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2021年1月5日

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2020年の米大統領選についてドナルド・トランプ大統領が激戦州ジョージア州の高官に電話で、自分は同州で実際には大勝したのだと主張した内容は、「まったく間違っていた」と、同州のブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官は4日、米メディアに話した。

大統領選での敗北を認めていないトランプ大統領は2日、ラッフェンスパーガー州務長官(共和党)に対し、同州の選挙結果を覆すのに十分な数の票を「見つける」よう要求していた。米紙ワシントン・ポストが3日に2人の電話音声を公開した。同紙が3日に報じた電話音声では、トランプ氏がラッフェンスパーガー氏に対し、「1万1780票を見つけたいだけだ」と述べているのが確認できる。これに対し、ラッフェンスパーガー氏は同州の選挙結果に誤りはないと答えていた。

この電話についてラッフェンスパーガー氏は4日、米ABCニュースに対して、「ずっと話していたのは向こうで、私たちはほとんどずっと聞いていた」と述べた。「ただし、先方が持っているデータはともかくまったく間違っていると、その点は指摘しておきたかった」のだという。

「(トランプ氏)は、何百もの死者が投票したと主張した。しかし、私たちは2人しか見つけなかった。それが一例だ。彼は粗悪なデータを手にしている」と、ラッフェンスパーガー氏は述べた。

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ラッフェンスパーガー氏は同日、この時の電話が録音されていたことは知らなかったと記者団に話した。自分は自宅から通話に参加したのだという。

ジョージア州選管幹部で投票システム導入の責任者、ゲイブリエル・スターリング氏(共和党)は4日に記者会見し、トランプ氏の主張は「事実と異なると、簡単に立証できる」と述べた。また、州務長官への電話が「あまりにばかげていて」残念だと話した。

トランプ氏が電話で州務長官に話した内容について、批判が広がっている。中には、選挙結果の改ざんを求めた違法行為に相当するという意見もある。

5日にはこのジョージア州で、連邦議会上院(定数100)の2議席について決選投票が行われる。共和党関係者は、トランプ氏の電話によって自分たちが不利になる可能性を懸念している。

ジョージア州選管のスターリング氏は、大統領の発言によって選挙制度に対するジョージア州民の信頼が損なわれていると懸念を示し、5日の上院決選投票に参加するよう有権者に呼びかけた。

「全員の一票が意味を持ちます」と、スターリング氏は強調した。

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11月3日の選挙を受けた上院の構成は、与党・共和党が50議席、野党・民主党が48議席(無所属2議席含む)となっている。

もしもジョージア州で共和党が1議席以上獲得すれば、共和党が上院での過半数を維持する。もしも民主党が2議席とも勝てば、50対50で与野党同数となる。上院議決ではその場合、上院議長の副大統領が投票するため、1月20日以降はカマラ・ハリス次期副大統領(民主党)が上院議長として膠着(こうちゃく)打破の1票を入れることになる。

連邦議会の下院(定数435)は、民主党が222議席で多数党。

連邦議会は連邦政府予算の決定権をもつ。また上院は、政府高官や連邦裁判事の人事承認、条約批准などの権限をもつ。

電話でトランプ氏は州高官に何を

ワシントン・ポスト紙が公開した電話音声で、トランプ氏は自分はジョージア州での選挙で勝利したと主張し、「君たちが数え直したんだと言っても、何ら問題はない」とラッフェンスパーガー氏に述べていた。

これに対してラッフェンスパーガー氏は、「大統領にとって難問があります。あなたのデータは、間違っているので」と反論している。

トランプ氏は投票用紙がシュレッダーにかけられ、投票集計機がジョージア州フルトン郡から撤去されたという噂があったと述べた。ラッフェンスパーガー氏の弁護人はそれは事実ではないと反論した。

さらにトランプ氏は、法的措置を取る可能性をちらつかせて、ラッフェンスパーガー氏に圧力をかけた。

「向こうが何をしたのか知っているのに、君はそれを報告していない。それは犯罪行為だ。そんな真似をしてはならない。君と、君の弁護士のライアンにとって、これは大きなリスクだ」と、トランプ氏は述べている。

そして、自分がジョージア州で獲得した票(246万1854票)に1万1780票を追加するよう求めた。これを足せばトランプ氏の同州での獲得票数は247万3634票となり、バイデン氏の247万3633票を1票上回る。

トランプ氏はラッフェンスパーガー氏に対し、同州での選挙結果を再調査すべきだとした。

「ただし再調査するなら、答えを見つけたくないと思っている人たちとではなく、答えを見つけたいと思っている人たちと再調査すべきだ」

これに対してラッフェンスパーガー氏は、「大統領、あなたに情報を提示する人たちがいるように、我々にも情報を提示するスタッフがいる。裁判になれば、裁判所が判断することになる」と答えた。

「私たちは自分たちの集計結果を譲りません。自分たちの数字が正しいと信じているので」

電話への反応は

電話内容の報道を受けて4日には、民主党の下院議員2人が連邦捜査局(FBI)に手紙を書き、「直ちに大統領に対する刑事捜査に着手」するよう求めた。

「連邦議員として、そして元検察官として、私たちはドナルド・トランプが複数の選挙法違反の教唆や共謀に携わったと考える」と、テッド・リュウ下院議員(カリフォルニア州選出)とキャスリーン・ライス下院議員(ニューヨーク州選出)は連名で書いた。

検事出身でカリフォルニア州司法長官でもあったハリス次期副大統領は3日、ジョージア州で選挙応援中にトランプ氏の電話について「あからさまな権力乱用」だと非難した。

民主党幹部のディック・ダービン上院院内幹事は、トランプ氏は「たがが外れていて危険だ」と述べ、州務長官への電話は「刑事捜査の対象になるべきだ」と主張した。

ジョージア州のジェフ・ダンカン副知事(共和党)も、トランプ氏を批判した。副知事は4日、CNNに対して、「不適切だったと100%断言できる。現状に対して悪影響だ」と述べた。

ダンカン氏はさらに、「間違った情報にもとづいた主張だ。ここ10週間の間に否定され、反証されてきた、ありとあらゆる仮説にもとづいていた」と述べた。

トランプ氏は、自分が敗れた選挙結果を認定し、結果を覆すための州議会を開くようにという要請にも応じなかった同州のブライアン・ケンプ州知事(共和党)について、ツイッター上でも激しい批判を繰り返し、辞任を要求。ケンプ氏の知事当選に自分は協力したのに、ケンプ氏は自分に協力しないと、強く反発している。

上院決選投票への影響は

連邦議会の力関係に大きく影響するジョージア州の上院決選投票に向けて、4日にはトランプ氏とマイク・ペンス副大統領、ジョー・バイデン次期大統領がいずれも州内で応援の集会を開いた。

州都アトランタでバイデン次期大統領は、この決選投票が「次の4年間だけでなく、次の世代にとって方向を決める」かもしれないと強調し、「明日はアトランタとジョージアとアメリカにとって、新しい日になれるかもしれない」と投票を呼びかけた。

すでに300万人近い州内の有権者が、期日前投票を済ませている。これは11月の選挙に投票した人数の約半分にあたる。

共和党現職のデイヴィッド・パーデュー議員は、州務長官との電話会談についてトランプ氏を支持し、「州全体の選挙で選ばれた公職者が、政党を問わず、合衆国大統領との内々の会話を勝手に録音し、それをマスコミにリークするなど、もってのほかだ」と、FOXニュースに述べた。

また、トランプ氏の発言内容が違法行為に当たるという指摘については、「11月の選挙以来、大統領がすでに何週間も言い続けてきた内容と同じことを言っているまでで、それ以外の内容は何も耳にしなかった」と述べた。

パーデュー議員と争う民主党新人のジョン・オソフ候補はこれに対して、トランプ氏の電話内容は「この国の民主主義に対する直接的な攻撃だ」と非難。パーデュー議員や、もう1人の共和党現職ケリー・レフラー上院議員が「あのような攻撃からジョージア州民を守らない」と非難した。

レフラー議員と争う民主党新人のラファエル・ワーノック候補は、レフラー議員に対して、「立証されていない不正の主張を公に批判し、ジョージアの選挙を守り、自分自身よりジョージアを優先するべきだ」と呼びかけた。

レフラー議員は4日の選挙集会で、大統領の電話については記者団の質問に答えず、「私は明日の選挙のことだけを考えている。この選挙はジョージア州民全員に1人残らず影響するからだ」と述べた。

ただし、レフラー議員は同日夜に声明を発表し、6日の連邦議会では選挙人団の投票結果を認定しないよう投票すると述べた。

(英語記事 Raffensperger calls Trump 'just plain wrong' after election call

提供元:https://www.bbc.com/japanese/55541041

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