
ナタリー・シャーマン、ビジネス担当記者、ニューヨーク
米動画配信大手ネットフリックスの会員数が10年以上ぶりに減少に転じた。同社が19日、発表した。
ネットフリックスによると、今年1~3月期に会員が20万人減った。アメリカやイギリスなど主要市場で料金を値上げしていた。また、ロシアからは撤退している。
同社は、今後さらに会員が減るとみている。そのため、新規会員の獲得を進めると同時に、アカウントの共有に断固たる措置を取り始めるとしている。
パンデミックで急増したが
ネットフリックスは株主への書簡で、新型コロナウイルスのパンデミック期間中の契約者の急増が「実像を見えにくくした」と説明した。
また、4~7月期に会員がさらに200万人減る見込みだと述べた。
同社は四半期決算の発表に合わせ、「業績と予想が示す通り、収益の伸びはかなり鈍っている」と説明。
「多数の家庭用アカウントの共有を含めると、当社の世帯普及率は比較的高く、競争もあることが、収益の成長にとって逆風となっている」と指摘した。
ネットフリックスが四半期で会員を減らしたのは2011年10月以来で初めて。それでも世界全体でなお2億2000万人以上の会員数を維持している。
ロシアから撤退
ネットフリックスは、ウクライナを侵攻したロシアから撤退。これにより、会員70万人を失ったという。
一方、アメリカとカナダでは料金値上げの後、計60万人が同社のサービスを利用しなくなった。
同社は、こうした動きは「予想どおり」だと説明。キャンセルはあっても、収益は増えるだろうと述べた。
同社の今年1~3月期の売上高は、前年同期比9.8%増の78億ドル(約1兆円)超だった。過去の四半期と比べて伸び率は鈍化している。
純利益は前年同期比で6%以上落ち、約16億ドルだった。ただし、この損失の一部は、日本やインドなどの契約増によって補われた。
アカウント共有対策と広告
ネットフリックスは成長をにらみ、国際市場に力点を置くとともに、1億人に上るとみている家庭用アカウント共有者を収益につなげる方法を探っている。こうした共有者は、アメリカとカナダで3000万人以上いるとされる。
家族や友人とアカウントを共有している人たちについて、広告を出したり、利益を得たりしたい考えだ。
「ずっとネットフリックスの会員だった人は、私が広告の複雑さに反対し、定額制のシンプルさを強く支持していることを知っている」と、リード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)は述べた。「ただ、私は定額制を強く支持するが、消費者の選択のほうをもっと支持する」
同CEOはまた、広告付きサービスが米動画配信のディズニーやHBOで機能していることは「かなり明らかだ」とした。
だがアナリストらは、コスト増が家計の負担になり始めているとしている。
イギリスでは、1~3月期に150万以上の世帯がストリーミング配信契約をキャンセルした。そのうち38%が節約を理由にしていた。市場調査会社カンターによると、この比率は過去最大だという。
激しい競争
ネットフリックスは厳しい競争に直面している。アマゾンやアップルから、ディズニーのような歴史あるメディア企業までもが、オンラインストリーミング配信に巨額をつぎ込んでいる。
調査会社PPフォーサイトのアナリスト、パオロ・ペスカトール氏は、会員維持と収益増加のバランスを取ろうとしているネットフリックスにとって、会員の減少は「リアリティー・チェック」(事実確認)になっているとした。
「ネットフリックなどのサービスはロックダウンで鍵を握る存在となったが、利用者たちは今、習慣の変化に基づく購買行動について再考している」
同氏はまた、北米は特に、「あまりに少ない金を追いかける、あまりに多くのサービスであふれている」と述べた。
今回のニュースを受け、ネットフリックスの株価はニューヨークの時間外取引で20%以上急落。時価評価額から300億ドル以上が失われた。
投資家の懸念は、ディズニーなどのエンターテインメント企業の株価にも影響した。