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2021年9月28日

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カティヤ・アドラー、欧州編集長

「首相気取りの2人」、「ポーカーを始めよう!」……。ドイツで大勢が読むの大衆紙「ビルト」は27日朝、ウエブサイトにこうした見出しを並べた。

これは本当に、26日に投開票が行われたドイツ総選挙に言及してのものだろうか? ドイツ政治はこれまで堅苦しくて、意外性に乏しく、退屈とさえ言われてきたのに。

しかし、今回は違った。

26日夜には、二大政党が接戦を繰り広げた。中道左派の社会民主党(SPD)と、中道右派キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の得票率の差は、時に1%を下回った。

そして今、僅差で勝った様子のSPDと、僅差で負けた様子のCDU・CSUの双方が、連立を組む権利は自分たちにあると主張している。

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しかも、両党はどちらも、緑の党と、自由市場主義を掲げる自由民主党(FDP)の2党との連立を画策している。それだけに今後は、長く複雑な連立交渉が予想されている。

そしてその間は、アンゲラ・メルケル首相への「Auf Wiedersehen (さよなら)」も保留となる。新政権が決まるまではメルケル氏が首相として政界に残るため、引退後の新生活の予定を立てていたとしても、クリスマス時期までは棚上げの見込みだ。

今のところ、ドイツ政界はごちゃごちゃ混乱していて、ドイツらしくない。

それとも、これがドイツらしいのか?

総選挙の前には、16年にわたるメルケル時代を経てドイツは今後どう変わるべきか、ともすれば劇的に変わるべきなのか、実に多くの議論が費やされていた。

しかし選挙期間中、CDUとSPDの党首はどちらも、自分をメルケル氏の後継者と位置づけようとしていた。メルケル氏とさほど変わらず、むしろ様々な面で似ている指導者に自分はなると。

ドイツ国民は変化がどうしたと口にはするが、そのほとんどが一番求めているのは安定だ。

新しい連立政権を作ろうとしているどの政党も、決して急進的な姿勢の政党とは言えない。

おそらく私たちが今後目にすることになるのは、限定的な変化、いわゆる「小文字の変化」だろう。

私がドイツについて本当に変わったと感じるのは、有権者の投票傾向だ。これは他の欧州諸国に、ますます似てきた。

ドイツの人たちは、個々の候補者に説得力があるかどうかで、自分の票の行方を決めるようになった。自分や家族が今までずっとそうしてきたからという「忠誠心」から、自動的にどこかの党に入れるようなことはもうない。

メルケル氏が率いたCDUは、メルケル氏の引退が発表された時点で、有権者を失うリスクを負った。

前回と前々回の総選挙でCDUに投票した有権者の大半は女性だった。残りの投票者も、普段ならCDUを支持しないが、メルケル氏がいるというそれだけの理由で、CDUに投票したと話していた。

こうした有権者は今回、他党にとって熟した果実のような存在だった。

独調査会社インフラテスト・ディマップは、今回の選挙で200万票以上がCDU・CSUから緑の党とSPDに流れたとみている。

新たな連立政権成立に向けて二大政党が争うポーカーゲームは、国内外から注目を浴びている。

ドイツは欧州連合(EU)最大の経済大国で、最も影響力のある加盟国だ。メルケル氏が退場するから、そして投票傾向がいきなり分散したからといって、国際社会における従来の大役がいきなり縮小するわけではない。

ドイツの同盟国や貿易相手国は、その政治的安定性を重視している。「小文字の変化」だけでは、ドイツを取り巻く情勢は変わらないだろう。

(英語記事 German elections usher in change with a small 'c'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58702766

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