海野素央の Love Trumps Hate

2020年1月8日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

司令官殺害の動機

 年末から年始にかけて一連の流れがあました。昨年12月19日、キリスト教福音派の雑誌「クリスチャニティ・トゥデー」が論説で「トランプ大統領は上院か次の選挙で罷免されるべきである」と訴えました。キリスト教福音派は、トランプ大統領の支持基盤の一角を構成しています。

 ピュー・リサーチ・センターによると、2016年米大統領選挙でキリスト教福音派の81%がトランプ大統領、16%がヒラリー・クリントン元国務長官に投票しました。キリスト教福音派においては、トランプ氏がクリントン氏に対して65ポイント差で圧勝しました。

 トランプ大統領はホワイトハウスで閣僚会議を開くとき、中絶反対のベン・カーソン住宅都市開発長官を指名して、閣僚全員で神にお祈りを捧げます。

 ちなみに、カーソン氏の父親は牧師でした。トランプ大統領はこの場面を米国民に公開しています。それほど、キリスト教福音派に配慮している訳です。

 にもかかわらず、キリスト教福音派から罷免発言が飛び出すと、トランプ大統領は1月3日、急遽同派の集会で演説を行いました。そこで、トランプ氏は反イランの信徒に向かってソレイマニ司令官殺害の正当性を訴えました。

 要するに、再選の鍵を握るキリスト教福音派のトランプ離れを食い止めたいという強い思いが、司令官殺害の動機の1つあったとみることができます。

「第2のベンガジ」とオバマ前大統領の存在

 周知の通り、トランプ大統領は常にバラク・オバマ前大統領を意識して行動します。リビア東部ベンガジで2012年9月、米領事館襲撃事件が起こり、駐リビア米国大使を含めた4人が死亡しました。このとき、再選を狙うオバマ前大統領は共和党から適切に対処できなかったと非難を浴び、米領事館襲撃事件が大統領選挙の争点になりました。

 イラクの首都バグダッドにある米大使館が2019年12月31日、親イラン派のデモ隊によって襲撃される事件が起きました。仮に「第2のベンガジ」になれば、今年の大統領選挙の争点になり、トランプ大統領は民主党候補から攻撃を受けるのは必至です。従って、是が非でも第2のベンガジは回避したかったはずです。

 加えて、トランプ大統領は共和党から「弱いリーダー」「何もしないリーダー」と見られたオバマ前大統領と同じ轍を踏みたくなかったことは明らかです。イランに対して報復措置をとって、オバマ前大統領よりも「強いリーダー」として見られたかった訳です。司令官殺害の動機には、オバマ氏の存在があったと捉えることも可能です。

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