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2020年11月17日

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アブデュジャリ・アブデュラスロフ、BBCニュース

ベラルーシでアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の再選に抗議するデモが始まって、100日がたった。警察の残忍な対応にもかかわらず、デモ参加者たちは抗議の姿勢を保ち続けている。

ヘルメットと防護服を着けた警官らが、花や風船を手にした女性たちを警察車両へと押し込む。警官隊は、年金生活者の行進に参加した高齢者たちに向け、催涙ガスを噴き付ける。目だし帽をかぶった男たちが、広場で人気アニメーションの歌を歌っていた音楽家らを追い回す。

それでも、ベラルーシの首都ミンスクの通りには、日曜日ごとに何千人もが押し寄せる。そして、8月9日にあった大統領選ではルカシェンコ氏が不正に勝利したと、非難の声を上げる。

欧米各国の政府も、広く報じられている大統領選の不正と、ルカシェンコ氏の暴力的な弾圧を批判している。

「第2次大戦のよう」

IT産業で働くアレシャさん(31)は、日曜の集会に毎回参加している。しかし今月15日、事態はあっという間にひどいものになった。

彼女が行進の出発地点になっていた広場に着いた時、すでに治安部隊が埋め尽くしていた。人々がどんどん集まって来ると、警官らは音や光を発する手投げ弾を使い、警棒で殴って解散させた。

「警官らは繰り返し襲って来ました。恐ろしい状況でした。警官らは猛烈に人々を殴りつけ、腕をねじりあげ、どこかに連れて行きました」とアレシャさんは話した。

彼女は他のデモ参加者たちに続いて、中庭に逃げ込んだ。しかし、ミニヴァンに乗った警官たちにあっという間に追いつかれた。見知らぬ人が彼女と何人かを自宅にかくまってくれ、彼女は助かった。

「ユダヤ人をナチスからかくまった、第2次世界大戦のようだと感じました。恐ろしくて、ショックを受けました」

この日の行進は、拘束されて殴打され、先週病院で死亡した活動家ロマン・ボンダレンコさんを追悼するものだった。彼は、私服姿で記章を着けていない男たちに逮捕された。そうした男たちの集団は、警察がデモ参加者らの排除や拘束に乗り出す際に、警察とよく一緒に行動しているのが確認されている。

大統領選の後、ミンスクや他の都市で前例のないデモが発生した。ミンスクだけで10万人以上が通りを埋めた。

参加者たちは警察の暴力行為の廃止や、すべての政治犯の解放、透明で公正な選挙を求めた。

当初、人々の波は警官隊を通りから追いやった。しかし、数週間後には警官隊が戻り、再び恐怖をふりまいた。

アパートに突入

ミンスクの学生、ダイアナ・プチェリンコヴァさん(18)は最近の行進で、これまでの人生で最も恐ろしい体験をした。警察から逃げる時、他のデモ参加者たちとアパートに入り込んだ彼女は、誰かの部屋でかくまってもらうことを願った。女性がドアを開け、彼女たちを中に入れてくれた。

「私が最後でした」とダイアナさんは言った。「玄関で倒れてしまいました。警官隊に背中を警棒でたたかれたんです。みんなでドアを閉めようとしましたが、警官隊は押し入って来ました」。

警官隊は突入すると、室内にいた男性を捕らえ始めた。抵抗する人には警棒を振るった。女性たちは叫び声を上げながら両手を上げ、男性たちを連れて行かないよう警官隊に懇願した。

「本当に怖かった。警官隊は何人かの男子を連れて行きました。女性たちはそれ以外(の男性)を隠しました。1人はソファの後ろにいました。別の1人は食器棚で身を隠しました。バルコニーに出ていた人もいました」

お祭りムードが恐怖で一変

警官隊による暴力が続き、デモの規模は小さくなっていった。雰囲気も変化した。

「反対派の旗が減っています」と、ミンスクの起業家ウラジーミル(偽名)は話した。「お祭りの空気は消えました。抗議の行進に参加するたび、戻って来られるかどうかわからないのです。とても不安です」。

ウラジーミルは8月、警官隊にひどく殴られた。拘束され、悪名高いオクレスティナ刑務所に送られた。「私たちを殺そうと思っていると感じるくらい殴られました」。背中と脚を傷だらけにされて刑務所を出た彼は、よりいっそう抗議デモに参加する決意を固めたという。

「私たちがやめてしまったら、ここで暮らしていく可能性はありません」と彼は言う。「そうなれば、この国を後にするしかありません」。

この100日でベラルーシはすでに様変わりした。多くの人が、よりよい国にするために行動しなければならないと感じている。グロドノの鍵職人アンドレイ・ポゲリロさん(29)もそうした1人だ。

8月の大統領選まで、ポゲリロさんは政治に無関心だった。ミンスクで最初の衝突が発生した夜、彼はカフェにいた。

彼は、なぜ人々が集まっているのかを確認しようと外に出た。そのとき目にした光景が、彼の人生を変えた。

「完全に平和的でした。突然、残虐行為が始まったんです。警官が若い女の子を警棒で少なくとも3回たたくのを、この目で見ました。警官たちが1人の男を激しく殴ったり蹴ったりしていました。警察はあの日、人々を捕まえるのではなく、壊そうとしていました」

翌日、ポゲリロさんは抗議デモに参加。以来、毎回集会に足を運んでいる。

ベラルーシで26年間政権の座に就いているルカシェンコ大統領は、デモ参加者たちについて、外国勢力から金を受け取り、操られていると主張。アルコール依存症で麻薬中毒者だと呼んでいる。

主な反政府指導者らは刑務所に収監されているか、国外に逃げている。そのため、抗議デモを率いてはいない。

幅広いデモ参加者たち

デモ参加者には、学生、医師、年金生活者、障害のある人たちもいる。

有名スポーツ選手も、選挙のやり直しと警察による暴力の廃止を大っぴらに要求している。

俳優たちは劇場での開演前、抗議行動を象徴する歌を歌い、拘束された人たちとの連帯を示している。

活動家たちはショッピングセンターでフラッシュモブを仕掛けている。買い物客たちは通りでの即興のオペラに魅了され、足を止める。

こうした公共の場での行動は、抗議者たちを勇気付けるとともに、彼らの運動が破壊されていないことを示している。

当局は反政府のポスターを撤去するのに躍起だが、翌日には同じ場所にまた新しいものが貼られている。警官らは不器用そうにフェンスに上って旗を取り除き、活動家たちはその姿を撮影している。

最近、あるスローガンがあっという間に拡散された。「壁を塗り直すことはできるが、良心を塗り直すことはできない」というものだった。

目を引くのは、弾圧にもかかわらず、抗議者たちがほぼ平和的であり続けていることだ。殴打に対しては、次の集会に花を持って臨むという行動を取っている。

「オモン(機動隊)とその残虐さを目にすれば、ああはなりたくないと実感します」と、デモに参加して9日間収監された、芸術家のスヴィアトラナ・スタンケヴィッチさん(32)は話した。

「私は粘り強さ、不動の姿勢、自信によって力を示しています」

この100日間は、平和的な手法がいかに力強いかを表している。

それらの力はルカシェンコ氏を愛することにはつながらない。彼はこの闘いで劣勢となっている。

(英語記事 Belarus protesters battered, bruised but defiant

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-54971098

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