2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2020年4月23日

今は人影がまばらなワイキキのビーチの夕日(筆者撮影、以下同)

 ハワイ州で事実上の外出禁止令(Stay-at-home Order)と、同州到着後14日間の自主隔離を義務化する渡航規制が始まり、早いものでもうすぐ1カ月が経つ。観光客で溢れていたワイキキは静まり返っており、建ち並ぶ有名ブランド店の入り口には「休業中」の貼り紙が見られ、目抜き通りのカラカウア・アベニューを歩く人もほとんどいない。わずか1カ月半前には予想もできなかった様相で、ハワイ州民の日常は突然180度変わってしまった。ハワイ経済および観光業界はこのように新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けているが、人命あってこその経済であるから背に腹は代えられない。

 しかし、他州や他国からの渡航者がほとんどおらず(こんな状態でも、まだ少数の訪問者がいる)、ほとんどの人々が家に籠っているせいか、ここ1週間ほどハワイ州内の新型コロナウイルス新規感染者数の増加が急に鈍ってきた。ハワイ州保健衛生局の統計によると、4月13日~17日まで毎日の新規感染者数が5~13人程度で前後してきたものの、4月18日は前日比21人と増加。しかしこれはハワイ島でクラスター感染が発生して17人の新規感染者が出たためで、オアフ島とマウイ島では各2人ずつの増加のみにとどまっている。4月19日は州全体で6人増、4月20日は4人増だった。

 同局によると4月20日現在、ハワイの新型コロナウイルス感染者総数は計584人、死者は10人。ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイルス感染者数統計によると、人口100万人あたりの感染者数が全米で最も少ない。584人のうち、入院治療を要したのは全体の9%にあたる55人で、9割以上が入院の必要がない無症状あるいは軽症者。総感染者のうち72%にあたる423人はすでに回復している。

 つまり、ハワイ全州で現時点で治療あるいは隔離中の患者数は151人のみだ。感染者数の中には住民だけでなく、旅行中に感染が判明して治療を受けた人々や、ハワイ州外で感染した州民数人も含まれている。また、感染者総数の80%が他の地域に居住、あるいは旅行後にハワイに帰ってきた人々だというから驚かされる。その他の20%は家族間や職場、市中感染など二次感染者だろう。

なぜハワイは感染者数を抑制できたのか

入店人数を制限するスーパーも。皆静かに並んで順番を待つ

 ひとたび新型コロナウイルスが上陸するやいなや、アメリカでは瞬く間に感染が拡大。前出のジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、4月19日現在の総感染者数は75万9086人と、2位のスペインに大きく水を開けて1位だ。この数に比較すると、ハワイ州の感染者数584人がいかに少ないかが分かる。ではハワイが感染者抑制に成功した理由とは一体何だろうか?

 まず第一の要因はシンプル。ハワイ州は太平洋の真ん中にある諸島で構成されており、アメリカ本土、または他国と陸続きでないため、人々の往来を簡単にコントロールできる点だ。アメリカ国内では州境に検問などはもちろんなく、またアラスカ州以外は隣州と接する距離も長いため、人々の行き来をそう簡単に規制することができない。その点、航空機(またはクルーズ船。しかし今この方法を使う人はいない)でしか来られないハワイでは、渡航規制を設けてしまえば後は空港で規制を行うだけでいい。

 第二の要因として考えられるのは、外出禁止令が徹底されていることである。海でのサーフィンや水泳は許可されているものの、レストランはもちろん遊興施設や公園、ビーチは閉鎖されており、違反した場合は$5000以下の罰金または1年以下の禁固刑に処される。島が狭いため警察もパトロールがしやすく、幸か不幸か住民にとっては逃げ場がない。


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