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2020年7月31日

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ドナルド・トランプ米大統領は30日、新型コロナウイルス対策のため11月の米大統領選を延期したらどうかとツイートした。これを受け、与党・共和党の幹部が相次ぎ、大統領にその権限はないとくぎを刺した。

トランプ氏はツイッターで、「普通郵便投票(不在者投票ならいいのだがそうではなく)にすれば2020は史上最も不正確不正だらけの選挙になる。アメリカは大恥をかくことになる。誰もが適切に、確実に、安全に投票できるようになるまで選挙を延期しよう???」と書いた(訳注:太文字部分は原文では大文字で強調)。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1288818160389558273


これを受けて、共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務とケヴィン・マカーシー下院院内総務は共に、選挙の延期はあり得ないと否定した。

アメリカでは合衆国憲法と連邦法に基づき、大統領に選挙を延期する権限はない。選挙の日程変更は連邦議会が承認しなくてはならない。

大統領選の投票日は11月3日の予定。複数の州政府は、感染対策として郵便投票の簡易化を模索している。

これについてトランプ氏は以前から、郵便投票を認めれば、不正投票や不正確な開票につながると主張していた。

トランプ氏のツイートに先立ち、アメリカの4~6月期の実質国内総生産(GDP)が前期比32.9%減(年率換算)と、四半期の統計を取り始めた1947年以降、最悪の水準になったことが発表されている。

共和党の反応は

マコネル上院院内総務は、米大統領選の実施が延期されたことは一度もないと述べた。

地元ケンタッキー州のラジオ局に対し、「この国の歴史を通じて、戦争や大恐慌は南北戦争を問わず、連邦政府が決めた選挙を日程どおりに実施しなかったことは一度もない。この11月3日にも、同じように実施する方法を見つける」と話した。

マカーシー下院院内総務も、「連邦政府の選挙の歴史では、選挙を行わなかったことなど一度もない。(秋の)選挙は予定通り実施すべきだ」と述べた。

トランプ氏と親しい共和党幹部のリンジー・グレアム上院議員も、選挙延期は「良案ではない」と述べた。

一方で、マイク・ポンペオ国務長官は記者団に、選挙延期の権限が大統領にあるのかと質問されると、「その場の勢いで法律判断を口にする」ようなまねはしないと答えた。

トランプ氏の再選選挙対策委員会のホーガン・ギドリー広報担当は、トランプ氏は単に「問題提起」しただけだと述べた。

延期したいわけじゃない」

30日午後にホワイトハウスで記者会見したトランプ氏は、「選挙を延期したいわけじゃない。選挙はやりたい。でも3カ月後になって、投票用紙がごっそりなくなっていて、選挙は無意味だったと後から知るのはごめんだ」と述べた。

「不正選挙を見たくないだけだ」とトランプ氏は続け、郵便投票が認められれば「史上最悪に仕組まれた選挙になってしまう」と話した。

トランプ氏はこれに先立ち複数のツイートで、大規模な郵便投票の実施に激しく反対。根拠を提示しないまま、郵便投票にすれば外国の介入を受けやすくなると主張した。

今年6月にニューヨーク州は民主党予備選において郵便での投票を認めた。しかし、開票作業に時間がかかり、結果はまだ判明していない。

米メディアによると、大統領選で郵便投票を認めれば、記載に不備があったり、投票受付期間中に発送されたと示す消印がなかったりなどの理由で、無効票が多数出るのではないかと懸念されている。

しかし、複数の州では以前から郵便投票が実施されている。約半数の州が、有権者登録している人が事前に申請すれば、郵便による投票を認めている。

11月の大統領選と連邦議会選について、郵便投票に限定することをカリフォルニア、ユタ、ハワイ、コロラド、オレゴン、ワシントンの6州が検討している。郵便投票の実施を求める運動によると、ほかにも検討する州が増えている。

その場合、各州政府は有権者登録している市民全員に投票用紙を郵送する。有権者は用紙を郵便で送り返すか、投票日当日に投票所に届ける。従来どおりの投票も特定の状況では認められる。

投票日変更の権限は誰に

連邦法に基づき、連邦議会の選挙は11月の第1月曜の次の火曜日を投票日にすると決まっている。

これを変更するには、連邦議会の上下両院の承認が必要になる。連邦下院は現在、野党・民主党が多数を占めており、一部の民主党議員はすでに、そのような投票日延期案には反対すると表明している。

また、合衆国憲法の第2章第1条第4項には「連邦議会は、選挙人を選任する時および選挙人が投票を行う日を定めることができる。投票日は合衆国全土を通じて同一の日でなければならない」と定めてある。また、同章第1条第1項は「大統領の任期は4 年」と定めている。このため、連邦議会が大統領選を2021年まで延期するには、憲法改正が必要だという専門家の意見もある。


<解説> アンソニー・ザーカー北米担当記者

トランプ氏はあらゆる手を使って、11月の選挙の信用性を損なおうとしているように見える。11月には感染対策として記録的な数のアメリカ人が、郵便投票に頼ることになると予想されている。

こうした状況でトランプ氏は繰り返し、郵便投票の信用性を疑わせようと、事実と異なり誤解を生じさせる発言をしている。漠然とした陰謀論にも言及している。

トランプ氏の一連の言動は、11月の選挙結果を争うための下地作りだと言う人もいるが、いざ負けたときのスケープゴート探しだけが目的かもしれない。

あるいは、選挙延期を提案したこの日のツイートは、経済の第2四半期について発表されたばかりの本当に惨たんたる数字から、世間の目をそらすことが目的だったのかもしれない。トランプ氏は、再選運動を盛り上げるため経済の挽回を頼みの綱にしてきた。しかし、先行きの展望は非常に暗い。

理由はなんにせよ、選挙の延期をツイートするなど、勝利を確信している候補のやることではない。これを先駆けに、さらに必死な動きが今後も続くのかもしれない。

(英語記事 Republicans to Trump: You can't delay 2020 election

提供元:https://www.bbc.com/japanese/53604376

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