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2020年10月31日

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ジョナサン・エイモス、BBC科学担当編集委員

中国の積極的な植林政策が気候変動の抑制に大きな役割を果たしていることが、最新の研究で明らかになった。

学術誌「ネイチャー」に発表されたこの研究では、地表と人工衛星写真から中国の森林地帯を観察。その結果、2地域で森林の二酸化炭素(CO2)吸収量が過小評価されていたことが判明した。

実際には、この2地域だけで中国の領土が吸収するCO2の35%超を占めているという。

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森林など、CO2の吸収量が排出量を上回る場所は「カーボン・シンク」と呼ばれ、大気中のCO2を減らす役割を果たしている。

中国は世界で最もCO2排出量が高く、人類が排出するCO2の28%を占めている。

しかし中国政府は2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、2060年までにCO2排出量と除去量を差し引きゼロにする「カーボン・ニュートラル(炭素中立)を目指すと表明した。

中国がどのようにこの目標を達成するかは不透明だが、化石燃料の使用を大きく減らすだけでなく、CO2そのものを大気中から減らす方法も間違いなく必要になることは

研究に参加した中国科学院・大気物理研究所(IAP)の劉毅教授は、「習近平国家主席が発表した、2060年までにカーボン・ニュートラルを達成する計画では、エネルギー生産の大変革と、カーボンシンクとなる土地の持続的拡大が必要になる」と説明した。

「今回の研究が提示する植林活動が、この目標達成に一役買うことになる」

中国では近年、明らかに緑化が進んでいる。砂漠化や土壌流出を防ぐため、そして力強い材木・製紙産業のために、ここ数十年で何十億本もの木が植えられた。

今回の研究では、植林された土地によるCO2吸収量を測定した。

分析には、植林の記録や、人工衛星による緑化測定、土壌に含まれる水分の測定値、そして宇宙と地球上で測定したCO2の観測値などが使われた。

研究を主導したIAPの王晶氏は、「中国は世界有数のCO2排出国だが、国内の森林によるCO2吸収量は非常に不透明だ」と述べた。

「中国気象局のCO2データを使うことで、中国の森林がどこでどれだけのCO2を吸収しているか、数量化できるようになった」という。

中国のカーボンシンクのうち、南西部の雲南省と貴州省、広西チワン族自治区にまたがる森林と、北東部の黒竜江省と吉林省にある森林は、これまでその能力を評価されていなかった。

南西部の森林は中国で最も大きなカーボンシンクで、年間0.35ペタグラムのCO2を吸収。同国のカーボンシンクの31.5%を占めている。1ペタグラムは10億トンに当たる。

北東部の森林は季節性で、樹木が成長する時期にCO2を吸収し、その他の季節はCO2を排出するという。この地域は年間0.05ペタグラムのCO2を吸収し、中国のカーボンシンクの4.5%を構成する。

一方で今回の研究では、中国は2017年に2.67ペタグラムのCO2を排出していると計算している。

共同著者の英エディンバラ大学のポール・パーマー教授は、中国のカーボンシンクの規模に驚く人もいるだろうが、宇宙と現場の両方の測定が一致しているので、分析結果に自信が持てると説明した。

「大胆な科学的報告には、大量の証拠の裏付けが必要だ。それを今回の研究で実現した」

「地上と人工衛星、双方でさまざまな証拠を集め、中国のカーボン・サイクルについて一貫性のある頑健な論を構築することができた」

地球の炭素量を研究している英シェフィールド大学のショーン・ケーガン教授はこの研究について、特に南西部のカーボンシンクの規模に驚いたと語った。ケーガン教授は今回の研究には関わっていない。

ケーガン教授は、森林のCO2吸収能力は、森林の成長率が低下し、その生態系が安定するにつれて下がるものだと指摘した。

「地上の限られたデータに基づく炭素変化の推定値について、宇宙で観測する複数のデータをもとに、その信頼性を高めることができることが、この研究ではっきりした」

「パリ協定による各国の公約達成に向けた施策を支援するため、新世代の宇宙センサーの活用が有効だと分かった」

ケーガン教授は欧州で計画されている、軌道上から森林を測定するレーダーを搭載した宇宙船「バイオマス」計画を主導している。バイオマスは、CO2が木の幹や土など、森林のどの部分に蓄積されているかを判定できるという。

気候変動とエネルギー問題を対象とする非営利シンクタンク「エネルギー・気候知能ユニット(ECIU)」のディレクター、リチャード・ブラック氏は、「中国がネットゼロに向けた意志を表明した中、国内のカーボンシンクの規模を知っておくのは当然重要なことだ。今回の研究はその意味で重要だ」と述べた。

「しかし、森林のカーボンシンク効果は予想以上に大きかったものの、これをネットゼロへの『フリーパス』と勘違いしてはいけない。第一に炭素吸収量は、CO2だけでなく排出される全ての温室効果ガスと相殺されなくてはならない。さらに、中国の森林がもたらす炭素バランスは、カリフォルニアやオーストラリア、ロシアで起きている気候変動の影響で打ち消されてしまうかもしれない」

(英語記事 China trees absorbing more CO2 than first thought

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-54728464

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