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2020年9月17日

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配車サービスの米ウーバーテクノロジーズの自動運転車が2018年にアリゾナ州で起こした歩行者の死亡事故をめぐり、車内にいたセーフティードライバーが過失致死罪で訴追された。検察当局が15日に明らかにした。

ウーバーは2018年3月、アリゾナ州テンピで自動運転車の試験走行中、自転車を押して道路を横断していたイレイン・ハーツバーグさん(49)をはねて死亡させた。

捜査当局によると、自動運転車に乗っていたセーフティードライバーのラファエル・ヴァスケス被告は事故当時、テレビ番組「The Voice」を視聴していたという。

ヴァスケス被告は8月27日に訴追され、9月15日に裁判所に初出廷した。来年2月に公判が始まる予定。

ヴァスケス被告は無罪を主張している。現在は保釈されている。

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この事故をめぐっては昨年、検察がウーバーに対し、「刑事責任を認める根拠はない」との判断を出している。

自動運転車が関係する交通事故はこれまでもあったものの、歩行者が犠牲になった事故は今回が初めて。ウーバーは事故を受け、アリゾナ州での試験走行を終了することとなった。

事故原因の大部分は人為的ミス

警察と米国家運輸安全委員会(NTSB)による長期にわたる調査の結果、この事故の原因の大部分は人為的ミスによるものだったことが判明した。

ヴァスケス被告は当時、運転席に座っており、緊急時に車両を制御できる状況だった。

警察が公開したダッシュボードに取り付けられたカメラでは、ヴァスケス被告が時速63キロで走行する自動運転車内で、衝突の直前の数秒間、下を向いているのが確認できる。

警察によると、ヴァスケス被告の免許証にはファーストネームがラファエル(Rafael)と記載されているが、同氏はラファエラ(Rafaela)と名乗っており、女性だとしているという。

「完全に回避可能だった」

動画配信サービスHulu側にも、ヴァスケス被告が事故当時、テレビ番組をストリーミングしていた記録が残っているとみられる。

2018年6月の警察の報告書は、ヴァスケス被告が前方を見ていれば、この致命的な衝突は「完全に回避できた」とした。

NTSBはこうした中、ヴァスケス被告が「走行中ずっと自分の携帯電話に気をとられて」周囲の状況を注視していなかったことと、自動運転システムが事故の原因だと認定した。

NTSBのブルース・ランズバーグ副委員長は報告書の中で、「セーフティードライバーは走行時間の34%を携帯電話でのテレビ番組視聴にあてていた」とした。

ウーバー側の責任は

ウーバーに対しては刑事訴追はしないとの判断が出ているものの、同社には批判の声が上がっている。

NTSBの報告書は、同社の「不十分な安全リスク評価手順」と「車両制御者による効果的な監視が不十分」だったことが事故の一因だとしている。また、同社には「不十分な安全文化」が存在すると非難した。

NTSBは事故を起こした車両の自動運転システムについて、ハーツバーグさんと自転車を差し迫った衝突の危険性として認識できていなかったとした。

事故の数日前には、ある従業員が上司に対し、同車両は安全ではなく、日常的に事故を起こしているとして、車両制御者の訓練について懸念を示していた。

事故を受け、アリゾナ州当局はウーバーの自動運転車の公道での試験走行を停止。同社はアリゾナ州内での試験を終了した。

ウーバーは今年2月、カリフォルニア州内での試験走行実施の許可を取得していた。

開発に慎重な企業

自動運転車の試験に慎重になっているのはウーバーだけではない。グーグルの自動運転開発会社ウェイモ(Waymo)などのライバル企業も同様だ。

そして中国の百度(バイドゥ)が、規制をめぐる混乱もあり、自動運転タクシーの本格展開を2025年まで延期したと報じられている。

BBCのテクノロジー担当ローリー・ケスラン=ジョーンズ編集委員は、「自動運転」車に人間のセーフティードライバーが同乗する必要がある限り、何か問題が起きれば責任の所在をめぐり混乱が生じるだろうと指摘。

完全な自動化はテクノロジー業界にとって大きな試みであり、最も勇敢なテクノロジー企業でさえ、最初に実用化することには非常に慎重になるだろうとした。

(英語記事 Self-driving car operator charged over fatal crash

提供元:https://www.bbc.com/japanese/54186400

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