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2019年11月21日

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ジョナ・フィッシャー(ウクライナ首都キーウ)、リアリティーチェック(ファクトチェック)チーム

ドナルド・トランプ米大統領と与党・共和党の支持者たちは、野党・民主党が連邦下院で進める弾劾調査の流れを、自分たちの望む方向に動かそうと懸命になっている。そのためトランプ氏たちは、調査を進める民主党を攻撃し、調査のきっかけとなった情報機関の内部告発者を攻撃する作戦を展開している。

トランプ氏たちはさらに、ウクライナの政治家たちの行動に疑問を投げかけ、ウクライナでジョー・バイデン前副大統領(民主党)とその息子はろくなことをしていなかったはずだという主張をもっときっちり調べるよう強く求めている。

弾劾公聴会を開いている下院情報委員会で共和党トップのデヴィン・ヌネス筆頭委員は、19日の公聴会の冒頭で、3つの具体的な主張をした。

それはどういうことで、どこまで信憑性(しんぴょうせい)があるのか?

1. 「内部告発者は民主党とつながっている」

トランプ氏の支持者たちは、トランプ氏とウクライナ大統領の通話内容を問題視し、監察総監に報告した内部告発者を問題視している。この人物が実は民主党とつながっていて、正式な報告をする前から民主党幹部に接触し、詳細を伝えていたと共和党は主張する。

内部告発者は確かに、トランプ氏の通話内容について正式に報告する前に、下院情報委員会(アダム・シフ委員長、民主党)の議会職員に接触している。内部告発者と面談した議会職員は、弁護士を探して正式な手続きで報告するよう助言した。

シフ委員長の報道担当は、これは異例のことではなく、内部告発者が議会委員会に接触することは過去にもあったと説明。民主党が多数党の時も、共和党が多数党の時も、同様のことがあったという。

内部告発者から接触があった場合に連邦議会がどう対応すべきかについては、公式ガイドラインがある。つまり、議会がこうした内部告発の受け手になるのは、ごく普通であることがうかがえる。

シフ委員長は、内部告発者に直接会ったことがあるという共和党の言い分を否定しており、最近の公聴会ではそれが誰かも承知していないと発言した。

告発者が以前から民主党とつながっていたという共和党の主張については、告発者の代理人をつとめる弁護士が、特定の政党や候補や選挙活動のために働いたことはないと述べている。

こうした関係の有無を検討するにあたり、情報機関の中で告発内容を検討する監察総監は「告発者に政治的偏向があり得るか」を調べた。それでも、大統領の行動に問題があったという報告内容そのものには信憑性があると結論づけた。

2. 「ウクライナが2016年米大統領選に介入した」

トランプ氏の支持者たちは、2016年大統領選でトランプ陣営が不利になるよう、ウクライナ国内の人物やウクライナとかかわりのある人物が民主党に協力していたと主張している。

この主張には主な要素がいくつかある。

まず第一に、いわゆる「黒い台帳」だ。ウクライナで浮上したこの文書には、トランプ陣営の元選挙対策本部長、ポール・マナフォート受刑者(詐欺罪などで服役中)が、ウクライナの親ロシア派政党から無申告の資金を受け取っていたともとれる内容が書かれていた。

トランプ氏の支持者たちは、この「黒い台帳」は偽物だと主張。ウクライナの記者出身の政治家で、トランプ氏を憎むセルゲイ・レシェンコ氏がわざとリークしたものだと言っている。

しかし、この文書のうちレシェンコ氏が公表した部分は、マナフォート受刑者に何も言及していない。マナフォート受刑者に関する内容は、ウクライナ政府の正式な汚職対策機関が公表したものだ。

そして、この文書が公表されたのは3年以上も前のことだが、その内容の信憑性を本当に疑わせる材料は出ていない。

第二に、民主党全国委員会(DNC)でかつてパートタイムの顧問として働いていた、ウクライナ系のアレクサンドラ・チャルパ氏の存在を、共和党は問題視している。

チャルパ氏は、米政治ニュースサイト「ポリティコ」による2017年1月の記事で大きく扱われていた。批判も多いこの記事によると、チャルパ氏はマナフォート受刑者にとって不利な材料を探り出すため、ワシントンにいるウクライナの外交関係者に接触していたとされる。

記事はチャルパ氏と、駐ワシントンのウクライナ大使館のやりとりについて記述。トランプ氏やマナフォート受刑者とロシアの関係をうかがわせる情報をチャルパ氏が見つけようとしていたと書いている。

DNCとチャルパ氏はこれまで繰り返し、ウクライナ大使館への接触はチャルパ氏が自主的にしたことと主張している。また、実際に何か関連情報の提供があったという証拠はないと説明している。

ウクライナ大使館は、自分たちは「いっさいの関与を拒否した」と話している。

確かに2016年には、ウクライナの主な政治家たちは民主党のヒラリー・クリントン氏の当選を期待していた。ウクライナ東部では親ロシア派との紛争が続き、トランプ氏は対ロ方針を再検討していると言われていたからだ。

2016年7月にトランプ氏は、ウクライナと国際社会の大半が違法だと非難するロシアのウクライナ侵攻について、承認を検討する可能性を示す発言をした。

ウクライナの当時の駐米大使、ワレリー・シャリー氏はトランプ氏を批判する論説を書いた。ウクライナのアルセン・アワコフ内相は、トランプ氏の発言は「恥ずべき」ものだと非難した。

しかし、ウクライナによるまとまった選挙介入があったという主張はもっぱら否定されていた。米国務省のウクライナ担当、ジョージ・ケント氏は弾劾公聴会で、その説は「事実の裏付けを欠いている」と述べた。

3.「バイデン親子はウクライナでろくなことをしていない」

オバマ前米政権において、ウクライナ政策の担当はジョー・バイデン副大統領(当時)で、その息子のハンター氏は、ウクライナイ有数のエネルギー会社ブリスマの役員として高額の報酬を得ていた。

トランプ大統領を支持する人たちは、バイデン氏が、ウクライナの当時の検察トップ、ヴィクトル・ショキン検事総長の解任を求めたと信じている。バイデン氏の息子の会社を検察が調べていたのが、その理由だったとしている。

確かに、バイデン氏はショキン検事総長の解任を求めていた。しかし、それはバイデン氏に限ったことではなかった。

当時、複数の国際機関や欧米諸国、ウクライナ国内の反汚職活動家の間では、ショキン検事総長は解任すべしというのが、ほぼ一致した認識だった。

厳密に言えば、解任されたウクライナの検事が、前任者から受け継いだ案件のひとつとしてブリスマ社を見ていたというのは事実だ。しかし、ウクライナでの多くの案件と同様、検事が積極的に追求していたものではなかった。

だとするならば、バイデン前副大統領の息子のハンター氏は、月給5万ドル(約550万円)と広く言われる報酬に見合う何をしていたのか? 2014年にブリスマ社の役員になった時点で、ガス業界にもウクライナにも何の経験もなく、本人が自分の名前ゆえに採用されたのだろうと認めていた。役職のオファーを受けたのは「判断ミス」だったと、これも本人が認めていたのだが

さらに、米国務省のウクライナ担当、ジョージ・ケント氏が当時、ハンター氏のブリスマ役員就任について、バイデン副大統領のスタッフに、利益相反のおそれがあると懸念を伝えていたことも分かっている。

しかし、東欧に限らず世界各地では、問題となっている企業の世間的イメージを改善するため、著名人物が高額報酬を得るというのは、よくあることだ。

(英語記事 Trump impeachment inquiry: Three Republican claims fact-checked

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50484821

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