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2021年5月17日

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イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザ地区の武装勢力の衝突で、ガザ地区の当局は16日、イスラエル軍による空爆で42人が死亡したと発表した。双方の衝突が今月10日にあらためて始まって以来、1日の死者数としては最多という。対してイスラエル軍は、パレスチナ武装勢力がイスラエルに向けて1週間で3000発以上のロケット弾を撃ち込んだと反発している。

ガザ地区当局は、イスラエル軍による16日の空爆で、女性16人と子供10人を含む42人が死亡したと明らかにした。

一方のイスラエルは、戦闘が10日に始まって以降、パレスチナ武装勢力によるロケット弾攻撃でイスラエル国内では子供2人を含む10人が死亡したとしている。

ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマス傘下の現地保健省によると、衝突が始まった10日以降、ガザ地区では計188人が死亡し、1230人が負傷した。死者のうち33人が女性、55人が子供という。イスラエル政府は、死亡したパレスチナ人のうち数十人が戦闘員だと主張している。

国連総長が警告

衝突の激化を受けて、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は同日、「まったくとんでもない」暴力をただちに中止するよう呼びかけた。事務総長は、戦闘がこれ以上続けば、周辺地域は「抑え込むことのできない危機」に陥ると警告した。

国連はさらに、ガザ地区の燃料不足が深刻化しており、病院などの施設が停電する危険があると指摘している。

国連のリン・ヘイスティングス中東和平担当副特別調整官はBBCに対して、国連として燃料や支援物資を現地に運びこみたいとイスラエル当局に働きかけたものの、危険だからと認められなかったと話した。

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16日には何が

日付が16日に変わって間もなく、イスラエル軍はガザ市内の主要道路を空爆。少なくともビル3棟が崩壊し、数十人が死亡した。

対するハマスは未明から午後にかけて、イスラエル南部へロケット弾を発射し続けた。

イスラエルではサイレンが鳴り続けるなか、市民数百万人が防空壕などに避難した。ガザ地区でもパレスチナ人が避難を試みた。しかし、ただでさえ人や建物が密集し、避難設備に少ないガザ地区では、住民が安全に身を隠せる場所は多くない。

ガザ市内に住むリヤド・エシュクンタナさんはロイター通信に対して、家の中で一番安全だと思った部屋で子供たちを寝かせたものの、夜間の空爆によって妻と子供3人が死亡し、娘のスージーちゃん(6)だけが、がれきの中から救出されたと話した。

「駆け上がって娘たちの無事を確認しに行った。妻が娘たちを抱きしめて部屋から出ようとした時に、2度目の爆撃を受けた(中略)屋根は破壊されて、自分はがれきの下敷きになった」と、エシュクンタナさんは言う。

イスラエル軍は後に、この地区では武装勢力の地下トンネル網を対象に爆撃を繰り返したのだと説明。トンネルの崩落によってその上に建つ建物も崩落したため、意図しない民間人の犠牲者が出たと話した。

イスラエル軍は、ハマスの指導層やインフラを攻撃の標的にしているのだと説明している。ハマス指導者ヤヒヤ・シンワル氏とその兄弟で兵站(へいたん)担当とされるムハンマド・シンワル氏の自宅も攻撃したと、イスラエル軍は話している。ただしAP通信によると、攻撃当時に両氏が自宅にいた可能性は低い。

ガザ地区では、空爆で破壊された建物のがれきから住民を救出する作業が1日中続いた。パレスチナ自治政府の保健省によると、ガザ市内の拠点病院シファ病院の内科部長で新型コロナウイルス対策チームにも参加する、アイマン・アブ・アルオウフ医師も死亡した。

イスラエル側では、ハマスが発射したロケット弾がアシュケロン、アシュドド、ネティヴォトなど中部や南部の市内に落下。死者の報告はない。

イスラエル軍はこの1週間、領内へのロケット弾攻撃がかつてないほど集中的に続いているとしている。防空迎撃システム「アイアンドーム」がその多くを迎撃し、着弾を防いでいるものの、一部は市街地の建物や車両に損害を与えている。地元紙タイムズ・オブ・イズラエルによると、アシュケロン市のユダヤ教集会所シナゴーグでは、重要な宗教行事シャヴオット(五旬節)の夕方の祈りの直前に、ロケット弾によって壁に穴が開いたが、負傷者はなかったという。

国連安保理では何が

国連の安全保障理事会は16日に緊急会合を開いたものの、この日も公式声明の文言で合意するに至らなかった。

イスラエルを強力に支援するアメリカが反対したものと見られる。アメリカは、安保理声明はむしろ外交努力の妨げになると主張しているという。

16日の緊急会合ではリンダ・トマス=グリーンフィールド米国連大使が、「当事者たちが停戦を求めるなら」アメリカとして支援する用意があると発言。米政府はこれまでもすでに、衝突停止に向けて不断の努力を重ねてきたと述べた。

パレスチナ自治政府のリヤド・アル・マリキ外相は、15日にガザ地区の難民キャンプが空爆されたことに言及。この攻撃では、生後5カ月の男児を残して一家10人が死亡している。

「イスラエルはよく、『私たちの靴を履いてみろ(私たちの立場になって考えてみろ)』と我々に言う。しかしイスラエルが履いているのは靴ではない。軍のブーツを履いている」と、マリキ氏は批判した。

これに対してイスラエルのギラド・エルダン駐米兼国連大使は、ハマスのロケット弾で10歳のアラブ系イスラエル人少女が死亡したことに言及。イスラエル軍は「英雄的な努力」を重ね、「民間人の犠牲を避けながら、テロリストのインフラを破壊しようとしている」のだと説明した。

エルダン大使はその上で安保理に対して、ハマスを全面的に非難するよう求めた。さらにイスラエルとしては、自衛のためあらゆる手を尽くすと念押しした。


<解説> 停戦の見通しは? ―――ポール・アダムズBBC外交担当編集委員

イスラエル軍がガザ地区で展開中の軍事作戦には、「壁の守護者」という名前がついている。これは完了に近づいているのだろうか。

はっきりそうとは言えない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日の記者会見で、攻撃は「全力」で継続中で、「時間がかかる」と述べた。

首相はさらに、「圧力」があることは認めたものの、とりわけアメリカのジョー・バイデン大統領を名指しし、支援に感謝した。

バイデン大統領が派遣したハディ・アムル特使は14日にイスラエル入りして以来、イスラエル当局者と協議を重ねている。

アメリカもイスラエルや複数の政府と同様、ハマスをテロ組織と認定しているため、アムル特使は紛争当事者の片方とは会談しないことになる。

ハマスへの伝達事項は、仲介役を長年続けてきたエジプトやカタールなどのチャンネルを経由しなくてはならない。

地元報道によると、ハマスは数日前から何らかの停戦条件を提示しているものの、イスラエルはこれをはねつけているという。イスラエルは明らかに、攻撃を終える前にハマスに最大限の損害を与えたい構えだ。

一連の展開は、おなじみのパターンに沿っている。軍事面で紛れもなく優位に立つイスラエルは、民間人の犠牲拡大や人道危機の悪化を前に国際社会が停戦を声高に求めるまで、徹底的な攻撃を重ね続ける。これが従来、繰り返されてきた流れだ。

今回の事態はまだその段階に達していないというのが、イスラエルの判断だ。

(英語記事 Israel Gaza conflict: Gazan officials say Sunday was 'deadliest day'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/57139377

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