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2022年4月16日

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ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア政府が、正式な外交文書で、アメリカをはじめとする同盟諸国によるウクライナへの武器供与について警告していたことが15日、明らかになった。在ワシントンのロシア大使館が米国務省に送った文書を、複数の米メディアが確認した。

一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は米CNNに出演し、ロシアがウクライナに戦術核兵器を使用する危険について世界は備えておくべきだと述べた。

2ページにわたる正式な外交文書でロシア政府は、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)諸国がウクライナへ武器を提供し続けていることが、ウクライナでの紛争に「燃料を与えて」おり、「予測できない結果に」つながりかねないと警告した。

ロシア政府はこの文書を12日に送付していた。アメリカの追加武器供与について情報が出回り始めたのとほぼ同時で、その数時間後にはジョー・バイデン米大統領が計8億ドル(約1000億円)の追加軍事支援を承認した。追加支援には旧ソ連製ヘリコプター「Mi17」11機、自爆型ドローン「スイッチブレード」300機、携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」500基などのほか、初めて長距離榴弾(りゅうだん)砲などが含まれた。

ロシア政府の警告について米政府幹部は、アメリカとNATOの軍事援助が効果を上げているとロシアが認めたと受け止められると述べている。

アメリカからの追加支援は数日中にウクライナに到着する予定。ロシア軍はウクライナ東部に集結を続けており、数週間のうちにドンバス地方で大攻勢を仕掛けるものとみられている。

ロシアとウクライナの戦争が始まって以来、アメリカは30億ドル(約3800億円)以上の軍事支援をウクライナに提供している。

ロシアが戦術核使う事態への備えを=ゼレンスキー氏

ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、CNNに出演し、ロシアがウクライナに対して戦術核兵器を使用する危険について世界は覚悟すべきだと述べた。

ロシアの核使用をめぐっては、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官が14日に講演で、ウクライナに対して小型戦術核を使用する危険は軽視してはならないと発言。これについて、CNNのジェイク・タッパー記者に質問されたゼレンスキー大統領は、「私だけでなく、全世界が、すべての国が心配しなくてはならない。本当の情報ではないかもしれないが、真実だということはあり得る」と、英語に切り替えて答えた。

「私たちは恐れるのではなく、備えておくべきだ。しかしそれはウクライナだけの問題ではなく、全世界の問題だと思う」と、大統領は続けた。

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首都近郊の軍需工場にミサイル攻撃

ロシア政府は15日、ウクライナの首都キーウ(ロシア語でキエフ)近郊の軍需工場をミサイル攻撃したと発表した。ウクライナ軍がロシア領内の村をヘリコプターで攻撃したことへの報復だと主張した。

ロシアは14日の時点で、ウクライナ軍のヘリ2機がロシア南部ブリャンスク州クリモヴォ村で集合住宅を爆撃し、8人を負傷させたと主張していた。

ウクライナ側は、ロシア側の主張を否定し、「反ウクライナ・ヒステリー」をあおるための自作自演だと反論している。

BBCは双方の主張の裏付けを確認できていない。

こうした事態を受けてロシア国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官は15日、「今晩、海上発射型の高精度長距離巡航ミサイル『カリブル』が、キエフ郊外の軍事施設を直撃した」と発表した。

報道官は、「キエフの国家主義政権」が「ロシア領内をテロ攻撃したり破壊工作を実施したりすれば、キエフ内の標的へのミサイル攻撃の数と規模は増していく」と警告。今回のミサイル攻撃が標的としたのは、対空や対艦のミサイルシステムを製造したり修理したりしている工場だったと説明した。

破壊された工場の近くで木工作業場を経営するアンドレイ・シゾフさん(47)はAFP通信に対して、攻撃は15日未明に起きたと話した。

「午前1時半ごろ、空爆があったと警備員から連絡があった。5発の攻撃で、当時事務所にいた社員は衝撃で床に倒されてしまった」

シゾフさんは、ロシア軍が軍需工場を攻撃したのは、黒海艦隊旗艦の巡洋艦モスクワがウクライナ軍の「ネプチューン」ミサイルで撃沈されたことへの報復だろうと話した。

ヴィザルの工場は、「ネプチューン」ミサイルに似た対艦ミサイルを製造していた。

ウクライナは、巡洋艦モスクワを「ネプチューン」ミサイルで攻撃したと主張している。ロシア側は、艦内で火災が発生し弾薬が爆発したため、セヴァストポリ港へ曳航(えいこう)中にバランスを失い沈没したと説明している。

米政府高官はこれについてロイター通信に、巡洋艦モスクワはウクライナのミサイル2発に直撃されたと米政府は認識していると話した。

巡洋艦モスクワが沈没した原因について、まだ第三者による検証は行われていない。

キーウ周辺で民間人900人の遺体発見=警察

ロシア軍が後にした首都キーウ近郊では、民間人の遺体発見が続いている。キーウ州警察のアンドリイ・ネビトフ本部長は15日の記者会見で、「残念ながら民間人900人の遺体を発見し、法医学の専門チームに引き渡した」と述べた。

ネビトフ本部長によると、多数の民間人の遺体が路上などで発見されたブチャでは、350人以上の遺体を回収した。

ロシア軍の激しい攻撃を受けたボロジャンカやマカロフでは、がれきの撤去が続いており、「その下からさらに複数の遺体が見つかるはずだ」と本部長は述べた。

本部長はさらに、発見されている遺体は民間人のもので、軍の活動とは何も関係がなかったと強調した。

BBCは本部長の主張を独自に検証できていない。しかし、BBCの取材チームはこれまでに、キーウ郊外で民間人の服装をした複数の人の遺体を直接確認している。ブチャで多数の遺体を回収し、身元を特定しようとする当局の大規模な取り組みも取材している。

避難者のバスをロシア軍が攻撃か

ロシア軍によるウクライナ市民の殺害については、東部から避難しようとする民間人を乗せたバス2台が攻撃されたという情報も出ている。ウクライナ議会の人権オンブズマン、リュドミラ・デニソワ氏によると、戦闘が激化しているルハンスク地方で、スタロビルシク村からドニプロへ避難する住民のバスが攻撃され、複数が死傷したという。

これとは別に、北東部ハルキウ州のボロワ村から避難しようとする住民を乗せたバスにロシア軍が発砲し、少なくとも7人が死亡、27人が負傷したという情報もある。

BBCはこうした情報を独自に検証できていない。

ロシアで沈没艦を追悼

沈没した巡洋艦モスクワの母港となっている、ロシアが併合しているクリミアのセヴァストポリでは15日、追悼式が行われた。

セルゲイ・ゴルバチョフ大佐(予備役)は式典で、巡洋艦モスクワは「全員にとって、我々の力、我々の希望、1990年代の艦隊の復活を象徴するものだった」と述べた。

司祭は、巡洋艦モスクワを失ったことは「そこで20年以上勤務した数万人にとっての悲劇だ」とした。

ソ連時代に建造された同巡洋艦は、ウクライナ沖の海軍活動の調整役として重要な役割を果たしていた。

ロシア政府は、乗務員の被害について人数などを公表していない。国防省は、近くのロシア艦が乗務員を救助したと説明している。

当時の乗員数も公表されていないが、最大510人だった可能性がある。

セヴァストポリのミハイル・ラズフォザエフ知事は、「乗務員は退避し、救助された。それが何より大事だ。ここセヴァストポリで英雄たちの帰還を待っている」とあいさつした。

現在キーウに住む元ロシア国会議員、イリヤ・ポノマリョフ氏は、乗務員510人のうち助かったのは58人のみだと話すが、その情報源は明らかになっていない。

ウクライナの報道では、巡洋艦モスクワから出火し爆発が起きた際、アントン・クプリン艦長も死亡したという未確認情報が伝えられている。

セヴァストポリでは先月、3月20日にウクライナ南東部マリウポリで死亡した、黒海艦隊のアンドレイ・パリイ副司令官の追悼式も行われた。

(英語記事 Russian warship Moskva has sunk - defence ministry

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61125257

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