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2020年11月1日

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イギリスのボリス・ジョンソン首相は10月31日、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、イングランドで11月5日から12月2日までの4週間、2度目のロックダウンを開始すると発表した。国民保健サービス(NHS)のために「医療や道徳の大惨事」を回避するためという。

バーやレストラン、ジム、社会生活の維持に必要不可欠ではない店舗は5日から閉鎖される。一方で今春に導入した制限措置とは異なり、学校や大学などは閉鎖されない。

2度目のロックダウンは12月3日から緩和され、地域ごとに警戒レベル(ティア)を設定する現行システムに戻るという。

これはイギリス国内のイングランドを対象にしたもので、ウェールズやスコットランド、北アイルランドではそれぞれの自治政府が独自に行動制限を実施している。

ジョンソン首相は、「今年のクリスマスは例年とは様子が違うものになる。かなり様変わりするかもしれない。けれども現時点で厳しい行動をとることで国中の家族が再会できるよう、私は心から願っている」と述べた。

ジョンソン氏は2度目のロックダウンが企業や店舗に与える影響について「本当に、本当に申し訳ない」としつつ、従業員の給与の8割を補填する一時帰休制度を11月いっぱいまで延長する方針だと述べた。

また、感染者数が「1日あたり数千人」に達し、4月にこの国が直面した時よりもひどい「死亡率のピーク」に見舞われる可能性を示すデータを、「責任ある首相なら誰も」無視できないと述べた。

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イギリスの10月31日の新規感染者数は2万1915人で、累計感染者数は101万1660人となった。感染者数が100万人を突破したのは、アメリカ、インド、ブラジル、ロシア、フランス、スペイン、アルゼンチン、コロンビアに続いて9カ国目。

また、326人がウイルス検査で陽性と判定されてから28日以内に死亡した。

「患者の選別を強いられることに」

ジョンソン氏は感染者数が最も少ない地域の1つ、イングランド南東部でさえ、病院は今後数週間で収容能力を超えるとした。

「医師や看護師は、誰を治療するのか、患者を選別しなくてはならなくなる。誰が酸素供給を受けて、誰が受けないのか。誰が生きて、誰が死ぬのか」


新たな制限措置の内容は次の通り――。

  • 在宅で勤務や勉強ができないなど特定の理由がない限り、市民は自宅待機を求められる
  • 運動や治療、食料や必需品の購入、弱者の世話やボランティア活動のための外出は認められる
  • 屋内や、私有の庭での集会は許可されない
  • 別の世帯の1人との公共の場での面会は可能
  • 全国のパブ、バー、レストラン、必要不可欠ではない小売店は閉鎖される。持ち帰りでの商品購入や、オンラインで発注して店舗などで受け取るサービスは継続できる
  • ジムなどのレジャー・娯楽施設も閉鎖される
  • 建設現場や製造現場の作業は継続される
  • 自宅と別の1世帯で作る「サポート・バブル(支援の安全圏)」は認められる
  • 両親が別居している場合、子どもたちはそれぞれの家を行き来できる
  • 臨床的に影響を受けやすい人々は「特に注意」が必要だが、再隔離は求められない

2日にもジョンソン首相かマット・ハンコック保健相が、新規制について議会で説明するとみられる。

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、政府が「数週間前にすべきだった判断をやっと下した」とし、労働党として下院採決でロックダウンを支持する意向を示した。

スターマー氏は、政府の判断が遅れたため「ロックダウンは長期化するし、厳しくなる。それによる人的損失は、非常に生々しいものになるはずだ」と述べた。

ジョンソン氏はこれまで、イギリスの財政状況に「惨事」を招くことになるとして全国的な制限措置の導入を求める圧力に抵抗していた。その代わりに、イングランドで地域ごとに3段階の警戒レベル(ティア)を設置する制度を導入してきた。

今春のピークを上回る

英政府の医療責任者、イングランド主任医務官(CMO)のクリス・ウィッティー教授は記者会見で、10の病院で受け入れている新型ウイルス感染者の数が今春の感染のピーク時を上回っていると明かし、感染が「とてつもない速さ」で拡大していると付け加えた。

「今対応しなければ、NHSが12月に異常事態に陥る可能性はかなり非常に高い」

現在入院中のCOVID-19(新型ウイルスの感染症)患者は約1万1000人で、そのうち978人は人工呼吸器を装着している。

英政府の首席科学顧問を務めるサー・パトリック・ヴァランスは今冬の死者数のモデリング結果を公表し、「感染の第1派と比べて2倍かそれ以上になる」恐れがあるとした。


英政府のパンデミック・モデリング・グループ「SPI-M」の報告には、何も対策を講じなければ1日の死者数が4000人以上に達するとする予測が含まれていた。

ほとんどのモデルケースでは、1日の死者数は約2000人となっている。

学校閉鎖の有無

政府で新型ウイルス対策顧問を務めるニール・ファーガソン教授は、大学や学校を開いたままにするということは、今回は感染者数がさらにゆっくり減少していくことを意味すると述べた。今年3月の最初のロックダウン開始にあたっては、ファーガソン教授の数量モデルが極めて重要な役割を果たした

ファーガソン氏は新規制で20%~80%程度の感染を減らせるとし、「数日だけなら」クリスマスに大勢が集れるようになると期待していると付け加えた。

記者会見に先立ち、学校や大学の組合は2度目のロックダウン中は教育機関を閉鎖してオンライン授業に切り替えるよう求めた。

全国教育労働組合は教育現場が新型ウイルスの感染拡大の要因になった事実を無視するのは「自滅行為」だと主張。大学労働組合は、キャンパスでの対面授業継続にこだわることで「この国の健康と安全が危険にさらされている」とした。

大規模なウイルス検査実施を

英産業連盟(CBI)のキャロライン・フェアバーン事務局長は、2度目のロックダウン導入の発表はビジネス界にとっての「荒涼とした寒い冬」の幕開けとなったとした。同氏は一時帰休制度の延長を「重要なステップ」としつつ、来月を「国家非常事態に対応するため、大規模なウイルス検査を実施するための準備」期間に当てるよう政府に求めた。

ジョンソン首相は、検査用の綿棒を軍が配布するなど、今後数週間でウイルス検査の「大規模な拡張」を行うと述べた。

「女性の出産時にパートナーが立ち会えるようになったり、町全体さらには都市全体のウイルス検査が実施できるようになるなど、ますます多くの状況で」検査を活用できるようになるとした。

ウェールズとスコットランドの対応

こうした中、ウェールズ自治政府のマーク・ドレイクフォード首相は、17日間の「防火対策」を予定通り11月9日に終了すると発表した。1日に自治政府内で「英政府の発表を踏まえて、イングランドとの境界線問題について話し合う」という。

スコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は、必要不可欠な場合を除き、スコットランド・イングランド間を行き来しないよう呼びかけている。2日からは全国規模で5段階の制限システムが導入される。

(英語記事 PM announces four-week England lockdown

提供元:https://www.bbc.com/japanese/54766396

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