、どの保守党政権も、NHSを交渉材料にするなど、まったくあり得ない」と強調した。

両党首はさらに、ブレグジットがイングランドとスコットランドの連合に危機をもたらすのかで対立した。スコットランドは2016年の国民投票で圧倒的にEU残留を支持した。

ジョンソン氏は、労働党はSNPの支持を得ようとスコットランド独立の国民投票に賛成するだろうが、自分はそのような真似はしないと述べた。

これに対してコービン氏は、首相の言い分は「ナンセンス」で、労働党がSNPと連立することはないと強調した。

国民の信頼は

国民の信頼について聞かれると、ジョンソン氏は今のイギリス世界がぎすぎすしているのは、下院議員たちが繰り返し「国民投票の結果をしなかった」からだと述べた。

これに対してコービン氏は、「信頼というのは、それに値することをして初めて得られるものだ。国民の代表として、まずは国民の言うことを聞かなくてはならない」と言い、まず「人の言うことを聞いてから、合意形成に努める」のが自分のリーダーシップのスタイルだと述べた。

ITV司会者のジュリー・エッチンガム氏に、討論の対決姿勢をトーンダウンさせるための「対応」を求められると、両党首は握手を交わした。

ジョンソン氏が信頼の重要性について語ると観客の一部が笑い、コービン氏が1週間の勤務日を減らすという労働党の提案について発言すると観客の一部が笑った。

王室について

英王室が「役割を果たすのに適しているか」質問されると、コービン氏は「多少の改良が必要だ」と述べた。

これに対してジョンソン氏は、「王室は非の打ち所がない制度だ」と述べた。

性犯罪で有罪になり、起訴中に米拘置所で死亡した米富豪ジェフリー・エプスティーン被告との交友関係が批判されている、ヨーク公アンドリュー王子については、コービン氏は「解明が必要なきわめて、きわめて深刻な疑問」があり、「法の上にいる者などいない」と述べた。

ジョンソン氏は「もちろん、法律には従わなくてはならない」と述べた。

互いにクリスマス・プレゼントを上げるなら

討論会の最後の質問は、もし互いにクリスマス・プレゼントを上げるとしたら何を上げるかというものだった。

コービン氏は、自分なら首相にディケンズ小説「クリスマス・キャロル」を贈ると答え、そうすれば「スクルージがどれだけ嫌なやつか分かるはずだ」と説明した。スクルージとは「クリスマス・キャロル」の主役で、クリスマスや思いやりを憎むけちで意地悪な金貸し。

ジョンソン氏は当初、「自分の素晴らしいブレグジット合意の冊子」を贈ると答えたが、「政治に無関係な答え」を求められると、「ダムソン・ジャム」を贈ると答えた。ダムソンはプラムの一種。

他の野党党首にも質問

ITVは討論会の後、他の野党党首にも個別に質問した。

自由民主党のスウィンソン党首は、自分たちがブレグジットに反対していることを強調し、保守・労働両党の「くたびれた古臭い政党」より自分たちの方が、国に「より良い未来」を提供できると述べた。

スウィンソン氏はさらに、気候変動への取り組みとして、頻繁に飛行機を利用する人への税金を検討していると話した。

SNPのスタージョン党首は、ジョンソン氏とコービン氏の「どちらかがスコットランドの未来を決めるなど認められない」と述べ、SNPは国民が「ブレグジットの混乱から脱出」できるようにすると約束した。

スタージョン氏はさらに、たとえ総選挙の結果、単独過半数の政党がない「宙吊り議会」にまたなったとしても、SNPが労働党と連立するという「合意などない」と強調した。

ブレグジット党のファラージ党首は、現在の政治システムは「壊れて、腐って、汚職にまみれている」と述べ、自分たちは投票制度を変更し貴族院(上院)を廃止すると述べた。

緑の党のベリー党首は、コービン氏とジョンソン氏が気候変動問題にまともに取り組んでいないと批判し、これに若い世代は「落胆」しているはずだと述べた。

BBC党首討論会

BBCも、保守党と労働党の党首討論会を12月6日に英南部サウザンプトンで、主要政党幹部の討論会を11月29日に英西部カーディフで開く。

自由民主党はBBCに対して、12月の2党首の討論会にスウィンソン氏を加えたかったことに不満を示し、弁護士を通じた書簡を送っている。

BBCスコットランドは12月10日、SNP、保守党、労働党、自由民主党の幹部によるテレビ討論会を実施するが、スコットランド緑の党は、自分たちが外されたことに不満を表明している。

(英語記事 Election debate: Johnson and Corbyn clash over Brexit

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50483922

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