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2022年4月25日

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キャロライン・デイヴィース(オデーサ)

ウクライナ南部の港湾都市オデーサに住むユーリイ・グローダンさんは23日、家族をアパートに残して買い物に行こうとした時に、爆発があったというニュースを知った

グローダンさんは燃え上がるアパートを前にして、敷地の入り口にいた警察に、中に入れてくれるよう叫んだ。自宅までたどり着くと、そこにはロシア軍のミサイルによって殺された妻と義母の遺体があった。ミサイルは、集合住宅の上層階を引き裂いていた。

生後3カ月のキラちゃんの遺体は、その後に見つかった。グローダンさんは24日に自室に戻った時に、その姿を始めて見た。

この一家3世代の死に、ウクライナ国民は激怒し、その無残さに強く反発している。ウクライナの人たちはすでに2カ月続く戦争で、数々の悲惨な事態を目にしてきたのだが、それでもなお、この一家の悲劇は国中を揺り動かしている。

オデーサへの攻撃をめぐる記者会見でウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、キラちゃん殺害について語るときに明らかに動揺していた。

ゼレンスキー氏は国民への演説で「その子がいったいどうやってロシアを脅かしたというのか? 子供を殺すことがロシア連邦の新しい国家的なアイデアになっているようだ」と述べ、この攻撃を計画し、実行した当事者たちは「ろくでもない言語道断な」人間だと強い言葉で非難した。

このミサイル攻撃では、ほかに5人が亡くなっている。

グローダンさんは25日、何か見つけられないかとがれきとなったアパートの中にいた。写真のアルバム、妻が集めていた砂糖の小袋、手書きのメモ……ベビーカーが粉々になっているのも発見した。

「アパート内のものをそのまま残しておけば、ごみとして捨てられてしまいます」と、グローダンさんはBBCに語った。

「思い出として残しておきたいんです」

グローダンさんと妻のワレリアさんは、9年の付き合いだった。

「何にでも楽しみを見つける人でした。オデーサは妻のお気に入りの街でした。広報の仕事をしていて、たくさんの人と話をして、理解していた。彼女のライターとしての才能を、僕は尊敬していました」

「良き母であり、友人であり、すべてが素晴らしかった。ワレリアのような人を見つけることはもうできません。完璧な人でした。そういう人は人生に一度だけ、神様から与えられるものです」

キラちゃんは戦争が始まる1カ月前の、今年1月末に生まれたばかりだった。

それから数週間後、ワレリアさんはインスタグラムに第1子キラちゃんの写真を載せ、「新しいレベルの幸せ」を感じて暮らしているとつづっていた。

「私たちの赤ちゃんが生後1カ月を迎えました。人生で最高の40週間でした」

グローダンさんは、妻から送られてきたキラちゃんの写真を私に見せてくれた。

「キラが生まれて、私たちは本当に幸せでした。出産時には病院にいました。妻と娘がもういないと認めるのは本当につらい。私の世界のすべてが昨日、ロシアのミサイルに破壊されてしまったんです」

その上で、自分たち家族に何が起きたかを、世界に知ってほしいと話した。

「ここで起きたことは、私の家族の悲しみであり、この町やウクライナの悲しみであり、市民社会全体の悲しみです。この話が戦争を止める助けになることを願っています」

別れ際、グローダンさんは私たちにかばんに入った数枚の紙おむつを渡してきた。アパートから回収できたもののひとつだという。

「持って行って、慈善団体に寄付してください。私にはもう必要のないものなので」

(英語記事 'My world was destroyed by a Russian missile'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61212677

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