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2020年5月12日

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ショーン・コクラン、キャサリン・セルグレン、BBCニュース

イギリス政府は、新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)からの再建計画の中で、イングランドの小学校を夏休み前に1カ月、再開したいとの考えを明らかにした。

しかし、他者と2メートル以上の距離を取る施策を続けるためには、1クラスの人数を15人以下にすること、休み時間をずらすこと、小まめな手洗いが必要になるという。

これに対し、全国教育労働組合は学校再開は「無謀」だとして、拒否している。

計画によると、子どもの自宅待機を選んだ親に罰金などは科せられない。

ボリス・ジョンソン首相は10日のテレビ演説でこの計画を発表した中で、感染を十分に抑制できている状態が続けば、「最短で」6月1日から、「レセプション(入学準備学年、4-5歳)」の児童と、小学校1年生と6年生の登校を再開できるだろうと語った。

11日に公表されたガイダンスによると、その後、小学校の全学年や保育所なども順次再開していく予定。しかし、「ウイルス対策で十分な進展がなかった場合」には再開が遅れると強調している。

レセプションと1年生、6年生が優先される理由については、「最も幼い児童、そして中等教育へと上がる準備が必要な児童に、教師との時間を最大限に確保するため」としている。

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学校での安全対策は?

教育省が発表したガイダンスでは、学校ではクラスを15人以下のグループに分け、それぞれのグループは登校中に別のグループと接触してはいけないとされた。

生徒同士は可能ならば間に2メートルの距離を開けるよう求められるが、小さな児童が常にこれを守れるとは想定されていない。

また、休み時間や昼食の時間だけでなく、登校と下校の時間もグループごとにずらすことになる。

生徒には小まめな手洗いが奨励されるほか、教室の清掃もこれまでより頻繁に行う。学校側も、屋外スペースを利用するよう推奨される。

一方、教師にも生徒にもマスクの着用は推奨されていない。

これらの施策は、デンマークの学校再開方法を踏襲したもの。デンマークでも生徒は少人数グループに分けられ、互いに近づかないようにしている。また、小まめな手洗いも導入されている。

中等・高等教育は?

中等教育や大学などの高等教育機関は、9月まで閉鎖される見込みだ。ただし、来年に進学試験のある生徒については、現在のオンライン授業以外の支援が受けられるようになるという。

学校側には、「大事な試験を来年に控える10年生と12年生(日本の中学3年生と高校2年生に相当)の生徒に対する、対面授業の準備」をするよう指示があった。

しかし最大野党・労働党のレベッカ・ロング=ベイリー影の教育相は、政府は教員の「懸念、不安、混乱」を解決すべきだと指摘した。

「校内でどのように他者と距離を取るのか、どうやって教員や生徒、保護者を新型ウイルスから守るのか、クラスはどの程度少人数にすればいいのか、全く情報がない」

子どもを自宅待機させたい親はどうすれば

政府に対し、今学期は子どもを登校させるかどうかを親に選ばせてほしいという訴えが出ている。オンライン署名ではすでに40万筆以上が集まった。

ただガイダンスによると、親が子どもを自宅待機させても、不登校を理由に罰金を科されることはない。

現在、「キー・ワーカー」と呼ばれる市民生活維持に不可欠な職種の人の子どもについては通学が可能だが、そうしない人に罰金は科されていない。

この新型ウイルス危機による一時的な措置は、今後授業が再開される学年に対しても適用されるもようだ。

オンライン署名を始めたルーシー・ブラウンさんは、「母親として、パンデミックの仲で自分の娘の安全に影響が出るような選択をするという深刻な状態に直面したくない」と話している。

通学する生徒は何人くらい?

キーワーカーの子どものために学校を再開すると決まった際、登校する生徒が学校の対応能力を超えてしまうのではと懸念されていた。しかし実際には、通学した生徒は予想よりも少なかった。

今回発表されたガイダンスによると、現在イングランドでは全児童の2%が登校している。罰金がなく、他者と距離を取る施策によって授業が複雑化する可能性がある中、どれくらいの生徒が学校に戻るのかは不明だ。

しかし学校再開によって、親には職場に戻るという選択肢が生まれる。子どもも、家から出て友達に会うことでほっとするかもしれない。

イングランド主任医務官(CMO)のクリス・ウィッティー教授は11日の会見で、新型ウイルスの子どもへの脅威は「他の感染症に比べて非常に、とても低い」と説明した。

一方で、小学校の授業再開によって「実効生産数が大きく上昇したり、変化する」かどうかが問題だと語った。

「教員や親がそれぞれのリスクを懸念するのは当然で、その点については政府も専門家と協議している最中だ。適切な議論をし、リスク低減のためにさまざまな施策を行うことができると理解することが非常に重要だ」

教員労組の考えは?

イギリス最大の教員労組「全国教育労組」のメアリー・ボウステッド副会長は、「このタイムテーブルは無謀で、端的に言って安全ではない」と指摘した。

また政府の学校再開計画について、「他者と距離を取る施策の重要性や、どのように学校に取り入れていくかについての発表に一貫性がなく、教員の不安をあおり、混乱の種になる」と批判した。

別の教員労組「NASUWT」のパトリック・ローチ会長も、「教員らは、6月1日からという発表に深刻な懸念を抱えている。本当に可能なのか、児童やスタッフに安全な形でできるのか」と話した。

校長の労組NAHTのポール・ホワイトマン会長は、7週間後にすべての児童を復帰させる計画は「あまりに楽観的で、無責任だ」と述べた。

「校長としては、教室が空の状態は1日でも少なくしたい。しかし、安全でない限り、多くの児童に登校リスクを負わせたい校長など、この国にはいない」

親はどう考える?

BBCがフェイスブックに開設している家族・教育ページには、安全性を心配する親からのコメントが増えている。

カースティー・スミスさんは、「レセプション学年の子どもと、小学生3人の親です。学校には戻らせません」と話した。

「小さい子はまず真っ先に、先生やお友達をハグしようとするはず。娘は5歳でなので。『それはだめ、あれはだめ』と小さい子どもに言い続けると、自分にとってたり前のことなのに、自分はいつも間違ったことをしているのだと、そう思い込んでしまう」

「クラスをグループ分けして昼休みをずらしても、鉛筆やおもちゃ、テーブルを、次の子どもが使う前に消毒するなど無理でしょう」

グルメート・バチュさんも、「子どもと先生にとって確実に安全と言えるまで、子どもを学校には戻らせない」と話した。

ルイーズ・リチャーズさんは、「多くの子どもが、感染症に弱い家族と暮らしている。学校には行かせられない。単純に、子どもとその家族をリスクにさらすことになる」と指摘した。

スザンヌ・マティンソンさんは、ワクチンが開発されるまでは子どもを学校には戻せないと語った。

「もし強制されたら退学し、ホームスクーリングに切り替えます」

イングランド以外の地域では?

ウェールズ自治政府のマーク・ドレイクフォード首相は、「向こう3週間、実際には6月中に、学校を再開することはあり得ない」と話した。

スコットランドでは6月末から夏休みに入るが、その前に学校を再開する可能性は低いとみられている。

北アイルランドのピーター・ウェア教育相は、9月から段階的に学校を再開する可能性があると話した。

(英語記事 Class size of 15 pupils when primary schools return

提供元:https://www.bbc.com/japanese/52628024

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