BBC News

2022年4月26日

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大富豪イーロン・マスク氏は、買収総額440億ドル(約5.6兆円)で米ツイッターを買収することになった。投稿内容の制限を減らすと約束するマスク氏が、「デジタル版・町の広場」にどう影響するのか、疑問や懸念の声が上がっている。

買収合意成立が発表されると、「言論の自由絶対主義者」を自称するマスク氏が手にする権限について、複数の人権団体が懸念を表明した。投稿内容へのモデレーション(監督・管理)がなくなれば、ヘイトスピーチ(憎悪表現)が増えるのではないかという心配も出ている。

マスク氏はかねて、ツイッターによる投稿内容の制限を声高に批判し、ツイッターは真の言論の自由を可能にするプラットフォームにならなくてはならないと主張してきた。買収合意の発表でも、「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、ツイッターは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町の広場だ」と表明した。

国際人権団体アムネスティー・インターナショナルは、「有害なツイッター(Toxic Twitter)」などとツイートを連投し、「利用者を守るために設計された利用規約や仕組みの徹底を損なう方向へ、ツイッターが進むのではないかと懸念している」と書いた。

https://twitter.com/amnesty/status/1518689442575364098?s=20&t=QMDg573XnzLeUGu0rQ75Pw


「利用者に対する暴力的で加害的な言論を、意図的に見ないふりをするようなツイッターは何より困る。とりわけ、女性やノンバイナリー(性自認が男性だけでも女性だけでもない人)を含め、過度に影響を受ける人たちへのそうした言論は」と、アムネスティー・インターナショナルは問題視した。

BBCはツイッターにこうした懸念について取材したが、まだ回答は得られていない。

トランプ氏は戻るのか

マスク氏が所有するツイッターでは、たとえばドナルド・トランプ前米大統領をはじめ、これまでアカウントを凍結・削除された人たちの復帰が許されるのだろうかという疑問も、複数の利用者から出ている。

トランプ氏は長年ツイッターを精力的に利用していたが、2021年1月の米議会襲撃事件の後、ツイッターは「暴力行為をさらに扇動する恐れがある」としてトランプ氏の個人アカウントを永久凍結した。

これについてマスク氏は当時、「西海岸のハイテク企業が、言論の自由の事実上の裁定者になったことを、ものすごく不満に思う人が大勢いるだろう」と反応していた。

しかし、たとえツイッターが凍結を解除したとしても、トランプ氏はツイッターに戻るつもりはない、自分が持つプラットフォーム「トルース・ソーシャル」を使うという姿勢だ。

「ツイッターにはいかない。トルースに残る」と、トランプ氏は米FOXニュースに話した。

トランプ氏はさらに、マスク氏を「良い男」と呼び、ツイッターを「改善」するはずだと述べた。

香港天風国際証券のアナリスト、ミンチ・クオ氏はBBCに対して、もし2024年米大統領選にトランプ氏が出馬するなら、ツイッターに戻るかもしれないと話した。

「ツイッターがアカウントを復活させるなら、トランプ氏にとっては依然として、より良い発言の場所だ。ツイッター以上に影響力のあるプラットフォームを次の大統領選の前までに作るのは、大変だ」

利用者は離れるのか

合意成立発表の数時間前、マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイートしていた

しかし、ツイッターを使うのをやめると言う人もいるし、すでにアカウントを閉じた人たちもいる。

英俳優ジャミーラ・ジャミル氏は、100万人のフォロワーに対して、「これを自分の最後のツイートにしたい」として、ツイッターが「今まで以上に無法で、憎悪だらけの、人種差別と偏見にあふれた、女性嫌悪の空間」になるだろうと書いた。

https://twitter.com/jameelajamil/status/1518676806261477386?s=20&t=nIJE2YFI01XVH_zKb-Q2kg


一方で、45万人以上のフォロワーがいる米メリーランド大学の研究者キャロライン・オール・ブエノ博士は、まだしばらくは残るつもりだとしている。

「イーロン・マスク率いるツイッターがどういう場所になるのか、まだまったく分からないので」とブエノ氏は書き、さらに「分かっていることがある。まともな人が全員いなくなってしまうと、まともな人たちが残るよりも早く、ここはひどい場所になってしまう」と指摘した。

https://twitter.com/RVAwonk/status/1518671764024348679?s=20&t=LoCVGTwPdmlOZW2_cBdPRw


米投資会社ウエドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイヴスさんはBBCに対して、ほとんどの利用者は「様子見」をするだろうと話した。

「ツイッターにとって今大事なのは、新規ユーザーを勧誘すると同時に、離脱者をくいとめることだ」

ドーシー氏はツイート連投

ツイッター取締役会の11人は全会一致で、マスク氏の買収提案を受け入れた。

ツイッターの共同創設者で取締役のジャック・ドーシー前最高経営責任者(CEO)は、「原理原則的には、誰か1人がツイッターを所有するべきでも、経営すべきでもない」と書く一方で、ツイッターが引き続き「世間の会話のために機能する」のはうれしいことだと歓迎した。

ドーシー氏は「自分はツイッターを愛している。世界的意識のようなものに一番近いのがツイッターだ」とツイート。「自分にとって大事なのは、(ツイッターの)概念とサービスだけで、その両方を守るためなら何でもする。企業としてのツイッターは常に、自分にとって唯一の問題で最大の後悔だった。ウォール街と広告モデルに所有されてきた。ウォール街から取り戻すことが、正しい第一歩だ」と書いた

ドーシー氏はさらに、ツイッターは「企業ではなく、プロトコルのレベルで公共財になろうとしてきたが、企業としての問題を解決するには、イーロンこそ僕が信用する解だ。意識の光を広げようとする彼のミッションを、僕は信用している」と書いたまた、「『最大限に信用され、幅広く包摂(ほうせつ)』するプラットフォームを作るというイーロンの目標は正しい」として、「どうにもならない状況からこの会社を脱出させてくれた」マスク氏と、現CEOのパラグ・アグラワル氏に感謝した上で、「これが正しい道だ……心の底からそう信じている」と期待を示した。

一方、アグラワルCEOは25日、社員に対してツイッターの未来は不透明だと発言。ロイター通信によると、「合意が成立すれば、このプラットフォームがどの方向へ向かうのかわからない」と述べていた。

政治家の反応

米政府はこの件についてコメントを控えているものの、ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は記者団に、「ツイッターを誰が所有し経営するにしても、大統領は以前から、大きいソーシャルメディア・プラットフォームが持つ力を気にしてきた」と述べた。

米与党・民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、この買収は「この国の民主主義にとって危険」だとして、「巨大テクノロジー企業の社会的責任を問うための強力なルール」や、IT企業などで巨万の富を得る大富豪たちへの富裕税の実現が必要だと強調した。

他方、米野党・共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、「言論の自由にとって喜ばしい日」だと、マスク氏によるツイッター買収を歓迎した。

(英語記事 Elon Musk buys Twitter: How will the platform change?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61227037

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