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2022年5月26日

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新型コロナウイルスの感染対策としてイギリスで厳しいロックダウンが実施されている間、首相官邸など政府庁舎で飲食を伴うパーティーが繰り返し開かれていた問題で、政府高官による独自調査の最終報告書が25日、公表された。報告書は、感染対策に沿わない数々のパーティーを許した官邸内の風潮について、官邸幹部に責任があると指摘。これを受けて、ボリス・ジョンソン首相の辞任を求める声が与野党から出たが、ジョンソン氏は同日の記者会見で、辞任はしないと言明した。

パーティー問題について内閣の依頼で独自調査を進めた地域活性化・住宅・コミュニティー省のスー・グレイ第二事務次官は、最終報告書の中で、ロックダウン中に首相官邸では、職員が感染対策ルールをたびたび破っていたとした。また、時には早朝まで過剰な飲酒を繰り返したほか、ごみを散らかしたままにしたり、パーティーを制止しようとする警備担当者を笑いものにしたりするなど、清掃や警備の担当者への悪質な態度が散見されたと指摘した。

官邸内のこうした風潮を許した幹部が、「責任を負う必要がある」とグレイ氏は報告書で書いた。

記者会見を開いた首相は、「前に進み続けなくてはならない」として、辞任を否定した。また、報告書の内容はこの日、公表と共に初めて知ったとして、その多くは「初めて知る」ことだったと述べた。

首相は、「なぜ多くの人が憤慨していて、なぜ多くの人が(官邸で)起きたことに怒っているのか、理解している」とした。その上で、辞任を考えたことはないのかと記者団から重ねて質問されると、「職務を続けて成果を出すことが、圧倒的に自分の仕事だと考えている」と答えた。

「(報告書の)結論がどれほど苦々しく苦しいものだとしても、そして実際にまさにそうなのだが、どれほど身が引き締まる思いのする内容だとしても、私は前に進み続けなくてはならないし、政府も動き続けなくてはならない。そして、私たちはそうしている」

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「本当だと思っていた」

この会見に先立ち、議会で毎週水曜恒例の「首相への質問」において、ジョンソン首相は下院に対して、「自分が責任者の間に起きた全てのことについて、全面的に責任」を負うと述べていた。また、報告書の内容に「身が引き締まる思い」で、多くのことを学んだとも話した。グレイ氏が推奨する官邸幹部や監督体制の変更はすでに実施したとも述べた。

ジョンソン氏は、これまで議会答弁などで「ルールやガイドラインは常に守っていた」と言い続けたことについて、「本当だと思っていた」ことを述べていたのだと説明した。議会にうその答弁をしたことはないとしつつ、ルールを常に守っていたという発言は正しくなかったと認めた。

ジョンソン氏は、官邸を離れるスタッフの退任パーティーなどに自分は出席したものの、それはロックダウンのルール違反ではなかったと指摘。「ただし明らかに、自分が退席した後のいくつかの集まりや、私が同じ建物内にいない間に開かれた集まりでは、(ルール違反はなかったというのは)当てはまらなかった」と付け加えた。

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首相はさらに、グレイ報告書のいくつかの内容に「ショックを受け」、「愕然(がくぜん)とした」と述べた。特に官邸の警備や清掃担当に対する他のスタッフの態度に衝撃を受けたと、下院で話した。

与野党から批判

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、ジョンソン氏が「荷物をまとめるべき」だとして、与党・保守党の下院議員たちに、ジョンソン氏を党首の座から外すよう呼びかけた。

スターマー党首をめぐっては、北部ダラムで昨年4月に開かれたイベントに出席した際、地元選出議員の事務所でカレーを食べてビールを飲んだことが当時の新型コロナウイルス対策に違反した疑いがあるとして、すでに警察が捜査に着手している。スターマー氏は、この件で自分が罰金対象になった場合には、党首を辞任するとしている。

スターマー氏はさらに下院で、グレイ報告書は官邸内にはびこる「腐敗をあかるみに出した」と述べ、「もう全てばれた」のだと首相に告げるよう保守党議員たちに呼びかけた。

かねてジョンソン首相に批判的な保守党のトバイアス・エルウッド議員も、「官邸内で指導力と集中と規律が欠けていた」ことを、グレイ報告書が明確に示したとし、他の保守党議員に対して、「皆さんはこれから連日連夜、この振る舞いを公に擁護し続けるつもりですか」と問いかけた。

野党・スコットランド国民党のイアン・ブラックフォード院内総務は、グレイ報告書は「決定的」だとして、ダウニング街の首相官邸で繰り返されたパーティーの様子を「采配(さいはい)」した責任を取って首相は辞任すべきだと述べた。

野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首は、「これがほかの首相だったら、これほど悪い内容の報告書が出たら、辞任に追い込まれるはずだ。それなのに保守党の議員たちはジョンソンを擁護し、首相の座にしがみ続けることを許している」と批判した。

警備員や清掃担当への問題行動

グレイ氏は37ページにわたる最終報告書で、感染対策が実施されている間の官邸内でさまざまな問題行動があったと指摘。ロックダウン中の2020年5月に首相秘書官が「飲み物は持参で」とスタッフを招待した集まりが開かれたことや、やはりロックダウン中の2020年6月に官邸内で首相の誕生パーティーが開かれたことなどを批判した。

報告書の要点は次の通り。

  • 官邸内の風潮について、幹部の政治家と公務員は共に責任を負わなくてはならない
  • フィリップ殿下の葬儀前夜、スタッフは官邸内でパーティーを開いた。中には午前4時まで残った職員もいた
  • 2020年6月の別のパーティーでは、「(職員の)一部が極端に過剰な量のアルコールを摂取した。1人は嘔吐(おうと)し、別の2人が軽いけんかを起こした」
  • 2020年12月のクリスマス・クイズ・イベントでは、官邸スタッフが他の職員に「酔った振る舞い」についてメッセージを送り、報道陣のカメラを避けるためイベント後には官邸の裏口から出るよう助言していた
  • 「警備と清掃のスタッフに対する敬意の欠如、およびぞんざいな扱いの事例が複数見受けられた」

イングランドがロックダウン中の2020年11月13日に、官邸に隣接する首相公邸で開かれたとされるパーティーについては、「限定的」な証拠しか得られなかったとグレイ氏は書いた。リー・ケイン広報部長とドミニク・カミングス顧問の退任後に開かれたこの集まりについては、ロンドン警視庁が捜査に着手したのを受け、グレイ氏は調査を中断。警察が捜査を終えた時点で、グレイ氏はこの件について自分が調査を続けるのは「適切でも相応でもない」と結論したと明らかにしている。

ジョンソン首相は25日、グレイ氏が推奨する官邸幹部や監督体制の変更はすでに実施したと下院に述べた。これについて、保守党の消息筋によると、与党議員の集まりで首相は、官邸内での飲酒を禁止するつもりはないと発言。一生懸命働いた長い1日の後に「緊張をほぐす」ことと、「午前4時にふらふらになって、他の職員に無礼なまねをして、ソファで吐くようなこと」は、別のはずだと与党議員たちに話したという。

グレイ報告書の公表に先立ち、ロンドン警視庁は今月19日に新型コロナウイルス関連のルール違反をめぐる捜査を終了した。感染対策のルール違反で罰金を科せられたのは、首相夫妻やリシ・スーナク財務相を含めて83人、罰金通告は126件に上った。

首相はさらに、ロックダウン中のパーティーについて議会に事実を誤認させる答弁をしたとして、議会下院の倫理基準・特権委員会の調査を受けている。


<解説> ジョンソン氏は今のところ無事の様子――クリス・メイソンBBC政治編集長

というわけで、首相は今どういう状態なのだろう。

謝罪し、そして自分はこれまで事の次第についてわざと下院に誤認させようとする答弁をしたわけではないと、あえて説明した。

この点は非常に重要だ。というのも、下院に意図的にうそをついたと立証されれば、首相解任につながるからだ。

しかし首相は、結果的に警察から罰金を科せられることになったイベントで、自分は何も間違ったことはしていないと当時思っていたのだと、付け足した。

これまでの経緯について保守党議員の多くは、恥ずかしいことだと強く怒っている。簡単に言い訳できる話ではないし、国民が忘れるのを待てば済むわけではないことも、保守党議員たちは承知している。

その一方で、非常に多くの閣僚が、首相への忠誠を公に表明している。

(英語記事 Partygate: PM says he will not resign following Sue Gray report

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61588531

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