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2020年5月7日

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レイチェル・シュレア健康担当記者

新型コロナウイルスに何百もの変異が起きていることが、アメリカとイギリスの研究チームによって明らかになった。

しかし、流行の経緯やワクチンの効果にどう関係するかはまだ分かっていない。

ウイルスは変異するものだ。問題は、どの変異が新型ウイルスによる感染症(COVID-19)の症状を悪化させたり、感染力を高めたりしているのかだ。

アメリカで行われた予備研究によると、「D614G」と呼ばれる変異が有力になっており、これが感染力を強くしている可能性があるという。

この研究はまだ他の研究者の審査を受けておらず、正式に発表されていないものだ。

米ニューメキシコ州ロスアラモス国立研究所の研究チームは、「インフルエンザウイルス遺伝子データベース(GISAID)」を使い、ウイルスの「とげ」の形から変異を追跡した。

すると、D614Gには何らかのウイルスの成長が早くなる要素があることが判明した。しかし、それがどのような結果につながるのかは不透明だという。

この研究では英シェフィールドの新型ウイルス患者のデータを分析した。このデータではD614Gが特に多かったものの、この変異したウイルスにかかった患者が重症化したり、入院期間が長期化したりする証拠は得られなかった。

「変異は悪いものではない」

一方、英ユニヴァーシティー・コレッジ・ロンドン(UCL)で行われた研究では、新型ウイルスについて198種類の変異が確認された。

共著者のフランソワ・バロー教授は、「変異そのものは悪いものではないし、SARS-CoV-2(新型ウイルスの正式名称)の変異が予想より速いことも遅いこともない」と説明した。

また、「今のところ、このウイルスの致死性や感染力に変化があるかどうかは断言できない」という。

同じく新型ウイルスの変異を分析している英グラスゴー大学の研究チームは、こうした変異でウイルスが別の種になってしまうわけではないと説明する。同大学は研究の結果、現在流行しているウイルスは1種だけだという結論に達している。

ウイルスの小さな変化をモニタリングすることは、ワクチン開発で重要な役割を果たす。

たとえばインフルエンザウイルスは変異がとても速く、毎年ワクチンを修正する必要がある。

治療薬の研究にも寄与

現在、開発が進んでいる新型ウイルスワクチンの多くは、このウイルスに特有の「とげ」を標的にしている。人間の体にとげの形を認識させることで、あらゆる変異に対応できるという仕組みだ。しかしこのとげの形が変わってしまえば、この方法で開発されたワクチンの効果は弱くなってしまう。

現時点では、これはすべて理論上の話だ。ウイルスのゲノム変異がどういう意味を持つのか、まだ十分な情報が得られていない。

UCLの研究の共著者であるルーシー・ファン・ドープ博士は、大量のウイルスのゲノムを分析できれば、「治療薬開発に大きな価値がある」だろうと話した。

その一方で、「ゲノムから分かることはほんのわずかだ」と述べた。


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(英語記事 Scientists puzzle over impact of virus mutations

提供元:https://www.bbc.com/japanese/52569117

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