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2022年5月8日

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ウクライナとロシアの両政府は7日、ウクライナ南東部マリウポリでロシア軍に包囲されていたアゾフスタリ製鉄所から、避難していた民間人女性、子供、高齢者が全員脱出したと発表した。他方、世界保健機関(WHO)は同日の記者会見で、ロシアがウクライナ軍事侵攻を開始して以来、ウクライナで医療施設が200回以上攻撃されたと発表した。

民間人は製鉄所を脱出

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、計300人以上の民間人がアゾフスタリ製鉄所から救助されたと明らかにした。これに対してロシア国防省は、3日間で51人が避難したとしている。

ウクライナのイリナ・ヴェレシチュク副首相は、人道作戦の該当部分は完了したと表明した。

今月初めから続いていた民間人の避難は、国連と赤十字国際委員会(ICRC)が仲介・支援していたが、両機関はまだ全員脱出について確認する声明を出していない。

ゼレンスキー氏は、マリウポリから軍関係者を脱出させるため、外交交渉が続いているとも述べた。

南東部の要衝マリウポリはほぼ全域がすでにロシア軍に制圧されているものの、ウクライナ軍のアゾフ連隊はアゾフスタリ製鉄所に残り、抵抗を続けている。製鉄所に激しい攻撃を続けるロシア軍は、製鉄所内にたてこもるアゾフ連隊の降伏を求めている。

ロシア軍は2月下旬の開戦当初から、マリウポリを徹底的に攻撃し続けた。市内の建物の90%が損傷もしくは全壊したという。

ロシアにとっては、マリウポリを押さえれば、ウクライナ南岸の8割以上を掌握することになる。そうすれば、親ロシア分離独立派が実効支配するウクライナ東部のドネツクやルハンスクと、ロシアが2014年に併合したクリミアが陸続きになる。加えて、ウクライナの西の隣国モルドヴァでロシア系住民が分離を宣言しているトランスニストリア地域にも、接近しやすくなる。

マリウポリで9日に祝賀行事はない=ロシア報道官

ロシアでは毎年5月9日を、第2次世界大戦の対独戦勝を記念する「戦勝記念日」として祝う。モスクワで毎年恒例の軍事パレードに加え、今年はマリウポリでも何らかのパレードがあるのではないかと観測が続いていたが、ロシア政府は7日、これを否定した。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、「いずれ(マリウポリで)盛大に祝う時が来る」と記者団に述べ、9日にロシア政府関係者がマリウポリを公式訪問する予定もないと話した。

5月9日をめぐっては、この日を機にロシア政府はウクライナへの「特別軍事作戦」について、正式に「戦争」だと宣言し、国家総動員を発令するのではないかと西側当局者の間では観測が続いているが、これについてもペスコフ報道官は4日の時点で、そのような事実はないと観測を退けていた。

ハルキウ州一部自治体はウクライナ軍が奪還か

この間、ウクライナ東部ハルキウ州では、制圧された地域を奪還しようとするウクライナ軍とロシア軍の激しい戦闘が続いている。

ウクライナ軍は7日、第二都市ハルキウの北東で5つの村を奪い返したと発表した。

他方、ハルキウ州の軍事当局によると、ハルキウ南西のコロボチキネ村で民家が砲撃され、28歳の民間人女性が死亡した。

西部リヴィウで取材するBBCのソフィー・ウィリアムズ記者によると、ハルキウ州のオレフ・シニエフボフ知事は通信アプリ「テレグラム」で、ロシア軍は依然として「ハルキウ州の民間人を攻撃」し続けていると書いた。州知事は住民に「不要な外出は避ける」よう呼びかけ、空襲警報を無視しないよう注意した。

各地の現地当局によると、ハルキウ州のほか、南西部オデーサ州、中部ポルタヴァ州でもロシア軍のミサイル攻撃が続いているという。

インタファクス・ウクライナ通信によると、ポルタヴァ州では巡航ミサイルが撃墜されたものの、カルリウカではインフラ施設が被弾し、周囲の建物に延焼した。この攻撃による死傷者はなかったという。

南西部の主要港湾都市オデーサとその周辺も、相次ぐミサイル攻撃を受けているという。

5月9日の戦勝記念日に向けてロシアの攻撃がさらに激化するのではないかと、ウクライナ各地で懸念が高まっている。

医療施設への攻撃は200回以上=WHO

WHOは7日、記者会見し、ロシアが2月24日にウクライナ軍事侵攻を開始して以来、ウクライナで医療施設が200回以上攻撃されたことを確認したと発表した。

WHOの緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は、医療施設攻撃で戦争犯罪があったかについては、WHOが得た情報を適切な捜査当局に提供するつもりだと述べた。

同じ記者会見では、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長がロシア政府に対して、隣国への戦争をやめるよう呼びかけ、ウクライナ国民には「WHOは皆さんを応援している」と述べた。

ウクライナ独立通信(ウニアン通信)は同日、ウクライナのヴィクトル・リャシュコ保健相の発言として、国内約40の病院が完全に破壊されたと伝えた。保健相は、「約500の病院が損傷し、医療が提供できなくなった」とも述べたという。

ロシアの新型戦車破壊=英国防省

英国防省は7日、定例の最新戦況分析を発表した。

それによると、ロシアは少なくとも新型戦車T-90Mを1台、戦闘で失った。T-90Mは対戦車兵器に対抗するため特別設計の最新式装甲を備え、精鋭部隊に計約100台配備されているという。

英国防省は、「ウクライナでの紛争はロシア軍の中でも特に優秀な部隊や装備に、重度の損害をもたらしている。この紛争を経てロシアが自軍を再構築するには、相当の時間と費用がかかる。中でも、不可欠な小型電子部品の調達が対ロ制裁によって制限されているため、ロシア軍は最新式の最先端装備の補充に特に苦労するだろう」と分析している。

ロシアは核攻撃を計画していない=米CIA長官

米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は同日、ロシアは現在、ウクライナで戦術核兵器を配備したり使用したりする計画はしていないと述べた。英紙フィナンシャル・タイムズ主催の会議で発言した。

バーンズ長官は、「現時点では、ロシアが(ウクライナで)戦術核兵器を配備したり、あるいは場合によっては使用したりするための、そのような計画をしているという実際的な証拠」を、情報機関は得ていないと述べた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は軍事侵攻開始から4日目の2月27日深夜、セルゲイ・ショイグ国防相を含む軍幹部に対して、西側がロシアに「非友好的な行動」をとり、「不当な制裁」を科したとして、核抑止部隊に「特別警戒」を命令した。ロシアの核部隊にとって、「特別警戒」は最高レベルの警戒態勢。

これについてバーンズ長官は、「そうやって武力をひけらかして威嚇(いかく)するような発言をロシアの首脳陣がしているだけに、その可能性を我々は軽視できない」と述べ、「そのため我々は情報機関として(中略)、ロシアにとってのるかそるかのリスクが極めて高い現状で、起きてはならない事態を強く注視している」と話した。

(英語記事 Ukraine live updates / Ukraine war: Civilians now out of Azovstal plant in Mariupol

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61368319

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