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2021年1月6日

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BBCニュース、リアリティーチェック・チーム

米大統領選での敗北を認めていないドナルド・トランプ大統領が2日、ジョージア州高官に対し、同州の選挙結果を覆すのに十分な数の票を「見つける」よう要求していたことが明らかになった。米紙ワシントン・ポストが3日に2人の電話音声を公開した。

ワシントン・ポスト紙が報道した電話の音声では、トランプ氏がジョージア州のブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官(共和党)に対し、「1万1780票を見つけたいだけだ」と述べているのが確認できる。トランプ氏の得票数にこの1万1780票を追加すると、同州で勝った民主党のジョー・バイデン次期大統領の獲得票を1票上回ることになる。これに対し、ラッフェンスパーガー氏は同州の選挙結果に誤りはないと答えていた。

トランプ氏は約1時間に及ぶ通話の中で、選挙では大規模な不正があり、圧勝したのは自分だと繰り返したが、具体的な証拠は示さなかった。

そうした主張のいくつかを検証する。

主張その1:「死んでる人たちが投票した。(ジョージア州では)5000人近くだと思う」

トランプ大統領と支持者たちは繰り返し、すでに亡くなっている人の名前で大量の票が国内各地で投票されたと主張し続けている。

しかし、ジョージア州の選挙責任者、ラッフェンスパーガー州務長官は通話でこれを否定し、州内でそのような事態が確認されたのは2票だけだったと説明した。

会話に参加していたトランプ氏の顧問弁護士クレタ・ミッチェル氏は、死者による投票の詳細を入手しているとここで述べ、「生年と名前が同じですでに死んでいる人たちが大量にいる」と州務長官に告げた。

しかし、この「死者が投票」したという説について、私たちは以前、「ミシガン州で投票した死者1万人のリスト」なるものを検証している。その結果、「生年と名前が同じ」という特定方法は問題だらけだと確認できた。

「生まれた年と名前が同じ」という条件でアメリカ全土の死者と、特定の州の有権者を照合しようとすれば、何千人もの名前が一致するし、その中には死者もいれば、存命の人も含まれる。

私たちがミシガン州の有権者で調べたところ、生まれた年だけでなく生年月日まで含めて照合しても、同姓同名の人は大勢いた。

さらに「死んでいるのに投票した」とされていた複数の人と接触し、健在なことを確認した。

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主張その2:「公式でなく、封印されていない箱に、何千何万もの票が入っていた」

トランプ氏が言及しているのは、ジョージア州フルトン郡のステートファーム・アリーナに設けられた開票所で撮影された動画のことだ。選管スタッフによる違法行為が映っていると、トランプ氏の支持者たちが主張の根拠にしている。

動画では、選管スタッフが開票エリアに戻り、テーブルの下から投票用紙の入った箱を取り出す様子が映っている。

「(スタッフが)戻ってくると、持ち場に行かなかった。テーブルに張り巡らせた布のところへ行った。その下には、何千、何万もの票が箱に入っていた。公式でなく、封印されていない箱に」と、トランプ氏は電話で話している。

すでに複数の選管関係者がこの指摘について、これは通常の開票作業の一環だと反論してきた。

同州の選管幹部で投票システム導入の責任者、ゲイブリエル・スターリング氏(共和党)は12月初めにツイッターで、トランプ陣営によって90秒に編集されたものではなく、数時間分の動画の全てを州当局が点検したものの、問題行動は何も見つからなかったと書いている。

州当局による公式調査は、「防犯カメラ映像の全体からは、一部が言うような、なぞの投票用紙が秘密の場所から持ち込まれてテーブルの下に隠されたなどということはなかったと、明らかになった」と結論している。

現地フルトン郡の選挙責任者、リチャード・バロン氏によると、開票スタッフは「票がまとめて入っている箱を、作業台の下に入れているのは、そこが一番便利だからだ」という。

さらに州当局は、投票用紙が入っていた箱が、非公式のものだという指摘はまったく当たらないとしている。

主張その3: 「水道管が破裂したからみんな走って出て行った。でも水道管もなければ、なにもなかった。破裂もなかった」

トランプ氏が言及するのは、同じフルトン郡の開票所で開票作業が中断したことに関するものだ。

現地選管は当時、不在者票の集計が行われている部屋が漏水の影響を受けたと、発表している

州選管は後に公式調査の結果、「漏水だと当時報告されたものは(中略)実際には水洗トイレがあふれたことによるものだった」と修正した。

さらに、フルトン郡での開票作業は同日夜に再開したため、作業に特に影響はなかったという

トランプ大統領はさらに、開票スタッフが戻った時に「共和党の立会人がいなかった。というか、民主党の立会人がいなかった」とも電話で述べた。

それはその通りだ。しかし州の公式調査の結果、どちらの党の立会人も、部屋を出るよう言われていないし、戻ってはいけないとも言われていない。

州務長官配下のフランセス・ワトソン調査主任は、「両党の立会人に誰も、何をどうすべきとは言わなかった。そして、立会人も一般市民も、いつでも好きなときに戻って作業を見守ることができた」と説明している。

主張その4:「州外から投票した連中がいた。ジョージアで投票したが、州外から来たんだ」

通話に参加していた州務長官事務所のライアン・ジャーマニー弁護士は、大統領のこの主張を否定した。

「私たちが調べた有権者は全員、ジョージア在住でした。別の州に引っ越した後、合法的にジョージアに戻った人たちです」と、ジャーマニー弁護士は大統領に説明した。

こうした、いわゆる「州外有権者」についてトランプ陣営が掲げる数字は「正確ではない」と、弁護士は付け加えた。

連邦議会上院の2議席をめぐりジョージア州で5日に実施される決選投票を前に、ラッフェンスパーガー州務長官は、「この州の選挙で投票できるのは、有権者資格のあるジョージア州民のみ」で、州外からの投票は一切認めないと強調した。

さらに長官は、違法に投票しようとする者は「見つけ出して、法律上可能な限り厳しく起訴する」と警告した。

主張その5:「票をシュレッダーにかけている。じっくり慎重に点検すべきだ。ものすごく違法なんだから」

トランプ大統領は、「違法」な投票用紙を「何千も」シュレッダーにかけて廃棄していると主張した。不正投票の証拠隠滅が行われているという意味だ。

昨年11月にはソーシャルメディアで、廃棄会社が投票用紙を粉砕処理している映像だと主張する投稿が出回った。

ジョージア州コブ郡でそうやって投票用紙が廃棄されたという指摘について、同郡が調査したところ「通常の清掃作業」のもので、廃棄された書類は「選挙や再集計に関する」実際の投票用紙ではなかったと結論した。

廃棄されたのは、古い宛名シールや、有権者情報の記載された書類、古いメールや不在者投票用紙の写しなどだったという。

主張その6:「そちらのドミニオン(投票機)を確認していないから、万全だとは言えない。よその州では、ドミニオンの機械にとてつもない不正を見つけたと考えている」

トランプ大統領は複数の激戦州について、投票機による大規模な不正投票があったと、様々な主張を繰り返している。

ジョージア州を含む複数の州で使われているドミニオン・ヴォーティング・システムズ社の投票システムについて、自分に投じられた数百万の票がバイデン票に変更されてしまったという言い分だ。

しかし、ジョージア州でも、他のどの州でも、このような事態についての証拠は提示されず、複数の訴訟は各地の裁判所に退けられている。

ドミニオン社は、自分たちの投票システムには何ら問題がなかったと反論している。

投票機による不正の主張はアメリカの複数の右派メディアが報じたが、後にFOXニュースとニュースマックスは共に訂正報道を余儀なくされ、投票機が票を改ざんした証拠はないと言明している。

(英語記事 Georgia election: Donald Trump's phone call fact-checked

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55543551

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