2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2021年3月26日

 新型コロナウィルスの人口当たりのワクチンの接種率が世界一といわれるイスラエルのコロナワクチン対策専門家チーム代表で、国内最大の保健機構「クラリット」のチーフ・イノベーション・オフィサーでもあるラン・バリチェル氏が24日、日本記者クラブ主催のリモート講演会で同国のワクチン接種の現状とその効果について語った。

(JulyVelchev/gettyimages)

 バリチェル代表は、イスラエルの現在の感染状況について、

イスラエルのコロナ対策専門家チームのラン・バリチェル代表(日本記者クラブ提供)

 「ロックダウンという強力な対策をしても、いくつかの感染の波が来ること当初から予測していた。現在は第3波の最後の段階に来ているが、英国の変異株の感染者が増えてきている。昨年の12月19日から高齢者優先で始まったワクチン接種は、16歳以上の全住民に対象が拡大され、(人口約920万人の)国民の60%が接種済みで、50%が2回接種済みだ。特に50歳以上は80%が2回目の接種を受けており、高齢者はワクチンで守られている」

 と述べた。イスラエルで使われたワクチンは、日本でも接種が始まった米製薬大手ファイザーと、ドイツのバイオ企業ビオンテックが開発したワクチン。

 国内で接種を担ってきた「クラリット」の調査結果によると、発症の予防効果について、

 「接種済みと未接種の60万人ずつの集団を比べ、接種済みの集団はウイルス感染による発症が94%少なかった。重症化するケースも92%低下した。こうした効果は、70歳以上の高齢者も含め、年齢に関係なく確認できた。最初は60歳以上と医療関係者、次に50歳以上、40歳以上とカテゴリー別に接種を行って良かった。いまでは16歳以上なら、だれでも接種を受けられる」

 と指摘、ワクチンの効果は大きいことが実証されたとみている。

 世界で最も早く接種ができた理由については、

 「イスラエルはドイツや日本と比べて、地理的に人口が密集しているので、ワクチンの配送チェーンも効率的でまとまってできた。一番力を入れたのが、ワクチンクリニックを各地にオープンしたことだ。数百というクリニックを1週間で全土に展開した。大きな病院や広場にテントを張るなどしてクリニックを設営した。また、接種を受けた人の管理は、20年前にデジタル化した電子カルテを使って行い、誰が接種を受けたか、2回目の接種の日時の案内も1回目を受けた時点で決まるようにした」

 と話し、デジタル化の進展が効率的なワクチン接種に大いに役立ったことを明らかにした。

 さらに、ワクチンの効果について不信感を取り除くために、

 「透明性の確保が重要だった。われわれが知っていることと、分からないことをクリアなメッセージとして隠さず国民に伝えた。副反応については接種を初めて数か月しか経ってないので、フォロー研究していくしかなかった。しかし、副反応のリスクとコロナに感染するリスクを比べたら、明らかに感染リスクが高いメッセージを伝えることで接種に理解を求めた」

 と述べた。

 ワクチン接種を嫌がる人への対策については、

 「ワクチンを受けたくないという人は常にいるので、きちんとしたプランを作成し、国民に分かりやすい情報提供を行った。全国的なキャンペーンを行い、有名人が範を垂れる行動を示した。大統領がカメラの前で接種を受け、首相や有名ドクターも率先して接種を受けた。私も接種の初日にカメラの前で『ワクチンの効果はありますよ』と訴えた。こうした効果が効いてきたことで、ロックダウンを解除することができ、現在、イスラエルは通常の生活に戻りつつある」

 という。


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