2022年8月18日(木)

プーチンのロシア

2022年5月2日

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 ウクライナへの侵略により、欧米や日本から厳しい経済制裁を科されて暴落したロシアの通貨ルーブルが急回復している。プーチン大統領は「ロシアにパニックを起こそうとした欧米の制裁は失敗した」と豪語するが、ルーブルは制裁への対抗策や輸入の減少で無理やり上昇が〝演出〟されているのが実態だ。プーチン政権は表面上の経済不安は抑え込んでいるものの、ソ連崩壊以後で最悪レベルの国内総生産(GDP)の落ち込みや失業者の急増などが見込まれており、ロシア経済はかつてない低迷に陥りつつある。

(Max Zolotukhin/gettyimages)

 「ロシアの市場にパニックを引き起こし、銀行システムを破壊し、物資の急減を狙った経済制裁は明らかに失敗した」「ロシアは前例がない圧力に耐えつつ、安定を維持している」。

 プーチン大統領は4月中旬、経済政策協議の場でこう断じた。その根拠として示したのが、通貨ルーブルの回復だった。

 事実、ルーブルは急回復している。侵攻開始直前に1ドル=80ルーブル前後だったルーブルは、欧米諸国が制裁を発表した3月上旬には115ルーブル前後に落ち込み、7日には一時150ルーブルにまで暴落。その後乱高下したが、3月下旬からは一転して上昇し、現在は侵攻前よりも高い水準にまで回復している。

 ルーブルの暴落は、明らかに欧米諸国の経済制裁の狙いのひとつだった。欧米や日本は3月上旬までに、ロシア中央銀行が海外の中央銀行に保管している外貨準備を相次ぎ凍結した。

 外貨準備は、自国通貨が下落した局面などで売却することで、通貨を買い支えることができる。制裁により、約6300億ドル(約82兆円)規模とされたロシアの外貨準備のうちの約半分が凍結され、ルーブルの買い支えは困難になったとみられていた。

 欧米諸国はさらに、ロシアの主要銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)からも排除した。これによりルーブルは市場の信頼を失い、下落は加速した。

ロシアが講じた2つの対抗策

 何が為替相場に変化をもたらしたのか。最大のポイントは、ロシア政府が打ち出した2月28日と3月31日に導入した2つの対抗策だ。

 ひとつ目の対抗策は、ロシア国内の企業が輸出で得た外貨を3日以内に強制的にルーブルに換金するというものだ。これにより人為的にルーブルの〝需要〟を生み出し、ルーブルを買い支える効果を生む。企業は輸出で得た収入を、より安定的な外貨で保管することができなくなるが、企業側の都合などは考慮されずに導入が決まったものとみられる。

 もうひとつは、ロシアが「非友好国」と定める国々がロシア産天然ガスを輸入する場合は、その支払いをルーブルで行わせる施策だ。これも同様に、ルーブルの需要を強制的に生み出す狙いがある。

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