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2022年5月9日

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ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの東部で8日、学校が爆撃され、約60人が死亡したとみられている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が明らかにした。ウクライナは、約90人が避難していた校舎にロシア軍機が爆弾を投下したと主張しているが、ロシア側はコメントしていない。

ゼレンスキー大統領の発表に先立ち、東部ルハンスク州のセルヒイ・ハイダイ知事は、同州ビロホリウカにある学校に、村のほぼ全員にあたる約90人が避難しており、ロシアによる空爆後、30人が救出されたと、通信アプリ「テレグラム」で明らかにしていた

知事によると、攻撃で出火した校舎を消防隊が鎮火するのに、3時間かかったという。最終的な死傷者数は、がれきを取り除くまで確定できないと知事は話している。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「戦時に民間人は常に攻撃対象から除外されなくてはならない」として、この攻撃に「戦慄(せんりつ)している」と述べた。

ルハンスク州は2014年以来、大部分が親ロシアの分離派に実効支配されている。今年2月の軍事侵攻以降、ロシア軍と分離派勢力はウクライナ軍を包囲しようとしており、激戦が続いている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の今月6日の発表によると、2月24日から5月5日までにウクライナで確認された民間人の死者は3309人、負傷者は3493人に上る。多数の死者が出ているとされるマリウポリやイジュームなど激戦地の情報確認が遅れているため、実際の人数はこれよりかなり多いと予想されると、OHCHRは指摘している。

マリウポリの製鉄所に残る部隊「降伏しない」

南東部の要衝マリウポリでは、ウクライナの部隊や民間人にとって最後の砦(とりで)となったアゾフスタリ製鉄所から、民間人全員が脱出したと、ウクライナとロシアの両政府が7日に発表した

ゼレンスキー大統領は同日、製鉄所から負傷兵や医療関係者を救出する作業が続くほか、製鉄所にたてこもる兵士たちを避難させる企ても続いているものの、兵士たちの脱出は「きわめて難しい」と認めていた。

ロシア軍は製鉄所内に残る部隊の降伏を要求している。

8日には製鉄所内からウクライナ軍アゾフ連隊の指揮官たちがオンラインで記者会見を開き、ロシア軍に投降するつもりはないと主張した上で、負傷兵の避難に協力を求めた。

イリア・サモイレンコ中尉は、「降伏は受け入れられない。そのような大きな手柄を敵に与えるわけにはいかないからだ」と述べ、「我々はすでに死んだに等しい。ほぼ全員がそれは承知している。だからみんな恐れ知らずに戦うのだ」とも話した。

指揮官たちはさらに、マリウポリ防衛に失敗したのはウクライナ政府のせいだと批判した。これに対してゼレンスキー大統領は、ロシア軍の包囲を解除させられるような重火器をウクライナ軍は持たず、製鉄所内にいた民間人全員の避難に成功したのは、自分の外交努力の成果だと反論した。

民間人の避難を国連と共に調整した赤十字国際委員会(ICRC)は8日、5日から4日間にかけて行われた避難活動で、計170人の民間人がマリウポリから南東部ザポリッジャに到着したと発表。「アゾフスタリから避難した民間人51人」もその中に含まれると述べた。

ICRCによると、これに先立ち5月初めには約500人がマリウポリとその周辺からザポリッジャに避難したという。

市民の生死をプーチン氏が決めている=マリウポリ市長

マリウポリのヴァディム・ボイチェンコ市長はBBCのローラ・ビッカー記者に対して、市内にはまだ約10万人がとどまっていると説明。市内を移動するにはロシア軍の許可証が必要で、市外へ出るには別の許可証が必要だと話し、市民の生死を決めているのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領だと述べた。

ボイチェンコ市長はさらに、ロシア支配下の東部ドネツク州にあるベジメンネ村やコザツケ村に設けられた、いわゆる「濾過(ろか)センター」で男性約2000人が拘束されており、傷病者以外は強制労働をさせられていると話した。

市長は、「その人たちはがれきを撤去したり、ロシアが殺した人たちの遺体を回収したり、戦争犯罪の証拠を隠滅するために働かされている」と述べた。

こうした主張をBBCは独自に検証できていない。

ロシア軍は2月下旬の開戦当初から、マリウポリを徹底的に攻撃し続けた。市内の建物の90%が損傷もしくは全壊したという。

ロシアにとっては、マリウポリを押さえれば、ウクライナ南岸の8割以上を掌握することになる。そうすれば、親ロシア分離独立派が実効支配するウクライナ東部のドネツクやルハンスクと、ロシアが2014年に併合したクリミアが陸続きになる。加えて、ウクライナの西の隣国モルドヴァでロシア系住民が分離を宣言しているトランスニストリア地域にも、接近しやすくなる。

G7首脳はウクライナ援助強化で合意

8日にはさらに、ゼレンスキー大統領が主要7カ国(G7)首脳とオンラインで会談し、G7首脳たちはウクライナ支援の継続を約束した。

西側諸国はさらに、ロシア産原油への依存度を減らしていく決意をゼレンスキー氏に伝えた。

西側諸国は1日数百万ドル分のエネルギーをロシアから購入しており、これがロシアの戦争遂行を支える形になっている。

この日にはカナダのジャスティン・トルドー首相がウクライナ・イルピンを予告なしで訪れた後、ゼレンスキー大統領と対面で会談した。イルピンは首都キーウの近郊で、開戦当初ロシア軍の激しい攻撃を受けた。

ゼレンスキー氏と会談後の記者会見でトルドー首相は、軍事援助を強化すると発表した。

8日にはほかに、ドイツ連邦議会のベーベル・バス議長がキーウでゼレンスキー氏と会談したほか、東欧訪問中のジル・バイデン米大統領夫人がスロヴァキアから国境を越えてウクライナに入り、ゼレンスキー大統領の妻、オレーナ・ゼレンスカさんと会談した。

(英語記事 Ukraine updates / Ukraine war: 60 people killed after bomb hits school, Zelensky says

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61375052

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