BBC News

2022年4月30日

»著者プロフィール

ロシアの軍事侵攻が続くウクライナで、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は29日、西側諸国の協力に感謝した。さらに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談する用意はあるが、占領地域でのロシア軍の残酷行為のため、協議は破綻(はたん)する可能性が高いことも認めた。ウクライナ政府はロシア軍の人的被害が甚大なものになったと発表。米国防総省関係者はウクライナ東部でのロシア軍の作戦に遅れが見られるとの見方を示した。

ゼレンスキー大統領は29日、首都キーウに戻ったイギリス大使をはじめ、首都で大使館機能を維持している27カ国に対して、「ウクライナ支援のきわめて重要な行動」だと感謝した。「こうした行動は、自由世界からの強力な防衛・金融・政治支援と合わせて、戦争を終わらせなくてはならない状況がますますロシアに明らかになっている。侵略者の敗北は変えられない」と、大統領は述べた。

イギリスのメリンダ・シモンズ駐ウクライナ大使は29日、「キーウに戻れて本当に良かった」とツイートしていた。在キーウのイギリス大使館はロシアの軍事侵攻のため西部リヴィウに移動し、シモンズ大使は一時国外に退避していたが、ボリス・ジョンソン英首相は22日、キーウの大使館を近く再開すると発表していた。

ゼレンスキー大統領はさらに、米連邦議会がウクライナへの兵器貸与を容易にする「レンドリース(武器貸与)法案」を賛成多数で可決したことに感謝した。法案はすでに上院も通過しており、バイデン大統領の署名を経て成立する。法案は、第2次世界大戦中にアメリカからイギリスなど連合軍への軍事支援を促進した法律の名前にちなんだもの。

ゼレンスキー氏は、2022年武器貸与法が「ロシアとの戦いで大いに役立つ」として、「第2次世界大戦でのナチスとの戦いでも大いに役に立った」と述べた。

「我々に戦争を仕掛けたのはナチスの思想的な後継者だ。武器貸与法は、ウクライナと自由世界全体がその者たちを倒す助けになると確信している」と、ゼレンスキー氏は歓迎した。

これに先立ちゼレンスキー氏はポーランドのメディアに対して、キーウ近郊ブチャをはじめ各地でロシア軍が残虐行為を繰り返したものの、それでもロシアのプーチン大統領と会談する用意はあると述べた。

ゼレンスキー氏は、ロシアでは「1人の人間が全てを決める」ため、プーチン氏と会いたいのだと話した。ただし、占領地域でのロシア軍の行動のため、協議は破綻する可能性が高いことも認めた。

「ブチャや(南東部)マリウポリを経験した今となっては、(ウクライナ)国民はみんな相手を殺したがっている。そういう状態での話し合いは難しい」とゼレンスキー氏は認めた上で、自分自身も気持ちは国民と一緒だが、「わずかにでもチャンスがあるなら、(プーチン氏と)話し合うべきだ」と述べた。

ウクライナ政府は28日、少なくとも民間人400人が殺害されたブチャにおいて戦争犯罪を犯したとされるロシア兵10人について、顔写真と共に追跡捜査の開始を発表した。

ブチャは2月末から1カ月以上、ロシア軍の第64独立自動車化狙撃旅団に占領されていた。その間に市内では多数の民間人が殺害されたもよう。ロシア側は虐殺行為を一切否定しており、プーチン大統領は4月18日、この旅団の「大勢が英雄的行為と武勇、忍耐力と勇気を示した」とたたえ、「親衛隊」の名誉称号を付与した。

11月のG20首脳会議にロシアは

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は29日、11月にバリ島で開催する主要20カ国(G20)首脳会議について、電話会談したロシアのプーチン大統領が出席の意向を示したと発表した。ジョコ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領もG20に招待している。

これについて米政府のジェン・サキ大統領報道官は、ジョー・バイデン大統領がすでにG20へのプーチン氏の出席に「公に反対」してきた一方、「ウクライナの出席は歓迎している」と話した。

米国務省のジャリナ・ポーター報道官は、国際交渉の場でロシアと「今まで通りに」やりとりすることはできないと述べた。11月のG20サミットにバイデン大統領をはじめ米政府代表団が参加するかどうかは、言明しなかった。

国防総省のジョン・カービー報道官は同日の記者会見で、ロシア軍の戦い方について記者団の質問に答えている最中、こみあげる感情で声を詰まらせたかのように見えた。

「あれほどの暴力と残酷さを(プーチン氏が)示すとは、十分に予想していなかったと思う」と、カービー報道官は述べた。さらに、ロシア軍はロシア人とウクライナ人をナチスから解放して守っているのだという、プーチン氏の言い分について、「ウクライナ国内で罪のない人たちに実際に何をやっているのか、後頭部を撃ち抜き、後ろ手に縛り、妊婦を殺害し、病院を爆撃している、その行為に照らすと、(プーチン氏の主張は)まったく実態に見合わない」と批判した。

国連総長訪問中の首都を爆撃、ロシア認める

ロシア国防省は29日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が訪問中のキーウに対して爆撃を実施したことを認めた。「高精度長距離空中兵器」を使い、軍事工場を標的にしたとしている。

28日の攻撃では、キーウ中心部の集合住宅も破壊され、住民のヴィラ・ヒリッチ記者が死亡した。

ロシア側は集合住宅への攻撃は認めていない。

ロケット弾2発が着弾し、3人が負傷して病院に運ばれた。

キーウ市のヴィタリ・クリチコ市長は、国連事務総長が訪問中の首都を爆撃したことは、プーチン氏が罵倒を意味する中指を立てているのと同じだと批判した。

モスクワで取材するBBCのジェニー・ヒル記者も、この爆撃を通じてプーチン氏は、自分が国際社会や国際機関を見下しているし、誰も自分を止められないと、そういう強力なメッセージを国際社会に伝えたのだと解説している。

ロシアの東部作戦に遅れ=米国防省筋

米国防総省関係者は29日、ウクライナ東部ドンバス地方を制圧しようとするロシア軍の作戦は予定より遅れていると記者団に話した。

ロシア軍は少なくとも92の大隊戦術群をウクライナの東部と南部に展開し、さらに追加の部隊が国境のロシア側で待機しているものの、その戦力はまだ開戦当初の苦戦から十分に回復していない可能性があると、国防総省関係者は述べた。

ウクライナ軍の徹底抗戦に加え、キーウ制圧に失敗した経験から、ロシア軍が補給線より前に進むことをためらっており、それが作戦遂行の遅れにつながっていると、国防総省筋は分析。「少なくとも予定より数日は進捗(しんちょく)が遅れ」ており、「(ロシア軍は)大規模な長期戦に備えた状況を整備しているようだ」との見方を示した。

ロシア外相、モルドヴァに警鐘

ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は29日、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)と戦争しているつもりはないし、そのような展開になれば核戦争の危険が高まるが、核戦争は引き起こしてはならないと述べた。国営ロシア通信(RIA)が伝えた。

外相は、ロシアは誰に対しても核戦争の脅しなどしていないが、西側がそうしていると批判した。

ラヴロフ氏をはじめロシア政府幹部や国内著名人の間ではこのところ、西側との全面戦争や核戦争への言及が相次いでいる。

またウクライナとの和平交渉が中断しているのはロシアのせいではなく、ウクライナ政府が「常に駆け引きをしたがっている」せいだと批判した。

ラヴロフ外相はさらに、ウクライナの隣国モルドヴァに言及し、モルドヴァ国民は未来を心配した方がいいと述べた。

ラヴロフ外相は、「モルドヴァの人たちは自分たちの未来を心配するべきだ。NATOに引きずり込まれているので」と述べた。

<関連記事>

ウクライナと国境を接するトランスニストリア地域では、1990年9月にロシア系住民が分離を宣言したものの、国際社会は承認しておらず、国際法上はモルドヴァの一部となっている。

トランスニストリア地域では25日、謎の爆発が相次いだ。ウクライナでの紛争が拡大する恐れが出ている。

この地域を支配している親ロシアの分離派当局は、ウクライナの「侵入者」の仕業だと発表した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの特殊部隊によるものだと非難している。

モルドヴァのトランスニストリアについてはロシア中央軍管区のルスタム・ミネカエフ副司令官が22日、ロシア軍はウクライナ東部ドンバスだけでなく南部も制圧するつもりだと発言。ミネカエフ少将は、「ウクライナ南部を支配すれば、そちらからもトランスニストリアへ到達しやすくなる。トランスニストリアでも、ロシア語話者の住民が抑圧されている事実がある」と述べていた。

ロシアは核兵器を使わないだろう=米国防総省

ロシア政府首脳や国営メディアからこのところ、核戦争への言及が相次ぐ中、ロイター通信によると米国防総省高官は、ロシアが核兵器を使うとアメリカは思っていないと述べた。

匿名で取材に応じたという高官は、アメリカは連日「できる限り」ロシアの核攻撃力を監視しており、「核兵器使用の脅威があるとは判断していないし、NATO加盟国領土にも脅威があるとは判断していない」と話したという。

ロシア軍の戦死者数は

ウクライナ国防省は29日、2月24日の開戦以降、ロシア軍が2万3000人の人員を失ったと発表した。通信アプリ「テレグラム」で発表した内容によると、ウクライナ軍は人員のほか、これまでにロシア軍の戦車986台、装甲戦闘車2418台、砲撃システム435基、軍用機189機、艦船8隻、ヘリコプター155機を破壊したとしている。

BBCはこの発表内容を独自に検証できていない。

ゼレンスキー大統領側近のオレクシイ・アレストヴィッチ氏は、激戦の続く東部でウクライナが一部の村や町を失ったことを認めた上で、ウクライナ軍は防衛戦に成功しており、ロシア軍の間では「とてつもない」被害が出ていると話した。ウクライナ独立通信(ウニアン通信)が伝えた。

こうした中、BBCロシア語サービスの集計では、少なくとも1899人のロシア兵がウクライナ国内で死亡したことが公式に確認されている。

BBCロシア語は、ロシア各地の地方自治体や地元メディア、教育機関などによる戦死の発表を集計し、ウクライナでの死亡が正式に確認されたロシア軍人員の名簿を作成しており、29日の時点で人数は1899人に上った。その約20%が空挺部隊の所属で、大半はロシアの貧困地域の出身だった。

ロシア国防省が最後に正式に戦死者数を明らかにしたのは3月25日で、1351人のロシア兵が戦闘で死亡したと発表した。

ゼレンスキー大統領夫人、開戦以来夫に会えず

ウクライナのファーストレディ、オレナ・ゼレンスカ大統領夫人は、2月24日の開戦以来、夫に会えていないと明らかにした。ポーランド紙ジェチュポスポリタの取材に対し、「皆さんと同じように、テレビや、演説の録画動画」で夫の様子を認めるだけだという。

ゼレンスカさんは、戦争でも夫は「前と変わらず、信頼できる人」だとも述べた。

さらに、ゼレンスキー氏がこれまで主張してきたように、ロシア政府がウクライナ人のジェノサイド(集団殺害)を計画していると非難した。ロシアはこれを一貫して否定している。

ロシア兵の母親やパートナーたちに何かメッセージはあるかとの質問に、「棺を見て、何かがおかしいと確信できないなら、もうこれ以上私から言うことはありません」とゼレンスカさんは答えた。

一方、ゼレンスキー大統領は米タイム誌の取材に対して、2月24日の攻撃開始時について語った。同誌によると、ウクライナ軍は当時、ロシア軍の先遣部隊がパラシュートでキーウに降下し、大統領と家族を拘束もしくは殺害しようとするという情報を、大統領に伝えていた。

家族と自分の安全を守るため、「素早い決断」が迫られたと大統領は述べ、「あの夜のいろいろな瞬間を覚えている。爆発とか。子供たちとか」と話した。

「誰にだって家族がいる。みんな人間だ。素早い決断が必要だった。今になって振り返ると、あの時に決めたことは、意図的なものもあれば偶然のものもあったが、結果的に正しかった」と、ゼレンスキー氏は述べた。

(英語記事 Ukraine live reporting

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61281410

関連記事

新着記事

»もっと見る