BBC News

2022年4月21日

»著者プロフィール

フランス大統領選挙の決選投票が4日後に迫った20日、現職のエマニュエル・マクロン大統領と、極右「国民連合」党首のマリーヌ・ル・ペン氏によるテレビ討論が開かれ、議論を闘わせた。

最新の世論調査では、中道のマクロン氏がル・ペン氏をリードしている。ただ、何百万人もの有権者が、まだ誰に投票するか決めていない。

2時間45分にわたったこの日の討論では、生活費の上昇、ロシア、気候変動、移民などの問題で、両者が意見をぶつけた。

主な議論を以下に紹介する。

生活費:ル・ペン氏は最優先課題だとし、「エネルギーの付加価値税を永続的に削減する。税金も減らす。30代以下は所得税をなくす」と語った。また、マクロン氏が年金水準を実質的に低下させたと非難した。

これに対しマクロン氏は、価格の上限設定が解決法だと主張。「税率の引き下げより2倍の効果がある」と述べた。

ロシアのウクライナ侵攻:マクロン氏はロシアが「致命的な道を進んでいる」と批判。ウクライナに兵器を提供し難民を受け入れることが、フランスと欧州の役割だとした。

ロシア政府との関係の近さや、ロシアの銀行から融資を受けていることが批判されているル・ペン氏は、ウクライナへの兵器供与はフランスを「共戦国」にする恐れがあると警告。ただ、ウクライナ支援と難民受け入れの政策は支持すると述べた。

マクロン氏はル・ペン氏について、2014年のロシアによるクリミア併合の際に、それを承認した最初の政治家の1人だったと責めた。そして、「あなたはロシアと話をする時、あなたの銀行と話をしている」とした。

ル・ペン氏は、フランスの銀行が彼女の政党に融資をしてくれなかったから、ロシアの銀行の融資を受けたと説明。これに対しマクロン氏は、フランス人はロシアに資金を求めないと反論した。

欧州連合(EU):ル・ペン氏は、EU離脱の方針を転換し、とどまって改革を求めるとしている。討論では、フランスはEUにおいて国益を守れていないとし、「フランスの生産者や農家に損害を与える」通商交渉はやめると主張した。

マクロン氏は、ル・ペン氏の欧州に対する考えはEUを終わらせるものだと発言。「あなたはうそを売りつけている」と述べた。

定年:これも大きな争点となっている。マクロン氏は年金を受け取り始める年齢を、62歳から65歳に引き上げる必要があると主張している。

ル・ペン氏は62歳のままにすべきだと訴え、マクロン氏の案は「まったく容認できない」とした。

気候変動:再生可能エネルギーをめぐっては、両候補は正反対の立場にある。唯一の一致点は、原子力発電所を増設するということだ。

マクロン氏はル・ペン氏に向かい、「あなたが気候変動に懐疑的なのは明らかだ」と発言。ル・ペン氏はマクロン氏を、「気候偽善者」だと言い返した。

ル・ペン氏は、遠く離れた場所から物品を輸入する行為が気候変動の原因であり、地元での生産が地球温暖化対策につながると訴えた。また、風力発電ほどひどいものはないと主張した。

マクロン氏は、化石燃料ではなく原子力に依存するル・ペン氏の政策は「うまくいかない」と反論。再生可能エネルギーも利用する必要があり、「風力発電は雇用を生み出す」と述べた。

移民とイスラム:ル・ペン氏は、フランスに誰がとどまり、誰が去るべきかを国民投票で決めると約束。「無秩序で大規模な移民」が不安感につながっていると、マクロン氏の移民政策を非難した。

さらに、彼女が主要政策として掲げる、公共の場でのスカーフの着用禁止について言及。女性を「イスラム教主義者の圧力」から解放する必要があると訴えた。

マクロン氏は、イスラム教とイスラム教主義の混同は間違いだと反論。ル・ペン氏の政策は「内戦」につながり、フランスの価値観を裏切りるものだとした。


前回より接戦

マクロン氏は終始、攻撃的な姿勢を示した。繰り返し相手の発言を遮るなど、現職ではなく挑戦者のように見える場面もあった。

2017年の前回大統領選のテレビ討論は、ル・ペン氏が動揺した様子を見せ、準備不足だったこともあり、同氏にとって散々な結果に終わった。それが同氏の大敗につながったとされる。

しかし今回は接戦となっており、この日の討論におけるル・ペン氏の力強い議論は、浮動票を得ることにつながった可能性がある。

大統領選の1回目の投票の得票率は、マクロン氏が27.85%、ル・ペン氏が23.15%だった。

世論調査における両者の支持率は、1回目の投票のあと、わずかに広がっている。今も大きく上下しているが、マクロン氏の得票率は53~57%になるとの見通しを示している。


<分析> ヒュー・スコフィールド・パリ特派員

マクロン氏にとって難しかったのは、2017年と違って今回は、在任中の記録を弁護する立場にあるということだった。

2期目の計画を問われると、これまでの継続という、刺激のない選択肢を示すしかなかった。一方のル・ペン氏は、マクロン政権の5年間で避けられなかった失敗を攻撃することで、自らにとっての好機にすることができた。

しかしマクロン氏は、決して危うさを感じさせなかった。ル・ペン氏に対する、ロシアからの融資、欧州、イスラム教のスカーフをめぐる攻撃は、どれも的を射ていた。

経済については、燃料価格の上限設定やボーナスの非課税など、フランス国民をインフレから守るためにすでに実施している自らの案の方が、ル・ペン氏の案より公平で効果的だと力強く訴えた。

マクロン氏はおおむね、尊大で官僚的過ぎるとの印象を与えずに済んだ。一方、相手に対して強く出たいが、それを我慢していると思わせる場面が多かった。


(英語記事 French rivals for presidency clash in TV debate

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61171739

関連記事

新着記事

»もっと見る