2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月7日

 イランでは8月に強硬派のライシ新大統領が就任したが、イランは、トランプ前米大統領が一方的に離脱した核合意の再建に向けたシグナルを発している。イランのアブドラヒアン外相は9月24日、イラン核合意の再建に向け、「近く協議を再開する」と述べた。ただし、イラン当局は、その期限については「数週間以内」という曖昧な言い方をしている。

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 イランが核合意の復活で最も望んでいるのは、制裁の緩和であると考えられる。イランに対する制裁の中心はイランの石油輸出に対する制限である。イラン政府が、経済が疲弊し(国民一人あたりのGDPは2018年以来、約15%低下)、イラン国民の生活が困窮して不満が高まっている事情に鑑み、石油をより多く輸出し、外貨を獲得して経済を立て直し、国民の不満の解消を図りたいと考えているのは当然である。

 核については、イランが核兵器製造能力、特に高濃縮ウランの獲得に意欲を示していることは間違いない。イランにとって安全保障上もっとも警戒すべきはイスラエルであり、イスラエルに対抗するためには核兵器製造能力の取得が必要と考えていると思われる。

 イスラエルはこれを知っており、これまでにイランの核関連努力に対し、遠心分離機をサイバー攻撃したり、核関連科学者を暗殺したりしてきたし、今後ともイランの核関連努力の妨害をするものと考えられる。

 イランの核関連努力に反対しているのはイスラエルだけではない。米国を中心とする西側諸国もイランの核関連努力には多大の懸念を持っており、これを阻止したいと考えている。米国はイスラエルと共同でイランの遠心分離機をサイバー攻撃した。このような中で、イランとしてはとりあえず核合意に復帰し、イランや西側諸国の懸念に対処したいと考えているものと思われる。


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