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2020年9月16日

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毒物を盛られて重篤な状態となり、ドイツの病院で治療を受けて容体が回復し始めたロシアの野党指導者アレクサンドル・ナワリヌイ氏(44)が15日、入院中の写真を公開した。同氏の広報担当者は、本人にロシアへ帰国する意思があるとしている。

ナワリヌイ氏はこの日、自身のインスタグラムに体調悪化後初めて写真を投稿し、人工呼吸器なしに呼吸できたことを明かした。

「こんにちは、ナワリヌイです。きみたちに会えなくてさみしい。自分でできることはまだそれほど多くないけど、昨日は丸一日、自力で呼吸することができた」、「自分の力だけで、他の助けなしにね。喉に人工呼吸器のバルブもなかった。すごくうれしかった。大勢が過小評価しているが、これは目覚しい進歩だ」とナワリヌイ氏は書いた。

それから程なくして、ナワリヌイ氏の広報担当キラ・ヤルミシュ氏が本人に帰国の意思があると述べた。

ヤルミシュ氏は、ジャーナリストたちから「アレクセイがロシアに戻ろうとしているのは本当なのか」と尋ねられたとツイッターに書いた。

「みなさんに繰り返しお伝えする。帰国以外の選択肢は検討されなかった」

病院を警察が警備

現地で取材するBBCロシア語サービスのベン・タヴナーによると、ナワリヌイ氏が治療を受けている病院の外では警察が適度の警備にあたっている。入り口には武装警官が2人おり、病院外には警察のバン1台が何日も駐車された状態という。

真偽不明のドイツメディア報道によると、さらに2つの武装警官隊が病棟内外やナワリヌイ氏のベッドわきに配置されたという。

こうしたなかロシア政府は、ナワリヌイ氏が回復した後にプーチン大統領と面会する可能性を排除した。

「我々はそのような会談の必要性は感じていない。そのような会談が行われることはないと私は考えている」と、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官が述べたとインタファクス通信が報じた。

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ナワリヌイ氏は8月20日、ロシア・シベリア地方を飛び立った旅客機内で体調が悪化。その後の検査で、神経剤ノビチョクが使われたとの結果が出ている。

当初はロシアの病院に運び込まれたが、ドイツのシャリテ病院に移送された。

同氏の支持者らは、ウラジーミル・プーチン大統領の指示で毒が盛られたと主張している。一方、ロシア政府は関与を否定している。

事件の背景

ナワリヌイ氏は政府の汚職を追及し、反プーチン政権派で極めて目立った存在だった。

神経剤ノビチョクは、元ロシア情報員セルゲイ・スクリパリ氏とその娘が、2018年にイギリス・ソールズベリーで襲われた事件で使われた。スクリパリ親子は助かったが、イギリス人女性が後に病院で死亡した。

英政府は、ロシア軍情報当局が親子を襲撃したと非難。20カ国がロシアの外交官とスパイを計100人以上追放した。ロシア政府は関与を否定した。


<解説>攻撃はロシア政府にとって最善の防御策――セルゲイ・ゴリャシュコ、BBCロシア語

ロシア政府がナワリヌイ氏の毒物事件とは何ら関係がないと固く主張し、ペスコフ大統領報道官がプーチン氏を最も厳しく批判するナワリヌイ氏との会談の可能性を排除したことは、なんら不思議なことではない。

実際、プーチン氏がナワリヌイ氏を名前で呼んだことは1度もなく、ナワリヌイ氏を無名で取るに足らない人物であるように見せようとしている。ロシア政府はナワリヌイ氏を全く気にかけていないと、国内外に思い込ませるのが目的だ。しかし、現実とは明らかに食い違っている。

ロシア政府のナワリヌイ氏の毒物事件に対する反応は、攻撃が最善の防衛策だという同国の有名な政策に基づいたものだ。

ロシアはナワリヌイ氏の殺害を企てたとの疑惑を一蹴しただけでなく、毒を盛った事実は一切なく、ナワリヌイ氏が単に体調を崩しただけだと主張している。

そして今では、同国の対外情報庁のセルゲイ・ナルイシキン長官が、ナワリヌイ氏に対してノビチョクを使用したのはドイツだとして、同国を批判する寸前の状態となっている。

ナルイシキン氏は、ナワリヌイ氏がロシアから移送される際、体内からは毒物の痕跡は見つからなかったと主張。また、ロシアは備蓄していたノビチョクを全て廃棄していたとし、ドイツに対して疑いの目を向けている。


(英語記事 Poisoned Navalny 'will return to Russia'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/54172251

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