
ロシアの侵攻が続くウクライナで人道支援活動を行っていたイギリス人ボランティア2人が、ロシア軍に拘束されたとみられることが明らかになった。英NGO団体が29日に発表した。
英NGO団体「プレシディウム・ネットワーク」によると、現地で活動していたポール・ユーリー氏とディラン・ヒーリー氏が25日、ウクライナ南部の検問所で拘束された。
2人はウクライナで独自に活動していたとみられるが、「プレシディウム・ネットワーク」と連絡を取り合っていた。
ザポリッジャ南部の村から、ひとつの家族を救出しようとしていた際に、拘束されたとみられる。
団体創設者のドミニク・バーン氏はBBCに対し、2人がウクライナ側の最後の検問所を通過してロシアの支配地域に入るため、6時間におよぶ交渉が必要だったと話した。
拘束された2人に代わり、「英政府や国際社会、そして現地から必要な支援が得られるよう」訴えていると、バーン氏は述べた。
また、「彼らがどのように過ごしているのか、どの程度安全なのか明らかに」してほしい、彼らが「適切に扱われている」のかを知りたいとした。
団体によると、チェシャー州ウォリントン出身のユーリー氏はアフガニスタンで8年間、民間契約者として働いていたことがある。ウクライナに渡航する前はランカシャー州レイランドで暮らしていた。調理師のヒーリー氏は、ケンブリッジシャー州ハンティントン出身。拘束時に車を運転していたという。
英外務省は緊急に情報収集を進めているとされる。
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「どうか息子を返して」
「プレシディウム・ネットワーク」が提供した声明の中で、ユーリー氏の母リンダさんは、1型糖尿病でインスリン注射が必要な息子のことを「非常に心配している」と語った。
リンダさんはランカシャー州プレストン近くの自宅でBBCの取材に応じ、食べることも眠ることもできないと話した。
「息子に会いたい。こんな状況には耐えられない」
「どうか息子を返してください。彼は私の世話をしてくれる、家族思いの子なんです」
母親によると、40代のユーリーさんはイギリスを離れる前、自分が何もしないまま「人が死んでいくのをただ見ていられない」と話していたという。
「お願いだから息子を私のものとへ、孫たちのもとへ、飼い犬のもとへ帰してほしい」
ロシア、「投降した英国人男性」の動画公開
ロシアはこうした中、ロシア部隊に投降したとする男性1人の動画を公開した。
迷彩服姿の男性は、英南西部プリマス出身のアンドリュー・ヒルと名乗り、子どもたちとパートナーがいると話している。
映像では、男性が片方の腕にギプスをしているのが分かる。男性は安全が確保されているのか、病院に連れて行ってもらえないかと求めている。
BBCはこの動画を検証できていない。男性が強要されて話しているのかどうかはわかっていない。
英国人の拘束など相次ぐ
英政府は28日、ウクライナでイギリス人1人が死亡し、もう1人が行方不明になっていると認めた。
ウクライナの情報筋がBBCに語ったところによると、死亡したのはスコット・シブリー氏。ウクライナ軍のために戦闘に加わっていたとみられる。
また、今月初めにはマリウポリでの戦闘中にイギリス人男性2人が拘束された。ロシア国営テレビに映し出されたエイデン・アスリン氏(28)とショーン・ピナー氏(48)の顔にはあざがあった。
イギリスのウクライナ支援
リズ・トラス英外相は、ロシアによる残虐行為疑惑を調査するウクライナを支援するため、紛争関連の性暴力の専門家を含む、戦争犯罪の専門家を派遣すると発表した。
イギリスは今夏、東欧全域で実施される軍事演習に、英陸軍部隊8000人と戦車数十台を投入する。英国防省は、これは長年計画してきた演習の一環で、ロシアのウクライナ侵攻開始後にその規模を拡大したとしている。