WEDGE REPORT

2020年10月8日

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ナムラタ・ゴスワミ

独立シニアアナリスト・インド防衛研究分析センター元研究員

ジャワハルラール・ネルー大学で博士号取得。オスロ国際平和研究所(PRIO)、メルボルンのラ・トローブ大学での客員フェロー、ワシントンDCの米国平和研究所でのシニア・フェローを歴任。専門は宇宙政策、大国間競争。

 中国は、過去数十年にわたり宇宙産業力を着実に構築してきた。それにより現在目指しているのが、火星探査(2020年)、月のサンプルリターンミッション(20年)、恒久的な宇宙ステーション(22年)、小惑星資源採掘(34年)、宇宙太陽光発電衛星(35年)、月面基地(36年)、原子力宇宙船(40年)など、宇宙分野での長期的目標の達成である。

今年6月、四川省の発射センターから、中国版GPS「北斗」を構成する最後の衛星が打ち上げられた (AFP/AFLO)

 中国には建国100周年にあたる2049年までに中国主導の国際秩序を形成するという野望があり、そのために宇宙能力を活用するという理想がある。習近平国家主席にとって「航空宇宙の精神」とは、1940年代の毛沢東の長征精神に値するものであり、2017年には中華民族の偉大なる復興という夢(「チャイナ・ドリーム」)を憲法に刻み込み、任期を撤廃し終身の国家主席となった。習主席は、中国共産党が管理し、自身が指揮を執る宇宙分野での長期的目標に尽力できるようになったといえる。

 中国の宇宙戦略は、まず恒久的な宇宙ステーション(「天宮」)を建設することで低軌道上に宇宙プレゼンスを示す能力を確立し、その後、地球月圏(地球と月の間の宇宙空間)の宇宙能力、特にラグランジュ点(編集部注・地球と月の重力均衡によって衛星を安定的に軌道投入できる位置。この確保が軍事的優位につながる)におけるプレゼンスを確立するというものである。

 中国は、低軌道や静止軌道よりも先にある月の軌道やさらにその先の軌道における情報を支配(独占)することを目指している。

 戦略的に非常に重要となるのが、ラグランジュ点L1、L2、L4、L5である。中国の最新鋭衛星の一つ、「鵲橋」はL2ハロー軌道(編集部注・ラグランジュ点付近を周期的に周回する軌道)に位置し、「嫦娥4号」(編集部注・世界で初めて月の裏側に着陸した中国の探査機)と地球上の中国の受信基地との間で中継衛星として機能している。

独占狙う将来のエネルギー源
「宇宙太陽光発電技術」

 中国の狙いは、35年までに宇宙太陽光発電衛星(SBSP)を建設し、月面活動への電力供給源とし、また無線伝送で電力を地球へ送り返すことだ。SBSPのような技術がもたらす長期的影響については、中国初のロケット「長征1号」の主任設計者、王希季氏は次のように述べている。

 「化石燃料で人類の発展を持続できなくなれば、世界は混乱に陥るだろう。そうなる前に、われわれは宇宙太陽光発電技術を実現しておく必要がある。この技術開発を最初に成功させれば、誰であれ、将来のエネルギー市場を独占できるだろう。そのため、非常に戦略的意義が大きいのだ」

 また、同氏は、中国がSBSP計画に早急に着手しなければ、米国や日本といった他国が先行し、宇宙における戦略的に重要な拠点を独占するだろうとも指摘している。

 19年、中国西南部にある軍民融合のための共同イノベーション研究所(CCIRICMI)の指揮の下、中国は重慶市内にSBSPの開発拠点を確立した。この施設で試験が行われている主要な技術は、電力のマイクロ波伝送と宇宙空間でのSBSP衛星製造である。

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