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2022年5月1日

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ウクライナは4月30日、首都キーウ郊外の町ブチャでの戦争犯罪をめぐって告発したロシア兵10人の追跡捜査を開始した。ブチャでは市民が拷問され、強姦され、殺害されるなど、戦争犯罪が行われた疑いが出ている。

ウクライナ国防省は兵士らの写真を公開し、「卑劣な10人」と呼んだ。

検察当局によると、この10人は「計画殺人」の容疑で捜査されている。また、罪のない一般市民を人質に取り、殴打し、自宅を略奪した疑いも出ている。

ウクライナのイリナ・ウェネディクトワ検事総長は4月28日、戦争犯罪の容疑者を特に10人特定したとして、若い男10人の写真を公開した。

フェイスブックへの投稿でウェネディクトワ検事総長は、この10人は「民間人への残忍な行為や、その他の違法行為、および戦争慣例違反の疑いがある」と説明した。

声明では、「容疑者を拘束し、裁判にかけるため、指名手配する」とし、その他の情報提供も呼びかけている。

ロシア政府は、戦争開始時に1カ月以上、第64自動車化狙撃旅団の占領下にあったブチャで、犯罪は起きていないと、ウクライナ側の主張を否定している。

ウラジーミル・プーチン大統領は4月18日、帰国した同旅団の「大勢が英雄的行為と武勇、忍耐力と勇気を示した」とたたえ、「親衛隊」の名誉称号を与えている。

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しかし、同旅団がブチャを占領した間に、数百人が殺された。解放後には教会の敷地内の集団埋葬の跡が発見され、倒れたままの状態で通りに放置された複数の遺体もあった。捜査当局は数千件の戦争犯罪を記録している。

生き残った住民の1人、ウィタリ・ジウォロウスキーさんはAFP通信の取材に、占領下で聞いた悲鳴について語った。

「希望はありませんでした。私たちは寒さに震えるのではなく、ロシア人が捕らえた人たちに何をしているのか、叫び声から察して震えていました」

容疑者はいずれ裁判にかけられるのか?

スウェーデンの「ディアコニア国際人道法センター」のマネージャー、スティーヴン・ウィルキンソン氏は、容疑者らがロシアにいる場合は起訴に成功する可能性はかなり低いと指摘する。

しかし第64自動車化狙撃旅団は現在、ウクライナに戻り、ドンバス地方の戦闘の最前線になっているイジュームへ東進している。報道によると、同旅団は大きな損失を被ったという。

もしこの10人がまだ旅団に所属しており、生きていれば、発見されて裁判にかけられる可能性はゼロではない。

ウクライナ当局は実際、2014年に東部で捕らえたロシア兵2人を「テロ行為」の罪で起訴することに成功している。このロシア兵たちはその後、捕虜交換でロシアに引き渡された。

ハーグの国際刑事裁判所(ICC)などの国際的な仕組みも注目されているが、「ウクライナ国内で起訴するのが最善かつ最速の方法だという場合が多い」と、ウィルキンソン氏は付け加える。

また、容疑者らが指揮官ではなく「歩兵」であることも、起訴を容易にする可能性がある。ただしこれは、「指揮官の刑事責任を追及する必要性を排除するものではない」という。

一方でウィルキンソン氏は、正義を求めるウクライナの戦いには懸念要素もあると話す。特に、写真がインターネットで拡散される様子だ。

「たとえ強力な証拠があるとわかっていても、有罪が確定するまでは推定無実だと法律で定められている。自由で公正な裁判はどうなるだろうか? ブチャの事件は大勢の感情を大きく動かした。そのため、(裁判の自由や公正さが)根本的に損なわれているわけではないが、危険にさらされていると言えるだろう」

また、ウクライナ当局が以前公開した同旅団の名簿には、すでに除隊していたタジキスタン出身者の名前が多数含まれていた可能性があることが明らかにされた。

ラジオ・リバティー(ラジオ自由ヨーロッパ)のタジキスタン語サービス「オゾディ」は、「旅団に所属するタジキスタン人が何人、ウクライナにいたかは不明だが、名簿に名前があった8人のタジキスタン人とその親族は、自分はそこにいなかったと主張している」と伝えた。

このタジキスタン人たちの名前はいずれも、木曜日に発表された容疑者リストと一致しない。

(英語記事 Ukraine hunts for soldiers accused of Bucha crimes

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61288652

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