BBC News

2021年11月24日

»著者プロフィール

高騰が続く原油価格を抑制するねらいで、アメリカ政府は23日、石油の備蓄の一部を市場に放出すると発表した。イギリスや中国、日本などの主要石油消費国と協調した動きだと説明。日本メディアによると、岸田内閣も24日、アメリカと協調し、石油の国家備蓄の一部放出を決定したと発表した。

アメリカは今後数カ月で、計5000万バレルを放出する方針という。供給量を増やして原油価格の上昇を抑えることが目的。日本、インド、韓国、イギリス、中国と協調した取り組みだと説明した。

ホワイトハウスは声明で、「アメリカの消費者は、ガソリンスタンドでの給油代、そして自宅の暖房費において価格高騰の影響を実感している。アメリカの企業も同様だ。石油供給が需要に見合ってこなかったためだ」と指摘し、「そのためバイデン大統領は価格を抑制し、供給不足に対応するため、全力を尽くしている」と表明した。

アメリカ政府関係者は、アメリカが世界の主な石油消費国と協調してこのような対応をとるのは初めてだと説明した。

イギリス政府はアメリカに協調し、民間企業による自発的な備蓄放出を150万バレルまで認める方針。この動きは世界経済の回復を助けるためのものとしつつ、「イギリスのドライバーにとってのメリットは、限定的で短期的なものにとどまる」とも述べている。

NHKなど日本メディアによると、岸田文雄首相は24日午前、記者団に対し、「アメリカと歩調を合わせ、石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部を売却することを決定した」と述べた。首相は、「原油価格の安定は、新型コロナウイルスからの経済回復を実現する上で、大変重要な課題だ」とも話した。

インド政府も23日、備蓄から500万バレルを市場に放出すると発表した。

バイデン大統領はこれまでも繰り返し、石油輸出国機構(OPEC)に対して、原油増産を加速させるよう働きかけてきた。しかしOPECは、増産は徐々に行うという従来方針を維持してきた。産油国側は、新型コロナウイルスの感染が再拡大すれば、パンデミックが特に深刻化した時期と同様に、石油需要が一気に急減してしまうことが懸念されると説明している。

各国経済がパンデミックから回復する中、今年10月末には原油価格が一時7年ぶりの高値をつけた。その影響で多くの国でガソリンなど燃料価格が高騰している。

原油価格は今年、年初から約50%上昇している。

アナリストの評価は

サウジアラビアやロシアなどが参加する産油国の枠組み「OPECプラス」はこれまで、各国からの増産要請を再三拒否してきた。アメリカではそのため産油国へのいらだちが高まっている。

アメリカ政府高官の1人は23日、記者団に対して「この件について我々は引き続き、連携各国と協議を続ける」と述べ、さらに「もし追加措置が必要ならば大統領にはその用意がある。世界全体と連携して対応するため、大統領権限のすべてを使う用意がある」とも話した。

独国際商業銀行コメルツバンクのアナリスト、カルステン・フリッシュ氏は、今回のアメリカの動きを受けて、OPECプラスはこれまでの戦略を再考し、来週の会合で増産に合意するかもしれないと指摘する。

「全体像で捉えるなら、5000万バレルというのは、1カ月間毎日160万バレルの増産、あるいは7週間1日100万バレルの増産を意味する。これはかなりの規模だ」

しかし、実質的な効果がどの程度出るのか疑問視するアナリストの意見もある。

「具体的に意味のある形で石油価格を引き下げるほどの規模は足りないし、これを機にOPECプラスが増産のペースを遅らせることになれば、むしろ逆効果だ」と、英経済調査会社キャピタル・エコノミクスの主任消費財エコノミスト、キャロライン・ベイン氏は話した。

「つまり今回の動きは、かなり象徴的なもので、政治的な動機によるものに思える」とベイン氏は続け、さらに「いささか短気」な動きにも見えると述べた。もしOPECプラスが増産を続ければ、来年の第1四半期には原油市場は供給過多状態になり、「そうすれば価格は自然と下がる」というのが、多くのアナリストの一致した見方だという。

(英語記事 US to release oil reserves in attempt to lower prices

提供元:https://www.bbc.com/japanese/59397478

関連記事

新着記事

»もっと見る