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2020年5月14日

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アメリカの感染症研究の第一人者、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士が12日、あまりに早期に経済活動を再開すれば新型コロナウイルスの感染が再び拡大するおそれがあると警鐘を鳴らした。

ファウチ博士はこの日、共和党が多数を占める米上院委員会の公聴会でビデオを通じて証言。その中で、連邦政府による経済再開にむけたガイドラインが守られなければ、「小さな増加がいくつも」積み重なってアウトブレイク(大流行)を引き起こす可能性があると述べた。

また、米国内の実際の死者数はおそらく、約8万人とする公式データよりも多いと述べた。

ファウチ氏の発言は、経済活動を再開したがっているドナルド・トランプ米大統領の楽観的な見方と対立する内容だ。

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ファウチ氏は、ホワイトハウスによる「アメリカを再び開く」計画について言及した。この計画は、3段階で段階的に緩和を進めていくというもの。1段階ごとに14日間の実施期間が設けられる。各州は学校や事業の再開を認める中で、この計画の実施を検討するよう求められている。

すでに経済活動を再開している一部の州では、感染率が増加傾向にあり、減少はみられない。

制限緩和でアウトブレイク誘発の恐れ

ファウチ氏は早期の経済再開には、当局が制御できないであろうアウトブレイクを誘発する危険性があると警告。そのようなアウトブレイクは経済回復を後退させ、「苦しみや死」につながる可能性があると付け加えた。

ホワイトハウスが経済活動再開にむけたガイドラインを提示してはいるものの、ロックダウンをどのように緩和していくのかという最終的な決定権は各州知事に委ねられている。

「どんなに最高の状況下であっても、緩和を進めれば感染者が出てくることは間違いない」

「慎重に楽観的に」

今秋にも新型ウイルスの感染が再び拡大する可能性があるか問われると、ファウチ氏は「完全に想像がつくことであり、可能性がある」と回答した。

「感染の第2波の脅威に直面した場合、我々が非常に効果的に対処し、アウトブレイクの発生を阻止できることを願っている」

ファウチ氏はまた、開発が進められている複数のワクチンのいずれかが新型ウイルスに有効であるという「保証はない」としつつ、ほかのウイルスに関する知識に基づき、自分は「慎重に楽観的に見ている」と述べた。

「我々には多くの候補がある。その中から複数の選択肢が生まれることを我々は望んでいる。言い換えれば、ゴールに向けて複数のことを試すことができる」

米国内の状況は

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、日本時間14日午前時点で、アメリカでは139万人以上が感染している。ロシア(24万2000人以上)やイギリス(23万人以上)、スペイン(22万8000人以上)、イタリア(22万2000人以上)などより約6倍も多い。

トランプ大統領は11日の記者会見で、アメリカでは市民に対する新型ウイルス検査が「広く行き渡っている」と主張した。

しかし、今週までの時点で、アメリカでは約3億3000万人の人口のわずか2.75%しかウイルス検査を受けていない。また、住民の10%を検査できている州は1つもない。

アメリカでは一部の州でロックダウン(都市封鎖)の緩和が始まっている。州知事が共和党員のジョージア、オクラホマ、アラスカといった州は、いち早く制限緩和に向けて動き出した。

最も人口の多いカリフォルニア州も、12日に制限を緩和した。ギャヴィン・ニューサム州知事は、特定の予防措置に従うことを条件に、オフィスや一部のレストランの再開を認めるとしている。

ホワイトハウスで感染者も

ホワイトハウスは11日、マイク・ペンス副大統領の側近らが新型コロナウイルスに感染したことを受け、職員に対し、大統領執務室があるホワイトハウスの執務棟ウェスト・ウィングにおけるマスク着用を命じた

トランプ氏は、自分がマスク着用の方針を義務付けたと明かしたが、11日のホワイトハウスのローズ・ガーデンで記者会見した際にはマスクを着けていなかった。

トランプ氏は、自分は常に「みんなから遠く離れている」ため、この指示に従う必要はないと主張した。

ケイティ・ミラー米副大統領報道官の新型ウイルス感染を受け、ペンス副大統領はトランプ氏と物理的距離を置いている。

ケイリー・マケナニー大統領報道官は、「ペンス副大統領は数日間、トランプ大統領と距離を置くことを決めた」と説明した。


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(英語記事 Fauci warns of 'needless suffering and death'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/52643773

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