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2021年6月11日

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フランスのエマニュエル・マクロン大統領が訪問先で顔面を平手打ちされた事件で、逮捕された2人のうちの1人の公判が行われ、禁錮18カ月(うち執行猶予14カ月)の判決が言い渡された。これを受けて被告は4カ月、収監されることになった。

ダミアン・タレル被告は法廷で、大統領を平手打ちしたのはとっさの行動だったと証言したが、検察側は「意図的な暴力行為だった」と述べた。

法廷では、タレル被告が右派あるいは極右の政治に傾倒していたほか、燃料税増税をめぐり始まった抗議運動「ジレ・ジョーヌ」(フランス語でイエロー・ベスト、黄色いチョッキの意味)とも近かったことが明らかになった。

検察側は公務員を攻撃したとして禁錮18カ月の実刑を求刑。裁判を担当した3人の判事は、これに14カ月の執行猶予を付けた。

タレル被告と共に映像に映っていた1人は、家宅捜索の結果、武器の不法所持で起訴された。この男性はタレル被告と同じ町からやってきていたという。

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事件は8日、同国南東部タンレルミタージュで起きた。マクロン大統領が訪れたホテルの職業学校を出た直後、鉄柵の向こう側に集まっていた群衆と交流しようとしたところ、タレル被告に平手打ちを受けた。

タレル被告は平手打ちをした時、「モンジョワ、サン=ドニ! マクロン主義を打倒せよ」と叫んでいたとされる。「モンジョワ、サン=ドニ」とは、中世のフランス王軍が戦闘で使ったかけ声。

この事件を受け、フランス国内では与野党から非難の声があがった。

マクロン大統領は、この事件を軽視してはいけないと述べた一方、大げさに反応しないよう呼びかけた。

「嫌悪感で一杯になった」

AFP通信によると、タレル被告は事件当日に着ていたものと同じ緑色のTシャツ姿で法廷に現れた。

大統領を攻撃した理由について聞かれると、現場後方に停まっていた車で友人を待っていた時に、何か注目を浴びるようなことをやろうと考えたと答えた。また、卵やクリームタルトを投げることも考えたものの、平手打ちをすることは頭に上らなかったと述べた。

「大統領が親しげな嘘つきの目つきで、票を目当てに自分を見るのを見て、嫌悪感で一杯になった」

タレル被告は大統領の政策を批判したほか、自分を「ジレ・ジョーヌ」運動の一員を自認していると述べた。「ジレ・ジョーヌ」はマクロン政権初期、燃料税増税への抗議を発端に、生活費全般の高騰への怒りとなって膨れ上がった抗議運動で、大規模なデモや公共施設の破壊などが行われた。

一方で、「反射的に動いてしまった」と述べている。

友人はタレル被告が「政治に無関心」だったと話している。地元紙パリジャンの電子版は、捜査関係者が同被告の政治思想について「イデオロギーのごちゃまぜ」と述べたと報じた。タレル被告自身は、インスタグラムのページで、ヨーロッパの歴史的武術の全国組織のメンバーだと自らを紹介。中世風の衣装を身に着け、長い剣を持った自身の写真を投稿していた。

マクロン大統領を平手打ちする際にあげた中世のかけ声は、1993年のヒット映画「レ・ヴィジター」のコミカルな登場人物をまねた可能性もあるという。

「高い緊張感と暴力」

マクロン大統領は当初、この事件は単発的なものだと説明。一方で、「極度に暴力的な人々」が公の議論をのっとることは許されないと話していた。

しかし10日の記者会見では、「フランスはジレ・ジョーヌ危機の間、非常に高い緊張感と暴力に見舞われ、私も大統領としてそれを経験した。しかし社会はいま、別のところにある」とさらに語調を強めた。

その上で、マクロン氏個人では法的措置を取らず、司法機関に任せると述べた。

(英語記事 Jail for man who slapped Macron on official visit

提供元:https://www.bbc.com/japanese/57437434

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