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2021年1月5日

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BBCリアリティーチェック・チーム

イギリスのボリス・ジョンソン首相はBBC番組「アンドリュー・マー・ショー」で、グレーター・マンチェスターなどに住む「普通の有権者」がブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)によってどのような利益を得るのかを説明した。

グレーター・マンチェスターのリーなどは、2019年の総選挙で与党・保守党を支持した地区だ。

ジョンソン首相が挙げたいくつかの例をファクトチェックする。

「欧州連合(EU)離脱の結果、すでに膨大な資金がイギリスに戻ってきている」

ジョンソン首相が何の資金のことを指しているのか、よく分からない。BBCはイギリス政府に確認したが、明確な回答は得られていない。

EU離脱の是非を問う2016年の国民投票では、ブレグジット後にはEUに対して拠出金を払わなくて良くなると、ジョンソン氏をはじめとする離脱派がしきりに主張し、注目された。

イギリスは移行期間が終わる2020年末まで、EU予算の割り当てを支払っていた。そのため、この期間に貯まった金額はそう多くはないはずだ。

また、イギリスはEUへの清算金の一部をまだ支払い続けている。清算金には、イギリスが加盟国時代に約束した分担金の中で未払いのものや、EU職員年金の分担などが含まれている。

イギリスの予算責任局(OBR)によると、イギリスは今年71億ポンド(約9900億円)をEUに支払う予定。昨年は82億ポンドだった。

つまり、1日に約300万ポンドの節約をしていることになる。つまり、5日時点では計1500万ポンドだ。

「ブレグジット初日に最初に行ったのは、電流を使った底引き網漁の禁止だ」

イギリスは2021年1月1日から、電流を使って魚を海底から引き離し、獲りやすくする漁法を禁止した。

しかしEU加盟国のフランスやベルギーはすでに、この方法を法律で禁じている。イギリスも加盟国時代に禁止できたはずだ。

EUの海域全体での禁止規則も2019年6月に成立し、2021年7月1日から全面的に施行される予定だ。

そもそもEU海域では数十年前から、電流を使った漁は減り続けていた。

海洋保護の慈善団体「ブルー・マリーン基金」によると、2019年1月~2020年6月までにこの漁法を使った漁船は、オランダ船7隻とイギリス船1隻の計8隻だけだった。

このうち4隻はイギリスの領海で漁を行っていたため、EUを離脱する前から禁止されていたはずだ。

しかし残りの4隻はイギリスの排他的経済水域(海岸から200海里)ではあったものの、領海外で漁を行っていたため、離脱前には違法ではなかった。

現在、イギリスは完全に独立した沿岸国家になったため、これらの漁船の操業を禁止できる。

「海域に入ってきて掃除機のように海底から根こそぎ取っていく巨大なフーヴァー・トロール漁船を禁止できる」

「フーヴァー」とはイギリスで広く使われている掃除機の米メーカーの社名で、「掃除機をかける」という意味の動詞にもなっていえる。だが、「フーヴァー・トロール船」という言葉は広く使われていない。ジョンソン氏は恐らく「スーパー・トロール漁船」を指していると思われる。これについてもBBCは政府に確認したが、答えは返ってきていない。

スーパー・トロール漁船は通常、全長100メートル以上の漁船を指す。環境保護団体グリーンピースによると、2019年には25隻のスーパー・トロール船がイギリスの海域で操業した。

その大半がロシアかオランダの船だったが、「フランク・ボネファース号」という1隻だけはイギリス国旗を掲げていた。しかし、この船も所有権の大部分はオランダにあった。

ブレグジットが完了した今、イギリスはスーパー・トロール船のイギリス海域での漁業を禁止できる。しかしEU離脱と共に結ばれた通商協定では、禁止はイギリス船にもEU加盟国船にも平等に適用される。

協定ではまた、2012~2016年にイギリス領海(海岸から6~12海里)で漁業を展開していた船については引き続きアクセスを認めるという条項があり、事態をさらにややこしくしている。理論的には、この中に何隻かのスーパー・トロール船が含まれているからだ。

英環境省の海洋管理機関(MMO)はすでに、少なくとも7隻のスーパー・トロール船(うち6隻はEU域内の船籍)に2020年12月31日以降もイギリスの海域で漁業できるよう一時的な認可を与えている。

国境をコントロールできるようになった。ポイント制の移民システムがすでに稼動している」

ブレグジットに伴い、在英EU市民と在EUイギリス人の自由な移動が終わり、2021年からポイント制の移民受け入れ制度が始まった。

今後、EU市民がイギリスで働く場合、年齢や技能を元にしたポイントによってその可否が決まることになる。

ただし、労働力が不足している職業などでは例外も設けられている。

「自由港を設置できるようになる」

自由港とは小規模の自由貿易区のことで、経済特区とも呼ばれる。この区域では通常の税金や関税などがかからない。

番組内でアンドリュー・マー司会者は、EUには80カ所以上の自由港があり、イギリスにも2012年まで存在したと指摘している。

しかしEUの自由港では、加盟国間の公正な競争を保証するEUの規則に従う必要がある。

自由港の支持者は、EU離脱の暁には、こうした区域がイギリスにさらに利益を与えると主張している。

しかし、イギリスが自由港でビジネスを展開する企業に対しあまりにも寛大な税制優遇措置を取った場合、理論的にはEU側から新たな通商協定に基づいた措置が取られることになる。また一部の貿易専門家からは、自由港を作ってもイギリスの別の場所から投資が移動するだけかもしれないとの指摘も出ている。

これについてイギリス政府の報道官は、「自由港によってイギリス全土が国際的な貿易・投資のハブになり、活気付くだろう」と説明している。

(取材:オリヴァー・バーンズ)

(英語記事 Boris Johnson's Brexit claims fact-checked

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55540981

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