2023年2月7日(火)

WEDGE REPORT

2020年10月9日

»著者プロフィール
著者
閉じる

ピーター・マーケズ

米国国家宇宙会議上級顧問

米国防省勤務時代、空軍および国防長官府の様々な宇宙関連事業や機密事業に携わる。その後3政権にわたりホワイトハウスに勤務し、ブッシュ政権、オバマ政権では宇宙政策担当部長。日本宇宙安全保障研究所では現在理事を務める
 

 日本、米国、欧州が現在協力して取り組んでいるのが、人類を再び月へ送ろうという「アルテミス」計画である。この計画において、日本人宇宙飛行士が初めて月面に降り立つ可能性がある。この協力において、日本は欠かせない重要なパートナーである。

(出所)NASA、内閣府、文部科学省資料などを基にウェッジ作成 写真を拡大

 例えば、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、ISS向けに開発した構想とテクノロジーを発展させ、月周回軌道上の有人拠点の使用を検討している。また、JAXAは、月面走行を可能にする有人与圧ローバーの実現に向けて、既に研究開発に着手しており、実現すれば月に関する探査、科学および技術進歩の規模と範囲を大いに拡大できる。

 日本や諸外国が「アルテミス」計画での月への旅に、米国と協力して参加するための法的手段が「アルテミス協定」である。

 この共同プロジェクトの内容や詳細を記すことに加え、アルテミス協定の各取り決めは、各国が月へ向かうための原則やベストプラクティスを示すものである。

 アルテミス協定に署名することで、各国は平和裏の宇宙空間での活動、行動の透明性確保、協力拡大のための相互運用可能な能力の開発、宇宙飛行士遭難の際の救助の負担軽減、そして科学的データの一般公開に同意したことになる。

何としても守るべき
安全な宇宙環境

 日本、米国とその同盟国はともに、安全な宇宙環境を構築し、すべての人のために宇宙の有用性の拡大に尽力している。いつか中国が実質的な議論に加わり、こうした原則を実行に移すことを望んでやまない。

 中国が敵対的行動をやめ、宇宙兵器を放棄することは、日本や米国をはじめ、あらゆる国にとって利益となる。宇宙空間における紛争は誰の得にもならない。求められているのは平和なのだ。

 平和が確保されるまでは、日本と米国は慎重な姿勢を維持するとともに、国民の保護、同盟国との協力、地球上のすべての人の生活の質の向上、および強固な宇宙協力を通じた敵対行動の抑止のために必要な措置をとる。中国も宇宙協力の恩恵を受けられるよう、いつの日かこうした協力に参加してほしい。

 日々、宇宙が役に立っているあらゆる面について、日本人宇宙飛行士が宇宙へと飛び立つ、もしくは日本製ロボットが小惑星に着陸し物質サンプルを地球へと持ち帰り、新たな知識をもたらすといったことを想像してみよう。どんなインスピレーションを受け、どういった誇りを感じるだろうか。たとえどんな小さなことでも、宇宙におけるあらゆる行動が重要である。

 宇宙から私たちが得られる利益は、とてつもなく大きい。日本と米国は、時速数千キロメートルで、非常に長い旅路を共に進んでいる。この旅で共に踏み出す一歩一歩が、地球全体の知識の強化、生活の質の向上、経済発展、すべての人への安心と安全保障の供与につながっている。

 つまり、これは何としても守るべき旅なのだ。

Wedge9月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
宇宙が戦場になる日
PART 01         月は尖閣、火星はスカボロー礁  国際宇宙秩序狙う中国の野望
PART 02         遠のく米中の背中  ロシアの生き残り戦略   
CHRONOLOGY  新たな文明を切り拓くカギ  各国の宇宙開発競争の歴史と未来  
PART 03         盛り上がる宇宙ビジネス  日本企業はチャンスをつかめ    
COLUMN         地上と同様、宇宙空間でも衛星を狙うサイバー攻撃
INTERVIEW      「宇宙」を知ることで「地球」を知る   山崎直子(宇宙飛行士) 
PART 04         守るべき宇宙の平和  日本と米国はもっと協力できる 

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2020年9月号より

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


新着記事

»もっと見る