WEDGE REPORT

2020年10月9日

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ピーター・マーケズ

米国国家宇宙会議上級顧問

米国防省勤務時代、空軍および国防長官府の様々な宇宙関連事業や機密事業に携わる。その後3政権にわたりホワイトハウスに勤務し、ブッシュ政権、オバマ政権では宇宙政策担当部長。日本宇宙安全保障研究所では現在理事を務める
 

 例えば、日本の新幹線の大きな特徴である正確な運行、スピード、安全性は、日本と日本国民に目に見える形で恩恵をもたらしている。新幹線以外で、われわれの生活の中において時間と資源を節約してくれるあらゆるものを考えてみてほしい。すると、それらの多くは、頭上ほんの数百キロメートルの軌道を時速1万1000~2万8000キロメートルで周回する衛星のおかげだと気付く。航法衛星は、目的地までの正確なルートを示し、時間と燃料を節約してくれる。

アルテミス計画において宇宙飛行士を月に送り込む宇宙船「オリオン」の紹介イベント (ZUMA PRESS/AFLO)

 気象衛星により、農家や漁業従事者は収穫や漁獲を増やし、コストを削減できる。通信衛星のおかげで、地球上のどこにいてもリアルタイムでビジネスが可能だ。あらゆる電子決済やクレジットカード決済、あるいは携帯電話での支払い時に記録されるタイミング信号でさえも、衛星から送られている。

 現代社会の生活を支える裏方として、衛星は密(ひそ)かに機能している。衛星によって生み出される資源、また節減できる時間とお金、救える命は計り知れない。

 衛星の存在が生活にどのように直接影響しているかも、目には見えないかもしれない。しかし、知識の増強、経済発展、安全保障、そして生活の質の向上のためには、国家の宇宙計画は必要な要素である。

 数十年にわたり、日本、米国、その他多くの国は、宇宙の可能性と価値を認識してきた。その恩恵を得るために、米国と旧ソビエト連邦は1960年代、宇宙開発競争を繰り広げた。日本は69年、技術面での理解を増進し、強固な民間宇宙産業を生み出そうと、独自の宇宙開発計画に着手した。日本と米国の宇宙開発計画はともに、大きな力、資源、経済成長、技術進歩、安全保障へとつながっていった。

湾岸戦争での米国の宇宙利用を
注視・研究した中国

 91年、そのような宇宙がもたらす決定的な力を、ある国が目の当たりにする。

 米国とその同盟国は、イラクの侵攻からクウェートを解放するため、日本から多額の財政支援を受け、湾岸戦争を戦った。この戦争において、目印のない砂漠地帯で戦車を迅速かつ的確に操作し、幅広い兵器を正確に狙うため、米国はGPSを活用した。

 地球観測衛星により、米軍高官は、爆撃作戦が成功したかどうかをほぼリアルタイムで知ることができた。通信衛星によって、現地の司令官は常時、迅速に連絡がとれるようになった。この戦争は短期間で決着がつき、クウェートの主権が回復された。

 その姿を注視し研究していたのが、中国である。

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