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2022年4月25日

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フランス大統領選の決選投票が24日に行われ、中道派の現職エマニュエル・マクロン氏(44)が再選された。フランス内務省によると、マクロン氏が得票率58.55%、極右「国民連合」の下院議員マリーヌ・ルペン氏(53)が同41.45%。フランスで大統領が再選されるのは20年ぶり。マクロン氏は「私は全員の大統領だ」と勝利を宣言し、ル・ペン氏は敗北を認めた上で、党として6月の下院選で「大いに戦う」つもりだと闘志を見せた。

「全員の大統領」

欧州連合(EU)の連携や北大西洋条約機構(NATO)の強化、欧米協調を重視する中道派のマクロン氏は同日夕、パリのエッフェル塔前広場で支持者を前に勝利演説を行った。

マクロン氏は、自分への投票の多くが「私の考えを支持するためでなく、ただひたすら極右に対するバリケードを築くため」のものだったと承知していると述べ、投票を棄権した有権者に応えなくてはならないと話した。

続けて、落胆しているル・ペン支持者を思っていると話すと、集まったマクロン支持者たちがブーイングを始めたため、マクロン氏はこれをたしなめ、「今から私はひとつの陣営の候補ではなく、全員の大統領だ」と強調した。

「極右に投票した人たちに申し上げる。皆さんの心配事に対応するのが、私と私のチームの責任です」とマクロン氏は続けた。さらに「今より公平な社会、男女の平等のために働く」と述べ、「この国はあまりに分断されているので、私たちはお互いに敬意を示さなくてはならない(中略)誰も置き去りにはしない」と約束した。

マクロン氏は2期目の政権運営については、「この新時代は、過去5年間のやり方を継続したりしない」と心機一転の方針を示した。

さらに「ウクライナの戦争を通じて、私たちがいま悲劇の時代を生きているのが分かる」と述べた上で、再びフランス国民に仕えられることを誇りに思うと結んだ。

投票率は72%弱で、大統領選の決選投票としては1969年以来の低さとなった。多数の白票や無効票も目立った。マクロン氏はこれについて、「選択しないという有権者の選択」に自分の政府は応えていかなくてはならないと述べた。

ル・ペン氏は敗北認める 下院選に意欲

EUやアメリカ、NATOとは距離を置き、ロシアとはかねて近い関係を維持してきた極右ル・ペン氏は、敗北を認めた上で、自分は決してフランスの人たちを諦めたりしないと演説した。

ル・ペン氏は地方やフランス領で自分に投票した有権者に感謝し、「忘れられがちなこのフランスも、私たちは忘れない」と約束。6月に予定される下院選では「国民連合」が「大々的な戦い」を展開すると述べた。

落胆するル・ペン氏の支持者

ル・ペン氏を支持してきた男性は、マクロン氏が10ポイント以上の差をつけて勝ったことに落胆しているとして、「(マクロン氏が)何もかもだめにしてしまう」と肩を落とした。

引退前は新聞の紙面レイアウト担当だったというフランシス・プレトさんは、国内で生活に苦しむ人があまりに大勢いるので、ル・ペン氏が勝つはずだと確信していたという。今より公平なフランスを作るには「愛国者の連合」、つまり右派支持者の連合を作るしかないと思うと言いつつ、それは難しいだろうとプレトさんは話した。

マクロン氏の勝利は「でもしか」=メランション氏

今月10日の一次投票で3位になった左派候補のジャン=リュック・メランション氏は、マクロン大統領について(1958年以降の)フランス第5共和政で「選出された最悪の大統領」として、「棄権と白票と無効票の大海を泳いでいる」だけだと酷評した。

「現代フランスの大統領で、マクロンほど僅差でぎりぎり勝った者はいない。選択肢がゆがめられた選挙で、ほかに誰もいないという『でもしか』な状態で、危機感の中で選ばれた」のだと、メランション氏は述べた上で、自分は首相就任を目指すとあらためて意欲を示した。

欧州首脳はマクロン氏再選を歓迎

マクロン氏を支持するようフランス国民に呼びかけていたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、マクロン氏を「真の友人」と呼び、勝利を喜んだ。強力で団結した欧州を楽しみにしているとも述べた。

シャルル・ミシェル欧州理事会議長も選挙結果を歓迎し、マクロン氏に祝意を送った。ミシェル議長はツイッターで、欧州大陸が揺れる動乱のこの時期に、フランスがEUを強く支持し続けることが必要だと書いた。

ボリス・ジョンソン英首相はツイッターで、マクロン氏の再選を祝い、「フランスは私たちにとって最も近く重要な同盟国の一つです。両国と世界にとってとりわけ重要な問題について、引き続き連携していくことを期待しています」と書いた。

https://twitter.com/BorisJohnson/status/1518298495773519873

オラフ・ショルツ独首相も、マクロン氏の再選と協力関係の継続を歓迎し、フランスの有権者がEU支持を表明したのだと述べた。ショルツ首相をはじめ複数の欧州諸国首脳は今回の決選投票に先駆けて、極右ル・ペン氏を拒否するようフランス国民に呼びかけていた。


<解説> 分断された国で明確な勝利――ヒュー・スコーフィールドBBCパリ特派員

これはマクロン大統領にとって明確な勝利だ。ル・ペン氏につけた得票率の差にあいまいなところは何もなく、おかげで自信をもって政権2期目に臨むことができる。

結果として、世論調査が示した極右の脅威は、過大評価されていたようだ。それでも、国家主義陣営がこれほど得票したのは今回が初めてだ。棄権や無効票の多さを合わせれば、今回の選挙は国民の分断と不満を浮き彫りにした。


<解説> 中道派のマクロン氏が連帯のメッセージ――アンリ・アスティエBBC記者

フランスの大統領は国家元首であって、政府首班ではない。そのため、当選した大統領が選挙直後に連帯のメッセージを発するのは珍しいことではない。

しかし、分断と対立があまりに先鋭化している今のフランスにあって、マクロン氏は「全員の大統領」になると強く誓う必要性を感じていた。

本人が言うように多くの有権者は「私の考えを支持するからではなく、極右を阻止するため」、自分に投票したのだと、マクロン氏は重々承知している。

マクロン氏がこれから率いていく国は、一次投票であらわになったように、投票した55%が彼の親欧ビジョンを共有しない極右あるいは極左の候補を支持した。そして今回の決選投票でも、40%以上が極右候補に投票した。

今後は、政府を率いる首相を選ぶ6月の下院選で再び、国の分断が露呈されることだろう。極右陣営も極左陣営も共に、国内主流派(エスタブリッシュメント)に対する社会の根強い反発を、自陣に取り込もうとするはずだ。

国民の尊敬と憎悪を同じくらい一身に集める中道派にとって、これからの道は長く厳しいものになると、マクロン大統領は承知しているだろう。

(英語記事 French election live

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61206555

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