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2021年9月24日

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ジョナサン・ビール、防衛担当編集委員、BBCニュース

イギリス軍のアフガニスタンにおける活動に関連して死亡した多数の民間人に対する補償金の額が、初めて明らかになった。

英国防省は2006~2014年に死亡したアフガニスタンの民間人289人について、計68万8000ポンド(約1億円)を支払った。1人当たりの平均は2380ポンド(約36万円)だった。

しかし、家族1人を失ったある家庭に対しては104.17ポンド(約1万5800円)しか支払われなかった。ロバの群れを失った人への補償金より少ない額だった。

国防省は補償金について、過去や将来の損失、現地の慣習なども考慮した法原理によって決まっていると説明した。

情報公開で記録入手

英軍がアフガニスタン・ヘルマンドの軍事行動に絡んで2014年までに支払いに応じた約7000件の補償請求を、英民間団体「Action on Armed Violence」(AOAV)が分析した。

AOAVは情報公開制度を使って関連記録を入手した。こうした方法で、英軍がアフガニスタンで民間人にどのような影響を及ぼしたのかを調べたのは初めて。

記録によると、最年少の被害者は3歳男児で、英軍の地雷除去活動中に「ショック死」した。死亡したアフガニスタンの民間人289人のうち、少なくとも16人が子どもだった。

AOAVのマリー・ジョーンズ氏は、「英軍による調査はなされず、民間団体がこの記録を調査しなくてはならないという事実こそ、深く憂慮すべきことだ」と述べた。

携帯電話の補償額を下回る

死亡した民間人に対する補償はかなり多様だ。2008年2月には、家族の1人が死亡し、物的損害も被った家庭が104.17ポンドしか受け取らなかった。

それ以上の詳細は示されていないが、民間人の死者に対する補償としては、記録が残る中でこれが最低額だった。

英軍は対照的に、現地の基地キャンプ・バスチョンで紛失した携帯電話に110ポンド、「ライフルの射撃圏内に入り込んできた」6頭のロバの群れが死んだことに対して662ポンド、装甲車が引き起こした物的損害に対して240ポンドを、それぞれ支払っていた。

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メディアが報じたのは「ごく一部」

2009年12月に死亡した10歳の少年については586.42ポンドを支払った。

同月に「ISAF(国際治安支援部隊)に射殺された」子ども4人については、4223.60ポンドを支出した。ただ、英語メディアがこの出来事を報じた形跡はない。

「当時、これらの死のごく一部しか報じられず、簡単に忘れ去られかねなかった」とジョーンズ氏は話した。

メディアの注目を集めたケースは、補償額が際立って高いものだった。英軍のアパッチ攻撃ヘリコプターからの流れ弾で子ども5人がけがを負い、7204.97ポンドを支払った。

けが人については、240人に対し計39万7000ポンドの補償金を出した。1人当たり平均1654ポンドだった。

補償金の最高額は、カブールで2007年に死亡した1人に対する5万4347ポンド(約820万円)だった。この事案について詳しい記録は残っていない。

請求の大半は拒む

記録からは、補償請求の大半が拒まれていたことがわかる。死亡885件、負傷285件の請求を、国防省は認めなかった。

AOAVは、「記録に残っている死亡例は、英軍が引き起こした死亡事案を過小にとらえたものである可能性が高い」とした。

アメリカ軍も、2006年10月~2014年9月に発生した死亡、負傷、物的損害に対して、1600件以上の「慰謝料の支払い」をしていた。

支払額は計約490万ドル(約5億4100万円)にのぼったと、米団体「Center for Civilians in Conflict」の報告書は記している。

英国防省の報道官は、「すべての民間人の死亡は悲劇であり、イギリスは常に民間人が犠牲になるリスクを最小にするため、正確な標的の設定に努めている。だが、そのリスクを完全に取り除くことは不可能だ」と述べた。

(英語記事 UK payout to bereaved Afghan family was £104.17

提供元:https://www.bbc.com/japanese/58673996

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