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2022年5月7日

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6日、ロシアと和平合意を結ぶには、ロシア軍が侵攻開始前の位置に戻ることが条件になると述べた。ロシア軍に激しく攻撃されている南東部マリウポリでは、ウクライナ兵や民間人がたてこもっていた製鉄所から3回目の避難が実施され、民間人50人が脱出した。

ゼレンスキー大統領はこの日、ウクライナの首都キーウからロンドンの英国際問題研究所(チャタムハウス)と意見交換する中で、「ロシアとウクライナの戦争をやめさせるには、2月23日の原状回復が必要な一歩になる」とBBCの質問に答え、2月24日に始まったロシアの軍事侵攻に対する和平条件としては、それが最低限だと述べた。

ゼレンスキー氏は、「私はウクライナの国民に、ウクライナの大統領として選ばれた。何らかのミニ・ウクライナの大統領ではない。これは非常に重要な点だ」と述べたが、2014年にロシアに併合されたクリミア半島については言及しなかった。

「2月23日」の日付に触れたことは、ウクライナ政府が今後の和平交渉でクリミア半島の返還に固執しない可能性を示している。

ゼレンスキー氏はその上で、ウクライナとロシアの外交対話の再開を求めた。「(ロシアは)我々の橋を全て破壊したが、たとえて言うなら、全ての橋が破壊されたとはまだ思っていない」とも述べた。

これに対してロシア政府は、和平交渉は「停滞状態にある」としている。

マリウポリから避難続く

ロシア軍の激しい攻撃が続く南東部の要衝マリウポリでは同日、ウクライナ兵や民間人がたてこもっていたアゾフスタリ製鉄所から、国連と赤十字国際委員会(ICRC)による3回目の避難が実施され、子供11人を含む民間人約50人が脱出した。

ソヴィエト連邦時代に造られた製鉄所の地下には、トンネルや防空壕が多くあり、そこに避難した人たちがまだ多く残っているもよう。

ウクライナのイリナ・ヴェレシチュク副首相は、戦闘や「挑発」と自身が呼ぶもののため避難活動に遅れが出たと説明。7日にも避難活動は続くという。

ロシア軍はこれに先立ち、5日から3日間、避難を可能にするため日中は攻撃を停止すると発表していた。

9日に独首相を招待=ゼレンスキー氏

ゼレンスキー氏はさらに、今月9日にドイツのオラフ・ショルツ首相をウクライナに招いたと明らかにした。5月9日はロシアが第2次世界大戦の対独戦勝を記念する「戦勝記念日」で、ロシア政府はモスクワの恒例の軍事パレードに加えて、マリウポリでも何らかの記念行事が計画されているもよう。

ウクライナ侵攻中のロシアにとって、今年の5月9日はとりわけ重要な記念日になるとの見方が広がる中、この日にドイツの首相をウクライナに招くことは、きわめて象徴的な行為となる。

「(ショルツ首相が)5月9日にここに来れば、それは非常に強力で、政治的に賢明な動きになる」とゼレンスキー大統領はチャタムハウスに対して話し、「その重要性を私からは説明しません。見識ある皆さんなら、その重要性は理解できるはずです」と述べた。

ゼレンスキー大統領はこれまで、ドイツ政府の対ロ制裁が不十分だと批判を重ねていた。BBCとの4月の単独インタビューでは、ドイツとハンガリーを名指しし、ロシア産エネルギーに対する禁輸措置の実現を両国が阻止したと非難。「いったいどうやったら他人の流血で金もうけができるのか、理解できない」と話していた。

4月には、ドイツとロシアの経済的結びつきが原因となり、フランク=ヴァルター・シュタインマイアー独大統領のキーウ訪問が直前に中止された。

米政府、1億5000万ドルの追加軍事支援へ

米政府は6日、ウクライナの防衛を支援するため、1億5000万ドル(約195億円)分の軍事援助を追加すると発表した。米政府幹部によると、追加支援には砲弾、発射兵器の位置を特定する対砲兵レーダーシステム、電波妨害機、部品各種などが含まれるという。

ジョー・バイデン米大統領は、「アメリカは引き続き、ロシアの侵略から国を守り続けるウクライナの勇敢な人たちを、強力に支援し続ける」と述べ、「連邦議会が承認した武器や装備を、自由の最前線へ直接送り込む」と話した。

その上でバイデン氏は、議会が承認済みのウクライナ援助予算は「すでに底をつきかけ」ているため、「ウクライナの立場を戦場と交渉の場で強くするため」、4月末に議会提出した330億ドル(約4兆3000億円)のウクライナ支援追加予算案を承認するよう、あらためて議会に呼びかけた。

米大統領夫人は東欧訪問

ジル・バイデン米大統領夫人は6日、ルーマニアに到着し、4日間の東欧訪問を開始した。アメリカのウクライナ支援をアピールすることが主な目的で、ウクライナと国境を接するルーマニアとスロヴァキアを歴訪し、両国の首脳や駐留米軍のほか、ウクライナ難民の支援活動家、教育関係者や子供たちと会談する予定。

6日には黒海沿岸に近いルーマニア南東部のミハイル・コガルニチャヌ空軍基地を訪れ、駐留する米兵たちと懇談。8日にはスロヴァキア東部の国境に近いコシツェで、ウクライナから避難してきた母親や子供たちと母の日を過ごす予定。

アメリカからは与党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長と複数の議会幹部が4月30日にキーウを訪れ、ゼレンスキー大統領らウクライナ政府首脳と会談した。その前には、アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官もキーウでゼレンスキー大統領らと会談している。

バイデン大統領自身は3月にウクライナの隣国ポーランドを訪れ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「虐殺者」と呼び、「権力の座にとどまってはいけない」と述べるなど、ロシアの軍事侵攻を強く非難した。

(英語記事 Ukraine war: Russia must withdraw to pre-invasion position for a deal - Zelensky / Ukraine live updates

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61360214

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