BBC News

2021年11月23日

»著者プロフィール

レイチェル・シュレア、ケイリーン・デヴリン、BBCリアリティーチェック

英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で各国首脳が気候変動対策を協議する中、ソーシャルメディアでは気候変動に関する偽の主張や誤情報が拡散していた。

科学者によると、気候変動否定論は現在、気候変動の現象そのものを完全に否定するものから、地球温暖化の原因や影響、それらへの対策を否定する方向に転換しているという。

この1年間、ソーシャルメディアなどで特に拡散した間違った主張を取り上げ、実際の証拠と照らし合わせてみる。

1.「太陽の極小期」が温暖化を止める

20世紀の地球の気温の変化は人間の活動ではなく、地球の自然な周期によるものだという間違った主張は、これまでも多くの人が繰り返してきた。

しかしここ数カ月、この点をめぐって新しい議論が出てきている。

ソーシャルメディアではここ1年、「Grand Solar Minimum(太陽の極小期)」と呼ばれる現象によって、人間が介入するまでもなく自然に地球の気温が下がるという主張が何千件と投稿されている。

しかし、これは証拠が示している事柄とは異なっている。

極小期は、太陽の活動周期の中でエネルギーが弱くなる現象で、実際に起こっているものだ。

研究によると、太陽は21世紀中に弱い周期に入る可能性がある。しかし、これによる気温変化は、最大でも摂氏0.1~0.2度ほどの低下にとどまるという。

これは、人間の活動による温暖化を相殺するには足りない。人類は過去200年で地球の気温を1.2度ほど上昇させており、21世紀中に2.4度まで達する可能性もある。

また、気温上昇は大気のうち地球に最も近い層で起きている一方、太陽に近い成層圏では気温が下がっている。このことからも、近年の温暖化が太陽の活動周期によるものではないことが分かっている。

大気の熱は通常ならば成層圏に放出されるが、人間が燃料を燃やすことで発生する二酸化炭素などの温室効果ガスによって、現在はそれが閉じ込められている。

もし地球の温暖化の原因が太陽だというなら、大気全体が同時に温まる(あるいは冷える)はずだ。

<関連記事>

2.温暖化は良いこと

インターネット上には、温暖化によってむしろ地球上に人間の住める場所が増えた、温暖化よりも気温低下の方が多くの人が死ぬ――といった投稿が数多く出回っている。

こうした主張の多くは、都合のいい事実だけを取り上げ、自分の主張を否定する事実は無視する。

たとえば、これまで人が住めないほど寒かった地域は確かに、温暖化によって住みやすくなっているかもしれない。

しかし一方で、同じ地域に豪雨が起きるようになり、生活や農業の環境に影響を与えるかもしれない。さらには世界で最も海抜の低いモルディヴなど、温暖化や海面上昇によって人が住めなく地域も出てくる。

また、確かに温暖化によって寒波などによる死者は減るだろう。2000~2019年に寒さによって亡くなった人は、熱中症などによる死者よりも多かったという研究もある。

しかし、温暖化に伴う酷暑による死者が増えて、この差も相殺されてしますとみられている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「人の健康と生活に関わる気候リスクは(中略)、1.5度の気温上昇で加速すると予想される」と指摘している。一部地域で寒い日が少なくなるという小さな利益は、より頻繁に起こる熱波のリスクに打ち消される見通しだ。

3. 気候変動対策で貧困が起こる

気候変動対策への反論として、化石燃料は経済成長に必要だという主張がある。

この主張は、化石燃料の使用を抑制すれば経済成長も抑制されてしまい、生活費が上がり、貧困層が苦しむことになる……と続く。

しかし、この主張は全体像をとらえていない。

確かに化石燃料は自動車や工場、技術を動かし、20世紀の人類がこれまでにない規模とスピードで物事を進める原動力となった。

しかし、石炭の使用をやめるからといって、ウシに車を引かせたり、手でレバーをぐるぐる回して機械を動かしたりする時代に戻るわけではない。我々はすでに、同じような働きをする別の技術を手に入れている。

多くの地域で、風力や太陽光を使った再生可能エネルギーによる電力価格が、火力発電の電力価格を下回っている。

一方で、2050年までに気候変動対策を取らなかった場合、自然災害や異常な気温が建物や人々の生活、ビジネス、食糧供給などに与える損害によって、世界経済が18%縮小する可能性があるという研究が出ている。

こうしたダメージこそ、世界中の貧困層に誰よりも大打撃を与えるだろう。

4. 再生可能エネルギーは危険で信頼できない

米テキサス州では今年初め、電力網の障害により大規模停電が起き、多くの住民が暗闇と寒さに直面した。この時、再生可能エネルギーの失敗が停電を引き起こしたという誤情報が拡散された。

停電の原因が風力発電のタービンだという間違った主張は、アメリカの保守系メディアも数多く取り上げた。

英ダラム・エネルギー研究所のジョン・グルヤス所長は、「停電は、粗末な発電供給管理の結果だ」と指摘する。

また、停電の原因は再生可能エネルギーだという主張は「筋が通っていない(中略)たとえばヴェネズエラは大量に石油を使っているのに停電が頻繁に起こっている」と述べた。

英シンクタンク「戦略対話研究所(ISD)」のジェニー・キング氏によると、「石油とガスへの依存、ならびに石油とガスへの補助金に依存する体制を守りたい人たちが、再生可能エネルギーをなにより攻撃している」。

再生可能エネルギー反対派は、この技術が鳥やコウモリを殺しているという主張もする。しかしこれは、化石燃料による発電所の方が何倍もの動物を死に追いやるだろうという研究結果を無視している。

鳥類を含む一部の野生動物が、風力発電のタービンによって死んでいるのは確かだろう。

しかし、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の気候変動・環境研究所は、「自然保護団体は、気候変動を抑えることによる野生動物への利益は(中略)慎重な立地など正しく計画された安全策を講じることで、風力発電のリスクを上回るとみている」と述べている。

(英語記事 Is this the new climate change denial?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-59329300

関連記事

新着記事

»もっと見る