
アメリカのジョー・バイデン大統領は5日、新たな大統領報道官に、カリーン・ジャン=ピエール副報道官(44)を昇格させた。黒人が大統領報道官になるのは初めてで、同性愛者であることを公言している人物の就任も初めて。
ジャン=ピエール氏は、バイデン氏が大統領に選ばれて以来、副報道官を務めてきた。
退任するジェン・サキ報道官(43)の後任として来週末、報道官になる。
報道官は、ホワイトハウスで記者会見を毎日行うため、注目を集める。
左派のケーブルニュース局MSNBCに転職するサキ氏は、ジャン=ピエール氏について、「道徳的な芯」を持った「卓越した女性」とツイッターに書き込んだ。
ハリス副大統領の補佐官を経て
ジャン=ピエール氏は過去に、MSNBCでアナリストを務めていた。民主党で20年以上、政治に関わってきた経験がある。
フランス領カリブ海のマルティニーク島で生まれ、ニューヨークのクイーンズで育った。オバマ政権でも、重要な政治ディレクターの1人だった。
2016年大統領選では、有力リベラル団体「MoveOn」の全国広報担当を務めた。
バイデン氏の副大統領候補としてカマラ・ハリス氏が選ばれると、同氏の首席補佐官を務めた。その後、ホワイトハウスの報道チームに加わった。
アメリカでは今年11月、バイデン氏の大統領任期の残りの行方を決定づける、重要な中間選挙が控えている。
<分析> アンソニー・ザーカー北米担当記者
ホワイトハウスの報道官は、国内メディアおよびアメリカ全土と世界に対して、大統領の「顔」の役割を果たす。
国家的危機や政治的スキャンダルの時期には、すぐに誰だかわかる人物となり得る。一部でカルト的なファンを生んだり、ジョークの種にされたりすることも多い。
今回は米史上で初めて、黒人女性が、そして同性愛者を公言する人物が、政権の顔になることになった。
この画期的な発表は、黒人女性を権力のある立場に配置することにバイデン政権が力を入れてきたことを示すものだ。黒人女性は、民主党という連合体の中で不可欠な存在でありながら、政治的に無視されがちだった。
ジャン=ピエール氏は、カマラ・ハリス副大統領、近く就任するケタンジ・ブラウン・ジャクソン連邦最高裁判事、スーザン・ライス国内政策会議委員長、リンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使、その他の高官や裁判官らと共に、傑出した役割を担うことになる。
報道官は政策を決定はしないが、世間の政権に対する見方を左右する。ジャン=ピエール氏の前途には、挑戦的な綱渡りが待っている。