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2020年7月23日

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ドナルド・トランプ米大統領は22日、国内各地の暴力対策強化として、連邦政府の法執行職員を「大量」に派遣するとホワイトハウスで表明した。

イリノイ州シカゴやニューメキシコ州アルバカーキーなどで、警察暴力への抗議を機に激化するデモ行動について、トランプ氏は「この暴力の横行はこの国の良心に衝撃を与える」と述べた。シカゴとアルバカーキーの市長は共に、野党・民主党所属。

トランプ氏はウイリアム・バー司法長官と共にホワイトハウスで記者団を前に、暴力犯罪対策強化の「レジェンド作戦」を発表。6月にミズーリ州カンザスシティーの自宅で眠っていたところを撃たれて死亡した4歳のレジェンド・タリフェロちゃんの名前にちなんでいる。記者発表には、レジェンドさんの母親も同席した。カンザスシティーの市長も民主党所属。

司法省によると、「レジェンド作戦」では連邦捜査局(FBI)や連邦保安官局などの連邦機関が、各地の地元捜査機関と連携して、犯罪急増に取り組む。

トランプ氏は、自分と対立する野党・民主党が犯罪に弱腰だと批判。「このところ、警察組織を解体させようとする過激な運動」が全米各地で相次ぎ、それが「銃撃、殺害、凶悪暴力事件のショッキングなほどの急増」につながったと述べた。

「この流血は終わらせなくてはならない。この流血は終わる」と、トランプ氏は強調した。

「地域や街の安全確保に必要な対策を政治家が実施しようとしなかったという、ただそれだけのために、母親が死んだ子供を自分の手に抱くなどということがあってはならない」

記者発表でバー司法長官は、カンザスシティーに連邦政府職員約200人を派遣したと発表。さらに「同程度」の人数をシカゴに、35人をアルバカーキーに派遣すると述べた。

暴力事件の相次ぐ都市で警察官を増員するため、連邦予算約6000万ドルを地方都市への補助金に充てる方針という。

バー長官は、法執行権限をもつ連邦政府職員を増員し、「典型的な犯罪取り締まり」を強化する方針だと話した。これは、西海岸オレゴン州ポートランドに派遣されている国土安全保障省の職員が「暴動や暴徒による暴力から守る」ことを目的としているのとは、性質が異なるという。

司法長官は昨年12月にも同様に、7都市での犯罪急増に対して連邦職員の増派で対応すると発表している。

警察暴力や人権侵害への抗議を機にデモが5月下旬以来続くポートランドでは、派遣された国土安全保障省の職員がデモ参加者を拘束している。こうした動きは市民や市当局、州政府から強い反発を呼び、むしろ緊迫する現地の状況悪化につながったと批判されている。

トランプ氏に批判的な人たちは、コロナ禍でアメリカの死者が14万2000人を超え、大統領支持率が低迷する渦中で、11月の再選を意識した動きだと警戒している。

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5月25日にミネソタ州ミネアポリスで武器を持たない黒人男性、ジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行で死亡して以来、全米各地で抗議行動が続いている。平和的行動がほとんどだが、中には混乱や暴力沙汰につながるものもある。

他方この間、ニューヨーク、フィラデルフィア、ロサンゼルス、シカゴ、ミルウォーキーなどの主要都市で、発砲事件が急増している。

アメリカ各地で何が起きているのか

54日間連続して抗議行動が続くポートランドでは21日夜、連邦地裁前に集まった数百人のデモ隊に向けて、連邦職員が催涙ガスやこしょう弾、閃光(せんこう)弾などを打ち込んだ。

ポートランドでは、連邦職員が所属の明記がない軍用作業服などを着て、やはり所属の明記がない車両で市内を移動し、大勢の抗議参加者を手当たり次第に拘束していると非難されている。

シカゴのロリ・ライトフット市長は21日、市警察の増強に連邦政府職員が派遣されることを記者会見で確認した。

「本当の提携関係は歓迎するが、独裁は歓迎しない」と市長は述べ、ポートランドと同じような戦術をシカゴで試さないよう警告した。

シカゴの地元紙シカゴ・サンタイムズによると、市内の殺人件数は昨年同期より34%増えている。21日には葬儀会場の外で少なくとも14人が撃たれて死亡した。ギャング関連の事件とみられている。

FBIの2018年調査によると、アルバカーキーの暴力事件発生率は全国平均の3.7倍だった。殺人と強姦事件の発生率は倍以上だった。

カンザスシティーについては、地元紙カンザスシティー・スターによると、2020年の殺人事件件数は過去最多を記録している。市内だけでこれまでに110件の殺人事件があり、大都市圏を含むと160件になるという。

なぜ犯罪が急増

刑事事件の専門家たちは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う大量失業のまっただなかで、犯罪が急増していると指摘する。

警察関連の調査を専門とする非営利団体「Police Executive Research Forum」は米ABCニュースに対して、犯罪急増の背景にある一因として、刑務所での新型ウイルス集団感染を防ぐため、受刑者を早期釈放したことが挙げられると話した。

ニューヨーク市警は、たとえ重大事件の被告でも裁判所は審理開始前に仮釈放しなくてはならないとした保釈制度改革法が原因だと批判している。

ミズーリ・セントルイス大学のリチャード・ローゼンフェルド教授(犯罪学)は米CNNに対して、新型ウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が各地の都市で徐々に解除されるに伴い、犯罪も増えている側面があると話した。

警官が自宅待機を命じられたことで地域の防犯活動が中断したことが影響しているという犯罪研究者もいる。さらには、フロイドさんの暴行死によって警察への不信感が悪化したという指摘もある。

ニューヨーク市警のテレンス・モナハン本部長はこのほど、警察への抗議が全米で続くのを見て、「おまわりはもう何も手出しできない」と自信をつける人が増えているようだと懸念を示した。

加えて、警察批判の高まりにいらだつ警官が、犯罪取り締まりに消極的になっているかもしれないという意見も一部で出ている。

米CBSニュースによると、シカゴの警察職員労組は最近、進んで残業しないよう警官たちにメールで働きかけた。警察の必要性を市当局にアピールするため、あえて逮捕件数を減らし、病欠を増やすよう呼びかけているという。

(英語記事 Trump to send 'surge' of hundred of federal agents to cities

提供元:https://www.bbc.com/japanese/53509047

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