
ウクライナ南東部マリウポリの市議会は10日、ロシア軍の包囲から逃れた住民たちから戦争犯罪とみられる報告を800件以上集めたと明らかにした。東部イジュームでは、ロシア軍の砲撃を受けた集合住宅のがれきの中から民間人44人の遺体が発見された。
マリウポリのヴァディム・ボイチェンコ市長によると、戦争犯罪の疑いに関する情報は全て、地元の検察当局に提供された。
「敵の航空機によって破壊されたマリウポリの産科病棟や、多くの女性や子供が亡くなった劇場、重傷を負ったマリウポリ市民が生きたまま焼かれた病院」など、市内での主要な攻撃について住民が証言したという。
全ての証拠が、マリウポリ住民に対するジェノサイド(集団虐殺)に関する広範な刑事手続きの一部になるだろうと、ボイチェンコ氏は語った。
「一番の犯罪者であるプーチン率いるロシア占領軍による戦争犯罪の事例は数えきれないほどある」
イジュームで民間人44人の遺体発見
戦闘が激化する東部ハルキウ州イジュームでは、3月にロシア軍の攻撃で破壊された5階建て集合住宅のがれきの中から民間人44人の遺体が発見された。住民たちは当時、ロシア軍の砲撃から身を守るために地下に隠れていた。
地元当局者はBBCに対し、救助隊は集合住宅があった場所にたどり着いたばかりだと語った。
この集合住宅と同じ通りにあった別の建物もロシア軍の標的になっていたことから、死者数はさらに増える恐れがある。
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ロシア、極超音速ミサイル10数発を使用か
米国防総省の高官によると、ウクライナでの戦争が始まって以降、ロシアは約10~12発の極超音速兵器を使用したとみられるという。
ロシア国防省は3月に極超音速ミサイル「キンジャル」でウクライナ南西部の軍地下倉庫を破壊したと発表している。ロシア当局によると、キンジャルは時速6000キロ超で飛び、2000キロ先の標的を攻撃できるという。
先週末には、 ウクライナ南西部オデーサの標的に向けてキンジャルが発射されたと、ウクライナ当局が主張している。
ただ、米当局はオデーサに対してキンジャルが使用されたことを「示すものは何もない」としている。
ドンバスでの作戦、「予定より数週間遅れている」
ロシアは先月、ウクライナの首都キーウ周辺から軍を撤退させ、軍事活動の焦点をウクライナ東部に移した。
しかし、米国防総省高官は、東部ドンバスでのロシアの軍事作戦について、当初の予定より数週間遅れているとの見方を示した。
「(プーチン氏が)望んでいたよりも2週間かそれ以上遅れを取っている」と、この高官は話した。
また、西側の対ロシア制裁により、誘導兵器の補充が難しくなっていると指摘。黒海でロシアの巡洋艦モスクワが沈没して以降、ロシア海軍の艦艇は ウクライナ南西部オデーサの「かなり南方」にとどまっているとした。
東部ドニプロ、ウクライナ軍と人道支援の拠点に
ウクライナ東部で戦闘が激しさを増す中、同国第4の都市ドニプロがウクライナ軍と人道支援活動の重要な拠点になっているとみられる。
3月と4月初旬に空爆が続いた後、ドニプロには不安を感じさせる静けさが漂っている。
最近、ドニプロを訪れた英作家デイヴィッド・パトリカラコス氏は、大部分が民兵によって守られている同市について、「ウクライナ国内の2つの世界の間に存在している。西側と東側の間、欧州とロシアの間だ」と述べた。
「その地理的位置は、この国(ウクライナ)の戦争努力にとって極めて重要なものになっている」
「ドニプロは国の中心部に位置しており、最も重要な物流拠点となっている」
(英語記事 Live Page)