BBC News

2020年9月21日

»著者プロフィール

フィンセン文書」調査報道チーム、BBCパノラマ

リークされた米財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN、フィンセン)の捜査資料から、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の幼なじみが、米政府の金融制裁を回避しマネーロンダリング(資金洗浄)を行うため、英バークレイズ銀行を通じて巨額資金を移動していたことがわかった。

「フィンセン文書」と呼ばれる2657件の文書を米バズフィードが入手、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に提供した。BBCの調査報道番組「パノラマ」が、各国の報道機関と提携して、漏洩(ろうえい)文書について報道を進めている。

この資料によると、バークレイズ銀行はロシアの億万長者、アルカディ・ローテンブルク氏について「不審行動報告書(SAR)」をFinCENに提出していた。米ドル建ての不審な取引については、アメリカ国外でのものでもFinCENへの報告が義務付けられている。

SARは違法行為の証拠ではなく、金融機関が不審と思う顧客の行動を金融当局に知らせるためのもの。

<関連記事>

ローテンブルク氏は子供の頃からプーチン氏と知り合いで、米財務省は同氏と弟のボリス氏を、「ロシア指導部の内輪の一員」と認定していた。兄弟は子供の頃からプーチン氏と同じ道場で柔道を学んでいた。

米政府と欧州連合(EU)は2014年、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、同氏に経済制裁を科していた。そのため欧米の金融機関はローテンブルク氏と取引すると、深刻な処罰を受ける恐れがある。

近年ではローテンブルク氏の様々な企業が、ロシア政府からの契約を受注し、道路や天然ガス・パイプライン、発電所などを建設している。

米財務省は、ローテンブルク兄弟が「プーチン肝いりの計画を支援」し、「プーチンからガスプロムやソチ冬季五輪などの事業を請け負い、数十億ドルの利益を上げている」と指摘している。

アメリカ政府は2018年にはローテンブルク氏の息子イゴーリ氏も制裁対象にしている。

米政府は諸外国の個人に経済制裁を科すことで、その人物が欧米全体の金融システムを利用できないようにしている。

それでもローテンブルク一家は、イギリスやアメリカの金融機関を通じて巨額資金を移動してきたとみられる。

美術品と資金洗浄

バークレイズ銀行は2008年、「アドヴァンテージ・アライアンス」という企業の口座を開いた。

フィンセン文書によると、この会社は2012年から2016年の間に総額6000万ポンド(約80億円)を動かしている。多くの取引は、ローテンブルク兄弟が米政府に制裁されて以降に実行されている。

今年の7月には、米上院がローテンブルク兄弟について、制裁回避の手段として高額な美術品をひそかに購入していると糾弾した。この仕組みに関わっている会社のひとつが、アドヴァンテージ・アライアンスだった。

その上で上院国土安全保障・政府問題委員会は、アドヴァンテージ・アライアンス社のオーナーはアルカディ氏だと示す強力な証拠があり、同社がロンドンで開いたバークレイズ銀行の口座を経由して、数百万ドル分の美術品を購入したと結論している。

同委員会常設調査小委員会の調査報告書は、「秘密主義、匿名性、規制の欠落が、資金洗浄と制裁回避を十分に可能にする環境を作り出した」と指摘している。また、アメリカはイギリスのオークション各社が、美術品バイヤーの身元について「基本的な質問事項」さえ確認していなかったと批判した。

こうした環境で、米政府の経済制裁下にありながら、ローテンブルク氏はルネ・マグリット作の絵、「胸部」を750万ドル(約7億8000万円)で購入したとされる。

2014年7月17日には、ローテンブルク氏と関係のある会社がモスクワから、ロンドンのバークレイズ銀行にあるアドヴァンテージ・アライアンス社の口座に購入資金を送金。同銀行は翌日、その金額をニューヨークの売主に送っている。

口座閉鎖

バークレイズは2016年4月に、ローテンブルク兄弟と関係が疑われる複数の口座について、内部調査を開始した。

その6カ月後には、不審な資金の移動に使われているという懸念から、アドヴァンテージ・アライアンス社の口座を閉鎖した。

しかし、リークされたフィンセン文書に含まれるSARによると、ローテンブルク兄弟との関連が疑われる複数の同行口座が2017年まで開かれていた。

エアトン・デヴェロップメントという会社の口座もそのひとつだ。

フィンセン文書によると、バークレイズはこの会社も不審に思い、「エアトンの本当のオーナーはローテンブルクだ」と結論していた。

BBCパノラマはバークレイズ銀行に、ローテンブルク兄弟のものと疑われる口座がいくつあったのか質問したものの、これについての回答はなかった。

同銀行の広報担当は、「米政府の制裁に関するものを含み、当行はあらゆる法律上および規制上の義務に順守してきた」とコメントしている。

「SARの提出そのものは実際の違法行為の証拠ではない。金融犯罪の疑いと、無実の顧客が銀行を使えなくしてしまうリスクのバランスを踏まえ、当行は、証拠を慎重かつ客観的に分析した上でなければ、顧客との取引を停止しない」

ローテンブルク兄弟はBBCの取材への回答を拒否した。

フィンセン文書は、犯罪者が汚れた資金をどのように世界中で動かし、それを大銀行がどのように容認してきたか明らかにする、秘密文書。世界の金融システムでイギリスが弱点になりがちな様子や、ロシア資金がロンドンにあふれている様子も、流出した文書からうかがえる。

最初に同文書を入手した米バズフィード・ニュースが、ICIJに提供した後、世界中の記者400人が内容を精査してきた。BBCでは調査報道番組「パノラマ」の取材チームが、調査に参加してきた。


提供元:https://www.bbc.com/japanese/54231161

関連記事

新着記事

»もっと見る